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「iPhoneのマイナンバーカード機能搭載」で何が変わる? Androidとの違いやメリットを解説(2/3 ページ)

マイナンバーカードは、物理的なカードを使った本人確認書類としての機能と、電子証明書を使ったオンラインの本人確認機能を備えている。さらに、マイナンバーカードの機能をスマホに搭載する動きも進んでいる。まずはiPhoneが対応する予定だ。

マイナ保険証もiPhone対応へ スマホ1台で病院にも行ける?

 さらに、iPhone対応に合わせて、マイナ保険証のiPhone対応も進められる予定だ。マイナ保険証は、マイナンバーカードを使って本人確認した上で、電子証明書によってオンライン資格確認などのシステムにアクセスして、利用者の保険情報を取得するという仕組みを用いている。

 この本人確認では、マイナンバーカードを専用リーダーに置くと、その券面にある複数の数字を組み合わせた照合番号BがリーダーのOCR機能で読み取られる。照合番号Bを使ってリーダーがカードのICチップにアクセスし、保管された顔写真を取得する。その顔写真と本人の顔を照合する顔認証を行って本人確認をして、それによってICチップ内から電子証明書を読み出せるので、安全にオンライン資格確認が行える。


マイナ保険証を読み取るためのリーダー。基本的には物理カードの読み取りが想定されている

 スマホ用電子証明書の場合、この照合番号Bと顔認証の部分が省略される。その代わり、本人確認はスマートフォンの機能を使う。Androidの場合はあらかじめスマホ用電子証明書に設定した4桁の暗証番号、iPhoneの場合は端末に設定された生体認証(Face IDなど)を使うことで本人確認とする。後はスマホ用電子証明書を使ってオンライン資格確認にアクセスする。

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マイナンバーカードのICチップの情報は、複数のアクセス方法がある。「券面を見れば分かる情報をデータで取得する」ために照合番号Bがある。マイナ保険証の場合、ICチップ内の偽造ができない顔画像を取得するために使用する

 現在、病院などの受付に設置されているマイナ保険証リーダーは、スマートフォンを想定した設計にはなっていないため、当面は別途市販のカードリーダーを増設することで対応する。6月頃から、10程度の医療機関で実証を行い、9月頃から全国の医療機関での対応を開始する予定となっている。


マイナンバーカード機能のスマートフォン搭載は、まずは汎用(はんよう)のカードリーダーを増設することで対応する

マイナ保険証のスマホ対応のスケジュール。9月頃には全国で利用可能になる見込み

 これによって、「保険証(資格確認書)もマイナンバーカード(マイナ保険証)も持たずに、スマートフォン1つで病院に行くことができる」という状況が実現できる(ただし診察券は必要だろう)。


既に次期顔認証付きカードリーダーの仕様も公開されている。マイナンバーカード機能のスマートフォン搭載に対応することが必須で、物理カードとスマートフォンを同一の読み取り口で読み取れることが「望ましい」とされている

 ちなみに、コンビニエンスストアのキオスク端末(マルチコピー機)で住民票の写しや印鑑証明書などの証明書を取得できるコンビニ交付サービスにおいて、Android向けのスマホ用電子証明書が使えるが、iPhoneのマイナンバーカード機能搭載でも同じことができるようになるはずだ。これもマイナ保険証と同じで、Androidは現時点で4桁の暗証番号を入力するが、iPhoneでは生体認証で取得できるようになる見込み。


コンビニの証明書交付サービスでは、マイナンバーカードだけでなくスマホ用電子証明書を使うこともできる。マイナ保険証の使い方は同一になる見込みだ

スマホから「必要な情報だけ」を選んで安全に送信できる

 今回のiPhone対応の話は、スマホ用電子証明書だけでなく、「マイナンバーカード機能」をスマートフォンに搭載するというものだ。つまり、電子証明書以外の機能も搭載されることになる。

 マイナンバーカードが備えているのは、氏名/住所/生年月日/性別という基本4情報と顔写真、電子証明書だ。つまり、iPhoneでは基本4情報と顔写真も搭載しており、対面の本人確認として使える、ということが特徴となる。

 iPhoneの場合、クレジットカードなどを登録するAppleウォレットにマイナンバーカードを保管する。米国では一部州の運転免許証が保管できるようになっているが、これと同じ仕組みを使っており、mdocと呼ばれる国際標準の形式でデータが保管される。


スマートフォンにmdoc形式でマイナンバーカードのデータが保管される。今後は、運転免許証(mDL)や他の資格証なども発行して保管されるようになる見込みだ

 Appleウォレット上でどのような表示になるかは現時点で明らかになっていないが、いずれにしても基本的には「カード券面の画像を表示して目視で確認する」という使い方にはならないだろう。画面を見せるだけだと偽造が容易なためで、通常はデータを送信する形で処理することになるはずだ。


本人確認の場合、求められた個人のデータのみを送信し、それを店員などが受信して確認する形になるとみられる

 例えばデジタル庁は、コンビニエンスストアにおいてスマートフォンに搭載したマイナンバーカードを使って年齢確認をするというデモを行っている。このデモでは、スマートフォンのマイナンバーカードの生年月日のデータから「20歳以上」「20歳未満」の情報を取得して、たばこ購入時などの年齢確認をデジタルで行うというものだった。


デジタル庁のデモでは、「20歳以上」「20歳未満」の情報だけを送信して年齢確認を行っていた。同様に、氏名だけ、住所の市区町村だけ、といった具合に、必要なデータだけを送信できる。券面を見せないため、他の情報が知られることがない

 これはiPhoneを使ったものではないが、技術的にはmdocやBluetoothを使っており、iPhoneでも同じことができる見込み。このように、スマートフォンに搭載したマイナンバーカードから必要な情報だけを選んで安全に送信するというのがこの機能の特徴になる。

 他にも、住民向けにサービスを提供する場合、住所のデータから「その市区町村の住民かどうか」の情報だけを送信することもできるだろうし、顔データの送信で顔認証を行って本人確認をしてゲートを入場するといった使い方もできるだろう。こうした活用は民間事業者も導入でき、さまざまなシーンでの活用が期待できる。

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