KDDIが三菱商事とローソンを共同経営――商社との折半出資はKDDIの勝ちパターン?:石川温のスマホ業界新聞
KDDIがローソンの株式に対するTOB(株式公開買い付け)を実施し、三菱商事との共同経営を行うことが発表された。「通信と小売のシナジー」について懐疑的な見方も少なくないが、KDDIは過去にも「50:50」の比率で異業種と組んできた成功体験がある。
2月6日、KDDIと三菱商事はローソン株のTOBを行い、出資比率50:50で共同経営していくことを発表した。一般紙などでは「通信と小売りのシナジーが見えない」と指摘しているが、発表会終了後の囲みで高橋社長は「海外で始まったものを、日本に持ってきて、日本の付加価値をつけて、すごく良くしてグローバルに持っていく。これが僕らの目指している姿」と語る。海外発祥のローソンを東南アジアを中心にグローバル展開していくことを「絶対にやりたい」(高橋社長)ということで、最終的には海外拠点のあるKDDIが通信やテクノロジー、人的支援をすることで、ローソンのグローバル展開を狙っていくようだ。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2024年2月10日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
今回の資本業務提携話、過去の例を見るとKDDIの「王道パターン」という気がしてならない。KDDIはこれまでも50:50の出資比率で異業種とタッグを組み、成功してきた実績がある。
例えば、2008年に三菱UFJ銀行(当時)とKDDIが折半で出資して設立したのが「じぶん銀行」(現auじぶん銀行)だ。
2012年にはケーブルテレビのジュピターテレコム(J:COM)を住友商事とともに共同買収すると発表。さらにJ:COMがKDDI傘下でCATV2位のジャパンケーブルネット株式会社(JCN)を統合し、住友商事が50%、KDDIが50%という共同経営体制の新生J:COMが誕生したのだった。
銀行や商社とタッグを組みつつ、その後、主導権を上手いこと握っていくというのはKDDIの成功体験になりつつあるのだ。
三菱商事の中西勝也社長は「三菱商事グループの上流から流している食品デリバリーなど、いろいろなところでアドオンはしてきたが、これ以上追加でサポートできることについて悩んでいた」と語る。
三菱商事として、ローソンに対して、これ以上、新しいサポートをするのが難しくなるなか、KDDIとの話は渡りに船ということだったのだろう。
囲みのなかで、ローソンの竹増貞信社長が「ローソンから最短15分でお届けするデリバリーサービスは中期経営計画のひとつの山にしていきたい。ただ、現在は、店舗の在庫との連携がまだ進んでおらず、3割ぐらい欠品している状態。そのため、マーケティング活動がまったくできていない。
これは4月に在庫管理システムと連携し、欠品がほぼなくなるような状態になる。グッとアクセルを踏んでいきたい」と語っていた。
ここではっと思いついたのが、デリバリーサービス「menu」だ。出前館やUber Eatsに比べるとかなりマイナーだが、menuは昨年4月にKDDIが50.6%、レアゾンが49.4%の株式を保有するジョイントベンチャーになっている。
ローソンとしては自社で展開しつつ、menuのプラットフォームを活用すれば、一気にクイックコマースを強化することが可能だ。
ローソンとしてはDXを迅速に進めるという点においてKDDIとは組めたことは相当、プラスになるのではないだろうか。
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