KDDIの5Gネットワーク戦略を解説 高橋社長が「他社の上に立てる」と自信を見せる理由:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
KDDIが4月以降、首都圏で「Sub6」の5Gエリアを大きく拡大する。KDDIは、3.7GHz帯と4.0GHz帯の計200MHz幅を保有しており、大容量で高速な通信が可能になる。同社によると、そのエリアの広さはおよそ2倍まで拡大するという。
KDDIは、4月以降、首都圏で「Sub6」の5Gエリアを大きく拡大する。Sub6とは、5G専用に割り当てられた6GHz帯以下の周波数帯。KDDIは、3.7GHz帯と4.0GHz帯の計200MHz幅を保有しており、大容量で高速な通信が可能になる。KDDIによると、そのエリアの広さはおよそ2倍まで拡大するという。では、なぜこのようなこと可能なのか。この取り組みからは、同社の5Gにおけるネットワーク戦略が透けて見える。
Sub6の出力拡大で首都圏のエリアを拡大するKDDI、3社で異なる5Gのネットワーク戦略
KDDIはこれまで、首都圏ではSub6のエリアを意図的に狭めていた。KDDIに割り当てられた3.7GHz帯や4.0GHz帯は、スカパーJSATの衛星通信と干渉するためだ。衛星は、地球局との通信にCバンドを利用しており、この帯域がSub6の一部と重なっている。出力を上げてしまった場合、干渉で通信ができなくなってしまっていた。同じ周波数帯は、もともと衛星が活用していたため、キャリア各社は干渉回避策を取ることが割り当ての条件になっていた。これは、同じ3.7GHz帯を割り当てられた、ドコモやソフトバンクも同じだ。
KDDIの執行役員 技術統括本部 技術企画本部長の前田大輔氏は、「衛星の地球局の周辺対象エリアの全基地局からの出力がどこまでなら基準を満たすかを設定し、そこに満たないように出力を下げたり、チルト角を下げたりすることで運用してきた」と語る。基地局そのものは設置していたが、電波が飛びすぎないよう、あえてエリアを狭めていたというわけだ。抑制している出力は場所によってまちまちだが、「最大で20db、通常の100分の1まで抑制している基地局もある」(同)という。
一方で、ドコモは衛星との干渉影響が少ない4.5GHz帯をメインに据え、首都圏での出力を上げていた。この周波数帯はドコモだけのもので、同社にとって強みになっていたが、海外で同じ周波数帯を使う国や地域が少なく、対応端末が限定されるのが難点だった。これに対し、ソフトバンクは3.7GHz帯の基地局展開をやや抑えつつ、どちらかといえば、4Gから転用した3.4GHz帯で5Gのエリアを確保している。
3.4GHz帯の帯域幅は3.7GHz帯や4.0GHz帯と比べると狭いが、3.5GHz帯と合わせると80MHz幅を確保でき、一般的な4Gよりは大容量。ソフトバンクも3.7GHz帯の基地局は展開しているが、ドコモやKDDIと比べると、開設計画時点からその数は少ない。干渉影響が排除できなかった3.7GHz帯より、容量の大きな4Gから転用した3.4GHz帯をメインに据えていたというわけだ。速さと容量のバランスを取った展開方法だったといえる。
これに対し、KDDIはもともと3.7GHz帯を大きく拡大する計画を打ち出していた。総務省に提出した開設計画では、他社を大きく上回る3万4267局の基地局数を申請。この周波数帯を5Gの“本命”と見なして、着々とその数を増やしてきた。年度末の3月に向け、このペースをさらに上げている。現在は「追い込みに入っている」(同)段階で、「今のところ(総務省に提出した)計画を達成する形で進めている」という。
これまでは、同社にとっての5G導入期。その方針は、「まずエリアを広げるために4Gで使っていた周波数を転用する」(同)ことで、先に5Gのエリアの拡大に注力してきた。また、特に駅や鉄道沿線、商業施設などの生活動線を優先。広い5Gエリアと、ピンポイントながら容量の大きなSub6のエリアを使い分けてきた。
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