今年のCES 2024は「AI祭」につきる――でもそのAI、今までと何が違うのか:石川温のスマホ業界新聞
米ネバダ州ラスベガスで開催された「CES 2024」が閉幕した。今年はAI(人工知能)推しの出展者が多かったのだが、10年以上CESを取材してきた筆者からすると、よくよく考えると「毎年同じことを言っているだけ」にも思える。AIは、結局マーケティングワードでしかないのだろうか。
CES 2024を一言で振り返るならば「AI祭」に尽きるだろう。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2024年1月13日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
毎年、年始に開催されるCESは、その年のテックトレンドを占うイベントとなっており、最近では「IoT」や「スマートホーム」などがテーマとなっていた。しかし、どちらも先細りというか、本格的に普及しているところまでは至っていない感がある。確かに、過去のCESを振り返って見ると、「今年のテックトレンドはこれだ」といっても、実際、ユーザーに定着することはなく、肩透かしに終わるというのを毎年、繰り返しているだけだったりする。
今年の「AI祭」に関しても、例えばフォルクスワーゲンがChatGPTに対応したカーナビを発表していたが、やれることといえば「周辺のレストラン検索」や「ちょっと寒い」と声をかけたらエアコンの温度を上げてくれるといった「別にChatGPTじゃなくてもいいんじゃない?」というレベルだったりする。
また、サムスン電子は「AI for ALL」というキャッチコピーで、あらゆる家電製品がAI対応となり、冷蔵庫はAIが載ったカメラにより、庫内に何があるか、賞味期限がわかるようになる。さらにAIに対応したパーソナルロボットが家じゅうを走り回るといった発表を行っていた。
しかし、CESを10年以上、取材してきた身からすると「10年前から同じ事を言っていないか」というツッコミを入れたくなってきてしまうのだ。
特にテレビは典型的で「AIが載ったチップで処理するので画質が上がる」としているが、そんなこと10年前からやっていたのではないか。
家電メーカーとして、新たなテクノロジーによる提案を見せているようには感じるのだが、結局、トレンドワードを追うだけで、IoTやスマートホーム時代とやっていることは何一つ変わっていない。
「AI」というマジックワードでプレゼンすることで、世間のトレンドに載っているという「マーケティング」に過ぎなかったりするのだ。
ただ、デバイス上で生成系AI処理を施すことで、全く新しい使い方を提案してくれるところもあった。実際に使ってみると、「こりゃ、AIってスゴイ」と感じるデバイスもこれから出現するのは間違いなかったりする。
単にAIといっても、十把一絡げで、本質を見誤ることがありそうな気がしてならない。
去年からAIを冠したデバイスやサービスが山ほど出ており、CESの影響を受けて、今年もAIを語るモノというのが雨後の竹の子のように出てくるだろう。
そのなかで「本当にいままでのAIと違うのか。何が画期的なのか」を見極めていく必要がありそうだ。CESが過去に繰り返してきた「トレンドワードは作るけど、定着しない」という失敗を繰り返す危険性もゼロではないはずだ。
関連記事
「Galaxy S24」はAIでスマホの使い勝手を刷新 Google/Microsoftとの“等距離外交”も強みに
サムスン電子が新たに発表した「Galaxy S24」シリーズでは、新機軸としてAIを全面的に打ち出している。一連の機能をまとめた「Galaxy AI」は、Googleが下支えをしている。同モデルからは、2大プラットフォーマーとの等距離外交で差別化を図るサムスン電子の戦略も透けて見える。画面に映るものを「かこって検索」――Android向け「Google検索」に実装 Galaxy S24シリーズとPixel 8/8 Proから
Googleが、Androidスマートフォン向けの「Google検索」に新機能「かこって検索(Circle to Search)」が実装される。1月31日からPixel 8シリーズとGalaxy S24シリーズで利用できるようになるという。Galaxy S24シリーズはGemini ProとImagen 2を搭載した最初のスマートフォン サムスンとGoogle Cloudが協力
Samsung Electronics(サムスン電子)とGoogle Cloudは1月17日(米国東部時間)、新たな複数年のパートナーシップを発表した。Google Cloudのジェネレーティブ人工知能(AI)技術を世界中のSamsungスマートフォンユーザーに提供することが目的だ。Galaxy S24シリーズには米Googleの「Gemini」などを含む多くの生成AI機能が搭載される。通信で「味覚」を共有する技術をドコモが開発 実際に“味見”してみた
ドコモの技術展示イベント「docomo Open House '24」が開催中。通信で「味覚」を送るというユニークな展示があった。パナソニックのスマートテレビが「Fire TV」に――OSを「Fire OS」に切り替え 2024年から順次
パナソニックのスマートTVのOSが、Firefox OSからFire OSに切り替わることになった。2024年に発売するフラグシップ有機EL搭載TVを皮切りに、パナソニックのスマートTVに「Fire TV」の機能が統合されることになる。
関連リンク
© DWANGO Co., Ltd.