自民党のプロジェクトチームが「NTT法は廃止」と提言まとめる――IOWNは本当にGAFAに対抗できるものなのか:石川温のスマホ業界新聞
自由民主党内に設置された「日本電信電話株式会社等に関する法律の在り方に関するプロジェクトチーム」が、NTT(日本電信電話)を2025年をめどに完全民営化すべきという提言をまとめた。当初の「防衛財源の確保」から「国際競争力の強化」に目的が入れ替わってしまっているが、果たして「NTTをGAFAに対抗する」存在に位置付けることは正しいのだろうか。
自民党のプロジェクトチームが12月1日、「令和7年の通常国会を目処にNTT法を廃止する」との提言をまとめた。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2023年12月2日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
当初、テーマとなっていた「防衛財源の確保」はうやむやとなり、NTTに課す義務を減らすことで国際競争力を高める方向に舵が切られた。
NTT法を廃止することで研究開発成果の公開義務を撤廃したかったのだろう。固定電話サービスの全国一律提供義務やグループ会社の統合禁止などは電気通信事業法で整備するとしているが、どこまで実効性があるかは不透明だ。
日本を代表するNTTが国際競争力を高め、世界に打って出ていくというのは賛同しかない。将来的に通信の世界で、IOWNの光電融合技術がスタンダードになる可能性は十分にあるだろう。
ただ、IOWNによる「NTTがGAFAに対抗できる」という論調は正直、首をかしげるしかない。NTTがIOWNによって、インテルやクアルコム、NVIDIAに置き換わるような存在になるというのであれば納得できる話だ。電気信号で処理する半導体が光信号に置き換わるようになり、コンピューターやスマートフォン、サーバーなどの半導体にNTTが参入するというのであれば理解できる。
しかし、これによって「GAFAに対抗する」というのは、あきからにレイヤーが違いすぎる。
NTTがIOWNで目指すのは、GAFAのような巨大なITプラットフォーマーにIOWNのサーバーや技術を活用してもらうことだろう。GAFAは敵ではなく味方のはずだ。
GAFAにIOWNを使ってもらう上で、「研究開発成果の公開義務があるとパートナーになってくれない」のであれば、即刻、公開義務は撤廃すべきだ。
ただ、公開義務の撤廃はKDDIやソフトバンク、楽天なども理解を示しており、誰も反対していない。なぜ、NTT法を撤廃しないといけないかの説明がない。
NTTとしては国際競争力を高めるために、赤字が続いている全国一律の固定電話サービスを見直したいのも理解できる。将来的には需要が見込めないところは撤退あるいはメンテナンスを放置することもあり得るだろう。
もうひとつ、気になるのがNTTが本気で国際競争力を高め、GAFAに対抗したいのであれば、NTTグループ全体を筋肉質にしていく必要があるのではないか。
ChatGPTにグーグル、アマゾン、メタ、アップル、マイクロソフトとともにNTTグループの売上げと従業員数の比較表を作ってもらったところ、倉庫や配達の人がカウントされているっぽいアマゾンは突出して従業員数が多いのだが(160万人)、NTTグループは32万人とアップル(15万人)やグーグル(15万人)、マイクロソフト(18万人)に比べて1.5倍から2倍の従業員を抱えている状態となっている。
もちろん、NTTグループの売上は他社の半分から3分の1と言った程度だ。
NTTが特殊法人から一般法人になるということは、従業員もそれなりの覚悟が必要ということなのだろうか。
関連記事
100Gbpsの高速/大容量、低遅延 NTT東西が全区間光通信「APN IOWN1.0」商用化へ
NTT東日本、NTT西日本は3月3日、IOWN構想の実現に向けた商用サービス「APN IOWN1.0」の商用化を発表した。100Gbpsの高速/大容量通信を低遅延、ゆらぎなく提供するもので、3月16日に販売を始める。6G時代は「テレパシーがSFの世界でなくなる」 ドコモが掲げる“人間拡張基盤”とは
ドコモの最新技術を紹介する「docomo Open House'22」が開幕。同社は、6Gに向けて空、宇宙にエリアを広げる取り組みを続けている。人間の感覚をリアルタイムで伝え、保存できる「人間拡張基盤」も掲げる。ドコモとエアバス、成層圏から地上への電波伝搬実験に成功 山間部や離島などのエリア化を目指す
NTTドコモとエアバスは、高高度無人機(HAPS)を用いた成層圏から地上の受信アンテナへの電波伝搬実験に成功。この結果をもとに、通信エリア化が難しい山間部や離島、海上などでの通信サービス提供を目指す。移動するユーザーにも5Gミリ波の電波を ドコモがユーザー追従型メタサーフェスの実証実験
NTTとNTTドコモはメタサーフェスを28GHz帯5G基地局を利用し、ユーザーの動きに合わせて電波の反射方向を動的に変更させる実証実験に成功。工場やオフィスなど、遮蔽(しゃへい)物が多い場所での利用シーンが拡大するという。NTT株主が経営陣に「夢のある話をして欲しい」と苦言 ――NTTによるNTTドコモ完全子会社で失われたもの
6月は大手キャリアの株主総会が集中的に開催されるシーズンだ。しかし、今年(2021年)からはNTTの完全子会社となったNTTドコモの株主総会は行われない。NTTの株主総会は、ドコモのそれと比べると「夢のある話」が少ないようだ。
関連リンク
© DWANGO Co., Ltd.