OPPOが3年ぶりハイエンド「Find X8」を投入する真意 カメラはライカと競合せず、折りたたみはキャリアとの協業がマスト(1/3 ページ)
OPPOのスマホやタブレットなどを日本で手掛けるオウガ・ジャパンは、約3年ぶりとなるハイエンドモデル「OPPO Find X8」を発売した。ハイエンドモデルを望む日本ユーザーの声に応えた形だ。とはいえ、なぜ3年ものブランクが空いてしまったのか。
OPPOのスマホやタブレットなどを日本で手掛けるオウガ・ジャパンは、約3年ぶりとなるハイエンドモデル「OPPO Find X8」を発売した。日本市場では、Reno Aシリーズを中心にしたミッドレンジモデルやローエンドモデルを多数展開していたOPPOだが、ハイエンドモデルは「OPPO Find X3 Pro」以降、投入を見送っていた格好だ。その間も、OPPOはグローバルでハイエンドモデルを継続的に投入し続けており、老舗カメラメーカーのハッセルブラッドとの協業も始まっていた。
海外市場の動向を見たユーザーからのハイエンドモデルを待ち望む声は、日増しに大きくなっていた。こうした期待の高まりを受け、オウガ・ジャパンは満を持してFind X8を発売した経緯がある。とはいえ、なぜ3年ものブランクが空いてしまったのか。3年という期間が空いただけに、Find X8の次がいつになるのかも気になるところだ。
また、Reno Aシリーズなどとは異なり、Find X8はグローバル仕様に近く、日本向けのカスタマイズは施されていない。日本市場で日本人向けのカスタマイズされたモデルを展開してきたオウガ・ジャパンだが、Findシリーズはこれまでの端末と方針が異なるのか。こうした疑問を、オウガ・ジャパンの専務取締役を務める河野謙三氏と営業推進部プロダクトマネージャーの中川裕也氏にぶつけた。
ハッセルブラッドとライカはそもそも競合していない
―― Find X8は、約3年ぶりとなるハイエンドモデルになりました。お休みしていたハイエンドモデルを再び投入することになったきっかけを教えてください。
河野氏 どのメーカーも同じだと思いますが、今後3年、5年の中でどの方向に向けて製品を開発するのかという経営方針があり、OPPOはAIに経営資源を投入することを決めていました。その一環として、24年のMWCではブースこそ出していませんでしたが、AI研究者を集めたレセプションをやったりもしています。研究者を集めて、オープンしたばかりのAI研究センターやOPPOの開発する「Andes GPT」の説明をしていまいた。
スマホメーカーとしてAndes GPTを組み込むにあたり、どういう方向性に特化すればいいのかは長年議論してきました。LLM(大規模言語モデル)といっても、どこに特化していくかの方向性はさまざまです。文系に強いものもあれば、理系に強いものもある。そうではなく、文と文のつながりに強いものもあり、性能評価は多岐にわたります。その方向性が決まったのと、Find X8が出るタイミングがほぼ重なったことで投入に至りました。“におわせ”は1年ぐらい前からしていましたが(笑)、ちょうどいいタイミングだったと思います。
―― ハッセルブラッドと協業したカメラが載っていたことや、他社がライカブランドを冠したスマホのラインアップを強化していたこともあり、どちらかといえばカメラ性能で決めたのだと思っていました。
河野氏 ハッセルブラッドとの協業は2年前からで、Find Xシリーズには標準で入っています。カメラを推しているのは今に始まったわけではありません。ただ、ハッセルブラッドと協業したのは日本市場では初めてだったということもあり、そこもフィーチャーしました。
―― AIの方向性が見えてきたからというのが少し意外でした。
河野氏 OPPOのAIは、ハイエンドからローエンドに至るまで同じ性能のものを搭載できるのが強みになっています。ハイエンドだからAIを推したいというのではなく、たまたまこのタイミングではこの製品のバランスが一番よかった。画面サイズもそうですし、バッテリー容量もそうですし、もちろんカメラもそうです。テクノロジーのショーケースとしてベストということもあり、この製品で導入しています。
―― とはいえ、シャープやXiaomiからライカブランドのスマホが出ている中、対抗軸としてのハッセルブラッドというようなことは意識したのではないでしょうか。
河野氏 ブランドのことなので僕が言うべきではないのかもしれませんが、ハッセルブラッドとライカはそもそも競合しているのではなく、目指しているものが違うと思っています。一般的にはライバルとみられるかもしれませんが、そうではないということです。車に例えるなら、スポーツカーとSUVぐらい用途が違う。
ハッセルブラッドはもともとプロフェッショナルの現場で使われていたもので、製品写真を撮るようなプロ用のスタジオには必ずありました。壁面一面に引き伸ばさなければいけないような写真を撮るので、ハッセルブラッドを使うといったような用途ですね。一方のライカはストリートスナップなどに使われていて、ファインダーも独特です。街中で記憶に残るものをスナップしたいという使われ方をしていたと思います。
「ハイコンテクスト」な日本語はAI対応のハードルが高い
―― AIに話を戻しますが、日本語対応が3月以降というのはAndes GPTがそのタイミングで日本語に対応するということなのでしょうか。
河野氏 はい。アップデートで対応する予定です。
―― これはOPPOに限った話ではないのかもしれませんが、GoogleでもAppleでも日本語は後回しになることが多いと思います。なぜ時間がかかるのでしょうか。
河野氏 言葉にはローコンテクストとハイコンテクストの2つがあり、例えば英語であれば、ちょっと文章がおかしかったり、「a」や「the」が抜けていたりしてもそれほど気になりません。ところが日本語は、ちょっと違っただけでも意味が通じなくなることがあります。例えば、「私はカメラが好きです」の「は」を「を」に変えると、「私をカメラが好きです」になって意味が変わってしまう。文章の組み立て方が独特で、世界唯一といってもいいぐらいです。学習のさせ方によっても、表現の幅が変わってしまいます。
AIは上流の工程でいろいろな文献を学習させ、その中から言葉を刻んでいくのですが、その過程で六法全書を学習させるのとX(旧Twitter)を学習させるのとでは、アウトプットがまったく違う。それを均一にしていくだけでも日本語は難しいと思います。自分もMacの上でローカルなLLMを動かしていていますが、それは感じています。
―― 確かに日本語はハイコンテクストですね。
河野氏 スマホに載るものは万人が使うので、アウトプットに「○○○草不可避」とか出てきたら困るじゃないですか(笑)。独特な言葉もあって、僕もNTT(コミュニケーションズ)にいたとき、総務省に出す報告書を書く係だったのですが、そこでも使う言葉を直されたりします。会社の独自の用語もあって、例えば工程をまとめたスケジュールチャートのことを「線表」と言います。NTTの文献だけを読み込ませたら、そういう表現になってしまう。そこから不要なものを取り除いていくチューニングも必要になります。
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