レビュー

中国の“音楽特化スマホ”「MOONDROP MIAD01」を試す 重厚なサウンドに驚き、作り手のエゴを存分に感じた(2/3 ページ)

市場にはさまざまなスマートフォンが存在するが、中には個性的な方面に差別化を図った製品も存在する。今回は「音」に特化したスマートフォンとして注目を集めるMOONDROP MIAD01をご紹介したい。

専用DACと4.4mmバランス端子でスマホらしからぬ高品質サウンドに驚く

 MIAD01の最大の特徴は「音」にフォーカスしたスマートフォンであることだ。近年ではカメラやゲーム性能にフォーカス当てたスマートフォンが多く登場しているが、イヤフォンジャックのサウンドにフォーカスを当てたスマートフォンはかなり少ない。

 振り返ってみると、LGエレクトロニクスの一部スマートフォンやソニーのXperiaがこの部分にフォーカスしていた。「Quad DAC」を採用した「LG V60 ThinQ 5G」や、2024年6月に発売された「Xperia 1 VI」はイヤフォンジャックの音質をアピールしている数少ない端末だ。

 今回のMIAD01はそれらの端末を上回るポジションにいる。その理由は専用の高品質DACやアンプを備えること、4.4mmのバランス端子を備えることだ。

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 専用のDACを持つ点は大きなアピールポイントだ。シーラス・ロジック製のモバイル向け上位のDACを採用し、音響回路部分にはノイズ対策のために金属製のシールドをかぶせている。このあたりはモバイル向けのスティック型DACを製造したノウハウが生きている。

 これが生きた結果か、スマホとしては優秀な132dbのダイナミックレンジを備える。アンプ部もアンバランス端子で2Vrms、バランス端子で4Vrmsの数値(いずれもメーカー実測値)を確保している。

音量も100段階で調整できるなど、音楽プレーヤーとしての側面もかなり高めた設計だ。これによって音量の取りにくい構成のイヤフォンやヘッドフォンも安定してドライブできる。


通常のイヤフォンジャックとは異なる4.4mmバランス端子(右側)を備える。あまりにも異端すぎるスマホだ

 音質面を強化したMIAD01のサウンドをチェックしてみよう。まずはアンバランス端子から聞いてみる。一聴して他のスマホとは異なる「格の差」を見せつけられる。スマートフォンのイヤフォンジャックでよく指摘される「薄っぺらさ」といったものを一切感じさせない、繊細かつ重厚なサウンドを体験できる。

 バランス端子では分離感、解像感が1段上がり、音の輪郭がハッキリしてくる。4.4mm端子は一般的なイヤフォンと異なる端子なので、別途対応する機種やケーブルなどを用意する必要がある。それでも、MIAD01の本領を発揮するのはこちらの端子であり、可能ならこちらの端子で常用したいものだ。

 もちろん、10万円を超えるような音楽プレーヤーやパワフルなポータブルヘッドフォンアンプを使用したサウンドには及ばない。好みの差もあると思うが、筆者としてはあくまでスマートフォンのカテゴリー内で群を抜いた存在と評価したい。


バランス端子でのサウンドは並みのスマホをしのぐ

MIAD 01は高音質スマホ「GRANBEAT」の後継モデルになれるか

 そんなMIAD 01は日本市場で特に高い関心を持たれている。その理由は、ポータブルオーディオが盛んな市場で水月雨の知名度が高いことはもちろん、過去にオンキヨーから「GRANBEAT」という音質特化スマホが存在していたことも大きい。

 GRANBEATは2.5mmのバランス端子を備え、専用設計の音響回路を備えたスマートフォンだ。本機種は2017年に発売され、高級音楽プレーヤーとスマートフォンを1つにできる製品として注目された。

 当時はMVNOでの取り扱いもあり、一定の層には売れたものの、会社の経営難などを理由に後継機種が現れることはなかった。年数の経過やVoLTEに非対応なことから継続利用も難しい機種のため、今なお後継機が待たれるスマートフォンの1つだ。


音に特化したスマートフォンだったオンキヨーのGRANBEAT

 また、現行のAndroidを採用した音楽プレーヤーを利用するユーザーからの関心も高い。これらの機種はノイズ対策や少数生産ゆえの調達価格の関係などから、今もなお性能の低いプロセッサを採用しているものが少なくない。

 Androidを採用して音楽ストリーミングサービス対応をアピールしていても、性能の低さから「動作はもっさりしていて、使いにくい」といった意見が数年前からあったのだ。

 GRANBEATの後継だけでなく、キビキビ動く性能の高い音楽プレーヤーの両者に白羽の矢が立ったのが、水月雨のMIAD01なのだ。バランス端子は主流の4.4mmを採用し、音質面でもスティック型DACを接続した端末と大きく変わらないレベルを達成している。

 5G通信に対応したことで、必然的にプロセッサにある程度の性能が確保されている点もストリーミングサービスを使う上ではうれしいところだ。

 過去のGRANBEATと比較しても、サウンドについては双方共にレベルが高い。MIAD01もここ数年で発売された機種の中では群を抜いて高いクオリティーだが、2017年に発売されたGRANBEATも引けを取らない。

 両者の違いはMIAD01が水月雨らしい女性ボーカルの帯域に重きを置いたチューニングに対して、GRANBEATは解像感を重視したオールラウンダーといったところ。ここは好みの問題もありそうだ。

 バランス端子は両者ともにスマートフォンらしからぬ高音質だが、3.5mmのアンバランスでは、GRANBEATの方に軍配が上がる。MIAD01も高品質だが、この機種はバランス端子とアンバランス端子は明確に音に差がある構成のため、よりピュアなオーディオに近かったモノはGRANBEATと評価したい。

 そのため、MIAD01はストリーミングアプリなどを主眼に置いた「高音質スマホ」に対し、スマホでありながら電波を発さない状態で使用する「スタンドアロンモード」といった音楽プレーヤーとしての側面が強いGRANBEATという印象だ。

 高音質なサウンドハードウェアを組み込んだスマホか、音楽プレーヤーとして設計したものにスマホ機能を付けたか。両者のコンセプトは根端から異なるものだと感じた次第だ。

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