“金属ボディー”のスマホが減った理由 市場トレンドの変遷が素材にも影響(1/2 ページ)
かつてのスマートフォンには金属ボディーのイメージが強いが、いつからかガラス製の背面に変わってしまった。メタルボディーを採用したスマートフォンは、主に2012年から2016年ごろにかけて流行した。
かつてのスマートフォンには金属(メタル)ボディーのイメージが強いが、いつからかガラス製の背面に変わってしまった。今やスマートフォンの背面パネルはガラスパネルが主流となっている。今回はメタルボディーのスマートフォンがなくなった理由について考えてみたい。
メタルボディーのスマートフォンが生まれた背景は「薄型化」
メタルボディーを採用したスマートフォンは、主に2012年から2016年ごろにかけて流行した。本体背面やフレームが金属のものが見られた。代表例として「iPhone 5」や「iPhone 5s」が挙がる。
2012年発売のiPhone 5がメタルボディーとなってから、このようなデザインはいくつかのメーカーで採用された。著名なものでは「Nokia Lumia 1020」(2013年)、「HTC One M7」(2013年)などがある。
これらの大手メーカーが採用してから1つのトレンドとなり、2016年ごろでは「Xperia X Perfomane」「HUAWEI Mate 9」「HTC 10」などがあり、主流となっていた。
メタルボディーはiPhoneでの採用を機に、Androidスマートフォンもプラスチックから金属への移行が進む形となった。当時は本体の軽量化や薄型化がスマートフォンにおけるスペック競争の1つとなっており、各社がこぞって本体の薄さや軽量化にフォーカスした商品を展開していた。
薄型化競争は、特に中国では加熱した。2014年発売の「iPhone 6」も6.9mmと薄かったが、それをしのぐ機種が中国で多く現れた。「GiONEE ELIFE S5.1」の5.15mm、「VIVO X5 Max L」の5.1mmといったiPhone以上のさらなる薄型化を果たした機種が現れ、各社0.1mm単位で世界最薄を競っていた。
そして2015年にはカメラ部を除き厚さが4.85mm となった「OPPO R5」が登場。同年にVIVOも「X5Max」にて4.75mmとなるなど、ついには5mmを切って4mm台の厚さとなる機種も現れた。
樹脂よりも金属にした方が薄型化しても強度を確保できる点で優位だったこと、トレンドリーダーのiPhoneが金属ボディーかつ薄型化を行ったことから、薄型化の流れは瞬く間に普及したのだ。
金属製のボディーとすることで、効率よく放熱できるメリットもある。当時はプロセッサの発熱に悩まされた時代でもあり、今のような高性能な冷却機構も投入されていなかった頃だ。金属製のボディーを採用することで、本体全体がヒートシンクのような役割を果たしていた。
その一方で、バッテリー交換が容易でなくなってしまうことが指摘された。iPhone 4Sなどで採用された背面のガラスについても、当時は今ほどの薄型強化ガラスが少なく「割れやすい」という難点も抱えていた。当時は今ほど防水性能が必須でもなかったため、バッテリーの交換が容易な裏ぶたを採用する目的で、樹脂製とする機種も少なくなかった。
フルメタルボディーから背面ガラスのデザインへ変更した理由
さて、現在のハイエンドのスマートフォンの多くが金属フレーム、背面はガラスを採用している。これには、ワイヤレス充電の対応が大きな理由となっている。
特にハイエンドモデルでは、ワイヤレス充電は対応すべき機能の1つと評価されることが多く、各社対応を進めている。この機能を備えないだけでフラグシップとはいいがたく、「惜しいポイント」として評価されかねない。
実際、日本で発売されたフラグシップ機種では、iPhone、Galaxy、Xperia、AQUOS、Google Pixelは全てワイヤレス充電に対応している。
このワイヤレス充電の仕組みは、コイルを用いた電磁誘導によって行われるものとなり、金属ボディーではこのコイルが干渉して利用できないものとなっている。フルメタルボディーとして軽量化するよりも、ワイヤレス充電を採用したことによる利便性向上を選択した形だ。
かつてのような過度な薄型化もバッテリー性能や機能面でトレードオフになるなど、各社ちょうどいいバランスを探る傾向となった。
iPhoneが2017年発売の「iPhone X」でワイヤレス充電に対応させた結果、背面パネルがガラス素材となった。Galaxyでは先行してガラスパネルとしていたことから、1つのトレンドとして軒並み各社これに続く形となった。
どちらかといえば、iPhoneやGalaxyといったトレンドリーダーが備える必須機能のために、各社の本体デザインが制約を受けた形とみることもできる。
一方、本体の排熱性能はフルメタルボディーのころより弱くなってしまったため、冷却性能を向上させるための仕組みも多く開発された。サムスンが「Galaxy S7 edge」にてヒートパイプを採用したことを皮切りに、今では多くの機種がその発展形となるベイパーチャンバーを採用している。
欠点となっていたバッテリー交換の容易さについては、バッテリー本体の性能が向上したことで、デメリットを解消させつつあった。交換にかかるコストや手間については、Apple Careをはじめとした定額の補償サービスや、修理拠点の拡充なども行われた。
加えて、モバイルバッテリーの市場も拡大し、利用シーンに合わせて必要なものを選べることも大きい。
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