Y!mobile新料金プランで「値上げをした意識はあまりない」 ソフトバンク寺尾氏が語る狙い(1/3 ページ)
ソフトバンクは23日、Y!mobileの新プラン「シンプル2」を発表した。発表会終了後、Y!mobileを統括する寺尾洋幸執行役員がグループインタビューに応じた。
ソフトバンクは8月23日、Y!mobileの新プラン「シンプル2」を発表した。現行のシンプルと比較して、データ容量を増量して、値上げとなっているが、どのような狙いで設計したのか。Y!mobileを統括する寺尾洋幸執行役員がグループインタビューに応じた。※料金は全て税込み。
- →Y!mobileの新料金プラン「シンプル2」発表 4GB/20GB/30GBに増量、セット割適用で月額1078円〜
- →Y!mobileの新料金「シンプル2」は値上げだけどお得? 現行プランと比較してみた
1GBあたりの単価はむしろ下がっている
――(記者) 改めて新プランの特徴を教えてください。
寺尾氏 ソフトバンクの3つのブランドの中で、Y!mobileは小〜中容量帯をリーズナブルな料金で提供するブランドです。料金プランは、分かりやすいS/M/Lの3プランにこだわっていて、毎月約1000円、2000円、3000円というシンプルな価格設定でご用意しています。今回の「シンプル2」もこの方針は変わりません。
一方で、直近では5Gの整備が進んだこともあり、ユーザーさん1人あたりのデータ容量が増加する傾向があります。サービスを開始した2015年度と比べると、1人あたりのデータ利用量は2倍以上まで拡大している状況です。
そこで、新プランではデータ容量を拡大しています。Sプランは従来プランのプラス1GB、MプランとLプランは5GB上乗せする形で拡大しています。あわせて基本料金は改定していますが、PayPayカード割などの割引の見直しによって、ご負担とならないように工夫しています。
―― 発表直後のX(旧Twitter)への投稿を見ていると、基本料金が値上げになったことを否定的に言及しているユーザーが多いように見受けられます。
寺尾氏 そうですね。確かに金額だけで比べると、値上げと指摘されても否定できません。ただし、PayPayカード割を織り込んで見ていただくと、実質的なベース料金はプランSの場合は2178円となり、前プランの同額を維持しています。
Sプランの場合、従来プランは3GBで月額2178円。この割引はPayPayカードを支払いに利用いただく条件で、基本料から187円を割引するものです。PayPayカードは年会費無料で発行できますので、カードを作るお手間はいただきますが、お客さんに金銭的な負担が発生することはありません。
また、光セット割の割引適用後の料金では、従来プランのシンプルSが月3GBで990円だったのに対して、シンプル2のSプランは、月4GBで1078円です。額面上は確かに値上げですが、その差額は88円です。これで、データ容量は3GB→4GBへと1GB増やしています。
M/Lプランも同じ構図です。Mプランは、5GB上乗せして15GB→20GBにしました。基本使用料は3278円→4015円に上がっていますが、その分、割引も深くしています。
発表会ではギガ単価のスライドで紹介させていただきましたが、1GBあたりの単価としてはむしろ下がっているという見方もできると考えています。その辺りをご理解いただけるように、説明を頑張っていかないといけないかなと感じています。
―― PayPayカード割を導入した狙いを教えてください。
寺尾氏 ソフトバンクとしては、支払い口座としてPayPayカードを選んでいただくことで、コストを抑えてサービスが提供できるので、割引として還元するという趣旨でPayPayカード割を提供しています。また、ご存じの通りPayPayカードはスマホ決済のPayPayが最もお得にお使いいただけるカードですから、この割引の導入によってPayPayとY!mobileの連携をさらに強化して、PayPay経済圏を活性化させていきたいと考えています。
―― 電気代の変動や政府の方針の変化など、サービス運営上の費用負担は大きくなっているのでしょうか。
寺尾氏 実のところ、Y!mobileで値上げをしたという意識はあまりありません。お客さんのニーズに合わせて使いやすい通信サービスを提供して、最終的に全体のデータ利用量が増えていけば、上位プランをお選びいただける方も増えてくるだろうと考えています。
一方で、モバイル通信業界全体の課題として、5Gやその先の世代に向けての投資をしっかりと行っていかなければならないと考えいます。そのためには、やはり企業として収益を確保するがあります。販売店で働くスタッフへのベースアップや当社社員のベースアップにも対応する必要がありますし。電気代高騰の影響も受けています。Y!mobileでは業務のオンライン化を通してコスト削減に努めていますが、企業努力だけでは限界があります。
個人的には、通信キャリアとして最大の責務は通信インフラを支えていくことだと考えています。料金を安くするのが良いことだとしても、破壊的に安くインフラへの再投資ができないような状況に陥るのは、本当に良いのかということですね。
「プラン変更先取りプログラム」を提供した狙い
―― Y!mobileの現況をお伺いします。主力はやはりMプランでしょうか。
寺尾氏 ユーザー比率でいえば、SプランとMプランが同程度に契約されています。ただし、ユーザー全体のデータ消費量が増える傾向があり、その中で旧Sプランの3GBだと窮屈になり、Mプランへ移行する方が増えてきています。今回はSプランを1GB増やしていますが、M/Lプランは5GBとより大きく増量しているので、自然とMプランを選んでいただきやすい環境になったと考えています。
現在は、ユーザーさんも料金体系をすっかりご理解されているので、実際に必要とされるデータ容量に合わせて選んでいただいているというのが実態です。オンライン化も進んでいるので、店舗でインセンティブを付けて上位プランを選んでもらったとしても、結局はお客さんの必要とされる容量に戻られている状況にあります。
今はお客さんもプラン選びに非常に慣れていらっしゃいますので、僕らはお客さんに満足してもらえるように、地道なサービス改善を頑張っていこうという思いで取り組んでいます。
―― Y!mobileのサービスの中で「プラン変更先取りプログラム」はユニークな取り組みですね。
寺尾氏 プラン変更先取りプログラムは、現行のシンプルプランでは2022年12月から提供しています。新プランのシンプル2では提供準備中で、おそらく2024年1月頃から提供できるだろうと考えています。
このプログラムでは、当月のデータ容量が足りなくなって、ギガを追加購入しているお客さんに対して、当月中に上位プランへの変更をおすすめするものです。
例えばSプランを契約されている方が、早めに3GBに到達してしまったとします。高速通信を維持するために、追加のデータ容量を1回550円(500MB)で買っていただくことになります。それで例えば現行Mプランの15GB分を追加購入で賄おうすると、1万3200円もかかってしまうことになります。
ソフトバンクとしては追加パケットを購入いただいた方が多いほど収益増加につながるわけですが、この状況ではいくらなんでもぼろもうけしすぎやんと。ある月にWi-Fiが使えない状態になってギガ使い切っちゃったとかでそういった状態になってしまったら、それはなんぼなんでもひどいやんと。
そこで、プラン変更先取りプログラムを導入しました。上位プランへの変更をお申し込みいただき、プログラム利用料として1100円をお支払いいただくことで、翌月の料金分までの追加チャージを無料にします。例えばSプランからMプランの変更なら、12GB分の追加チャージを1100円でやりますよ、という内容です。
一方で、上位プランに変えたくないというお客さんも一定数いらっしゃいますので、適用するかどうかを選択する余地を残しています。
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