折りたたみスマホを長期間使うハードルが高いワケ ヒンジの耐久性よりも解決すべき課題(1/2 ページ)
筆者が「Galaxy Z Flip3 5G」を約2年利用した際に感じたことや課題を紹介する。Galaxy Z Flip3 5Gではメーカー公称値で20万回の開閉を行っても破損しないとしている。一方で保護フィルムの劣化には注意したい。
日本でも Galaxyの最新折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Fold5」「Galaxy Z Flip5」が発売された。初代「Galaxy Fold」の発売が2019年10月なので、日本で折りたたみスマホが発売されてから間もなく4年が経過する。
スマートフォンの買い換えサイクルが延びつつある中、折りたたみスマホは長期に渡って使用できるのだろうか。ちまたで言われる「折り目が強くなる」などの不具合が出るのか。今回、筆者が「Galaxy Z Flip3 5G」を約2年利用した際に感じたことや課題を紹介する。
Galaxy Z Flip3 5Gを約2年使った ヒンジの耐久性は大丈夫?
2021年に発売されたGalaxy Z Flip 3は、折りたたみのスマートフォンとしては初めての防水に対応し、使い勝手が向上した商品だ。日本でもドコモとauが取り扱い、おサイフケータイに対応させるなどのローカライズも行ったことで話題を集めた。
多くの方が気になるのは画面の折り目の耐久性だろう。2019〜2020年ごろの初期段階の折りたたみスマホでは耐久面に難があるものもあり、「使うのが怖い」と感じる場面も少なくなかった。
Galaxy Z Flip3 5Gではメーカー公称値で20万回の開閉を行っても破損しないとしており、これは1日あたり100回開閉しても5年間は利用できることになる。1日に100回も折りたたむのか? という疑問もあるが、睡眠時間などを除いた実働時間にあたる16時間を1日とした場合、1時間あたり6.25回となる。
すなわち、10分に1回端末を開閉することを毎日欠かさず繰り返し、これを5年半継続すると20万回に達するので、思った以上に現実的な数字となっている。
これを踏まえて耐久性を振り返ると、折り目が濃くなったり、画面が液漏れのような症状で黒くなったりすることは、筆者が2年間利用した限りなかった。筆者も言い方は悪いが結構雑に使っていた。それこそ水気のある場面でも利用し、幾度か落下させたりしたこともある。そのような意味では皆さんが思っている以上に耐久性はあるようだ。
サムスン電子の広報担当者に折りたたみスマホでよく聞かれる破損の要因を確認したところ、「画面破損の多くは鋭利なものを画面に引っ掛けてしまうこと、鍵やコインを挟み込んでしまうこと、ヒンジ部に過度な負荷がかかることが考えられる」とのことだった。
特に最新の Galaxy Z Flip 5ではヒンジをしっかり閉じられる機構となり、ほこりなどがメインディスプレイに侵入しにくい構造となった。これにより、コインや鍵などを挟むリスクも少ないものになった。また ヒンジそのものの強度も向上しており、以前より強い衝撃を与えても耐えられるようにしている。
もう1つ気になるのがバッテリーの劣化だ。構造の関係で、バッテリー容量の少ない本機種では多少劣化してもすぐ使用感に直結してしまう可能性が高い。
実際にGalaxy Z Flip 3を2年利用したが、バッテリーの健全度は80%以上の数字を示していた。利用していて明らかにバッテリーの減りが早くなったと感じることもなかった。サムスン電子広報も、古い機種でも継続的なアップデートや各種処理の最適化などを行うことで、バッテリーの劣化を抑えられるとコメントしている。
また、バッテリーが2つあることでどちらかのバッテリーから優先して消費、劣化する「片減り」が起こる懸念についても、基本的には2つのバッテリーを同時に充電し、使用時も同時に消費する。どちらかのバッテリーが過度に劣化することはないとサムスン電子からは回答をもらっている。
長期利用では耐久性よりも画面保護フィルムの劣化が課題か
さて、上記に挙げた以外で折りたたみスマートフォンを利用する際に困ったのは、画面保護フィルムの扱いだ。
画面保護フィルムはGalaxy Z Flip3 5Gでは本体購入時には貼られているが、これもいつかは他の多くのスマートフォン同様に劣化してしまう。また、すり減って劣化するのと同じくして、折りたたみ機構の関係からヒンジ部から気泡が入ってしまうことも多い。
この手の機種では「UTG」と呼ばれる極薄のガラスが採用されており、それの保護としてフィルムが貼られている。
実はほぼ全ての折りたたみスマートフォンにおいて、この初期フィルムをはがしたまま使用することはメーカーも推奨しておらず、劣化したら「張り換えてほしい」と案内している。
基本的にフィルムが劣化したら貼り直せばよいが、この機種に関してはフィルムが少々特殊なもののため、「修理」に近い取り扱いとなる。キャリアでは貼り替えではなく「お預かり修理」の対応になるため、代替機の手配も必要になる。また、純正品以外のフィルムを貼り付けた場合による故障はメーカーやキャリアの保証対象外となる場合があり、取扱説明書にもそのような明記がある。
筆者も過去にフィルムに気泡が入って浮いた際に自分で貼り直したが、メーカー保障外になるため、推奨される方法ではない。
キャリアのお預かり修理以外ではGalaxy Harajukuなどの直営店、一部ドコモショップなどで行っているGalaxyのリペアセンターといった公式の修理拠点を利用して貼り替えてもらうことがオススメだ。多くの場合は即日で対応してもらえるため、時間的なロスも少ない。
日本でも折りたたみスマホ用のフィルムはネット通販などで販売されているが、上記の理由から量販店などではあまり流通していない。このような文言と貼り付けが自己責任となる点から、一般利用者には受け入れられない点も理解できる。
この手のフィルムは折りたたみ機構の関係でフィルム自体が伸びる仕様となっており、一般には「水貼り」と呼ばれるやり方で行う。これは、一般ユーザーが貼り付けるには難易度の高い方法となっており、筆者も過去に試したが、普通のフィルムの感覚で貼ろうとしたらあえなく失敗した。また、初期のころの防水性のない機種では水没の可能性もあり、貼ることすら怖いものとなる。
その一方で、韓国では個人でもフィルムを貼り替える需要があるのか、サードパーティーのフィルムも多く売られている。Galaxy Z Flip3 5Gに関してはダイソーにて2000ウォン(220円)で販売されているくらい安価でポピュラーだ。
安価な保護フィルムが多いのは、端末が日本以上に多く流通していることが影響していると考えられる。また、Galaxy Z Filp3で防水に対応したことから、水貼りも以前に比べれば簡単に行できるようになった点もプラスに作用している。同国向けのサードパーティーフィルムはGalaxy Z Flip3 5G以降の防水性能を持つ機種をターゲットにしているものが大半となり、これを理由に一般消費者が水貼りをしても浸水の不安を低減しているものと考える。
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