半年、スマホ通信費タダ 「お試し割」に楽天モバイルが慎重な理由 過去の提言から見えたこと(1/2 ページ)
総務省が2024年12月5日、電気通信事業法第27条の3等の運用に関するガイドラインの改正案を公表。通信キャリアに新しい割引を認めたが、通信キャリア各社からの具体的な施策発表はまだない。一定期間に通信料金を割り引く、いわゆる「お試し割」はいつ始まるのか。
一定期間に通信料金を割り引く、いわゆる「お試し割」はいつ始まるのか? 総務省が2024年12月5日、電気通信事業法第27条の3等の運用に関するガイドラインの改正案を公表し、通信キャリアに新しい割引を認めたが、通信キャリア各社からの具体的な施策発表はまだない。
具体的には、半年間(6カ月間)にわたり、2万2000円(税込み、以下同)を割引額の上限とし、同一の通信キャリアで1回のみなら、継続利用を条件とした割引を認める。
一般ユーザーにとっては、通信料金は少しでも安い方が望ましい。しかし、お試し割をさまざまな観点から見渡すと、単なるユーザーのメリットだけでなく、いまだにお試し割が始まらない背景も見えてくる。お試し割の全貌について、詳しく解説していきたい。
お試し割はどのようなシーンに役立つのか
まずは、お試し割で得するシーンを考えたい。皆さんの中には、例えば自宅や会社、さらにはよく行く場所で、本当につながるかどうか、契約前に確認したい人はいないだろうか? そんな場合にこそお試し割が有効だ。通信品質を一定期間確かめながら、割引を受けられるためだ。
実際、総務省が10月12日から11月11日まで行った意見募集では、このお試し割について、通信サービスの品質に不安を持っているユーザーの不安解消に一定の効果があるという前向きな意見が見られた。このことからも、通信サービスを試す際に活用できそうな割引だと見て取れる。
ただし、注意点もある。1キャリアにつき利用者1人に対して1回だけ、通信サービスの料金を割り引けるという条件からは、1人が何度も受けられる割引ではないことが分かる。つまり、NTTドコモのdocomoからahamoに乗り換え、同じキャリアで利用ブランドが異なったとしても、複数回割引を受けられないというわけだ。
お試し割の背景は何か 有識者会議でとあるキャリアが提言
お得感も注意点もあるお試し割だが、どのような背景からこの案が生まれたのだろうか。影響を与えているのは、楽天モバイルの存在だ。2024年3月13日、総務省で実施された有識者会議「競争ルールの検証に関するWG」(53回)で、楽天モバイルが「通信サービスを気軽に体験できる環境の実現」に向けた提言を行ったのだ。
具体的には、「競争環境への影響が限定的な新規参入事業者において柔軟な施策の実施が可能となった際には、新規顧客獲得に向けた施策の実施により乗り換えのきっかけを提供していきたい。デジタルに慣れていない方含め 『誰一人取り残さない』デジタル化の実現に引き続き貢献したい」と割引サービス導入希望の意図を説明した。
電気通信事業法第27条の3では、スマートフォンの値引き規制などが定められているが、その対象となる通信事業者は楽天モバイルを含む4キャリア全てだ。しかし、楽天モバイルは他キャリアよりも(端末を含む)シェアが低く、同じ条件での規制では「新規顧客獲得が難しい」と考える。
楽天モバイルが新規参入を本格的に果たし、商用サービスを開始したのは2020年4月8日。大手キャリア3社の寡占状態にあった携帯電話市場に風穴を開けるべく新規参入した楽天モバイルだが、シェアは他キャリアよりも小さい
さらに、楽天モバイルが2020年4月の本格参入以来、「シンプルなワンプラン」を貫いているが、既存ユーザーにとっては「プラン変更が必要な理由」を生まない結果となってしまい、これも新規顧客獲得が難しい要因になっているという。
仮にこのような状況で楽天モバイルが通信料の割引を行えば、「法令に抵触する可能性がある」との懸念がある。こうした背景から、楽天モバイルは「新規獲得に向けた施策(お試し割に基づく割引)が現状では実施できない」と提言していたのだ。
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