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JAL最高峰クレカ“違和感画像”、なぜ生成AIを活用した? Adobe Stockの利用も明らかに

JAL最高峰のクレジットカード「JAL Luxury Card」「JAL Luxury Card Limited」の公式サイトに不自然な画像が掲載されていた。日本航空(JAL)の広報部は8月7日10時30分頃、ITmedia Mobile(以下、本誌)のさらなる取材に応じた。公式サイト内画像の一部に生成AIを活用した意図と、Adobe Stockの画像を利用したことを明らかにした。

 日本航空(JAL)の広報部は8月7日10時30分頃、最高峰のクレジットカード「JAL Luxury Card」「JAL Luxury Card Limited」の公式サイトに不自然な画像が掲載されていた件について、ITmedia Mobile(以下、本誌)のさらなる取材に応じ、公式サイト内画像の一部に生成AIを活用した意図と、Adobe Stockの画像を利用したことを明らかにした。

 2種類のクレジットカードは、JALがBlack Card I(ラグジュアリーカード)および信販会社のアプラスと連携し、8月1日から申し込みを受け付けている。年会費はJAL Luxury Cardが24万2000円、JAL Luxury Card Limitedが59万9500円。カード本体にはメタル素材を採用しており、富裕層に向けて売り込む。


JAL最高峰のクレジットカード「JAL Luxury Card」「JAL Luxury Card Limited」

どちらも富裕層向けのクレジットカードだ。年会費はJAL Luxury Cardが24万2000円で、JAL Luxury Card Limitedが59万9500円となっている

 X(旧Twitter)上では、「ポップコーンカップにストローがささっている」「フォークの形状が実物と異なる」など、公式サイト上の画像に対して違和感を覚えたという指摘が相次いだ。中には、「手の指の本数や位置が不自然」「足が一本多く見える」といった“AI画像でよく見られる誤り”を指摘する声も散見された。

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 JAL広報は、公式サイト内画像の一部に生成AIを使用したことを認めている。本誌が、具体的にどの画像に生成AIが用いられていたかを尋ねたところ、「ポップコーンカップにストローがささっている画像、キャリーケースの車輪が宙に浮いている画像など、複数の画像です」と回答した。一方で、「メイン画像やカード券面、JALのラウンジの写真など、AI生成ではないものもあります」と述べている。

JAL最高峰カード公式サイト内画像に「生成AI」が活用された理由は?

 そもそもなぜ生成AIが活用されたのか――。JAL広報は、「当社は、新たなテクノロジーである生成AIを当社のコンセプトやブランドイメージを表現する手段の1つとして捉えております。今回は、JAL Luxury Cardの世界観をより正確かつ効果的にお客さまへお伝えするために、生成AI技術を活用いたしました」と回答している。

 さらに、こう続ける。「ただし、まだ当社としては生成AIの活用経験が十分ではなく、今回の制作において確認や調整が不十分であり、不適切な画像を公開することにいたった点について深くお詫び申し上げます。今後はより慎重に、かつ品質を重視しながら生成AIを活用してまいります」

 X上で指摘のあった画像については、指摘されていた部分が見えないようにトリミングされ、8月4日19時過ぎには既に差し替えが行われていた。この対応についても、JAL広報は「指摘を受けた」ことを理由に、「不自然に思われる画像は全て取り下げ、新しい画像と差し替えられるものは変更いたしました」と認めている。

差し替えられた画像は「Adobe Stock内の画像」

 ただ、JAL広報によると、差し替えられた後の画像はAdobe Stock内の画像で、「今回は契約済であるAdobeの画像を選択いたしました」という。


Adobe Stockの概要の文言。画像は「よくある質問 | Adobe Stock の基本」より引用。なお、ページの最終更新日は6月2日となっている

 Adobe Stockとは、「あらゆるクリエイティブプロジェクトに利用できる高品質なロイヤリティフリーの写真、ビデオ、イラスト、ベクター、3D、テンプレート数千万点を厳選して、デザイナーや企業、教育機関、官公庁向けに提供するストックフォトサービス」と公式サイトに記載されている。

 ちなみに、画像がAdobeの提出基準を満たしている場合、Adobe Stockでは、生成AIを使用して作成された画像なども受け付けている。ただし、生成AIを使用して作成された画像には、人為的に撮影され加工された画像とは異なり、「AIによる生成である」ことが明示される。

 実際に、JAL最高峰カード公式サイト内とAdobe Stockの画像を照らし合わせたところ、構図や色味がほぼ一致しているように見受けられる。


「ポップコーンカップにストローがささっている」と指摘されていた映画鑑賞シーンをイメージする画像は指摘後に切り取られた

差し替え後の画像は映画鑑賞シーンであることが分かるが、元の画像の構図とは異なる他、座席に座っていた人物やポップコーンカップなどは写っていない。この画像は、Adobe Stock内の画像を加工して掲載したものと思われる。Adobe Stockに掲載されている画像では、椅子にローマ数字の番号が振られているが、JALの最高峰カード公式サイトに掲載された画像では、その部分が消されている

「違和感のある画像」と指摘された原因

 なお、X上で指摘された差し替え前の画像は、「Black Card Iとその業務委託先にて作成・提供されたものです」とJALは説明している。「審査プロセスの必要性が社内に十分浸透していなかったこと」などが理由で、公式サイト内での掲載に至ったとしている。結果として、「違和感のある画像」との指摘につながったワケだ。


日本航空(JAL)のイメージ。JALは、人やモノの移動を支える航空事業を中心に、クレジットカードなどのライフスタイル事業、空港サービス、次世代エアモビリティ事業など、多岐にわたる事業を展開している

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