【決算総括】上位プランシフトのドコモとKDDI、値上げをしない楽天モバイル 板挟みのソフトバンクはどう出る?:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
NTT、KDDI、ソフトバンク、楽天グループの決算が出そろった。ドコモ、KDDIは6月に新料金プランを導入するとともに、低価格の小容量プランを廃止しており、事実上の値上げになっている。ソフトバンクは現時点で静観の構えを見せており、今後の動向に注目が集まる。
マーケティングコストがかさむドコモ、KDDIは低容量の競争力が課題か
一方で、ドコモはコンシューマーの通信に絞ると、前年同期比で減収減益になった。特に、営業利益は1046億円となり、398億円の大幅減益に見舞われている。島田氏によると、要因の「メインの1つは、顧客基盤強化のためのマーケティングコスト」だという。また、「サービス品質の強化もあり、そこに対しては新しい基地局を20%ぐらい増やしており、そのコストもかかっている」。
実際、ドコモは第1四半期に設備投資を1849億円投下しており、前年同期比で649億円の増加になっている。通信品質強化に本腰を入れたことでコストがかさんで減収になった格好だ。非通信領域のスマートライフや法人事業ではプラスになっている部分もあるが、「それだけではカバーできなかった」(同)。
KDDIは、「スマホトクするプログラム」の影響などで一過性の減益になったというが、モバイル収入は4882億円から4905億円に、モバイルARPUは4280円から4340円へと上昇しており、業績自体は好調。既存の料金プランを値上げすることもあり、来期以降では通信料収入の伸びが加速するとしている。
ただし、UQ mobileはミニミニプランを廃止したことで、「今まで取れていた小容量プランのところが、少し弱くなっている」(松田氏)という。上位プランである「コミコミプランバリュー」の選択率が4割になり、解約率も低下しているUQ mobileだが、低価格の料金プランがない中、新規のユーザーをどう獲得していくかは今後の課題になりそうだ。
また、KDDIはauと同様、UQ mobileの既存プランを値上げすることを表明しているが、その具体的な金額などは明かされていない。値上げはミニミニプランも対象になると見られており、この影響がどのように出るかが未知数だ。価格に対してセンシティブなユーザーが多いだけに、一時的に解約率が上昇したり、ユーザー数が減少してしまったりする恐れもある。
決算説明会の段階では、「公表できる段階になっていない」といい、「この部分にどのような価値をつけていくべきなのか、社内でもシミュレーションをしている」(同)という。料金という観点では、オンライン専用でトッピングを自由につけられるpovo2.0もあり、UQ mobileの旧料金プランと比べても“ギガ単価”はリーズナブルになっている。値上げによる解約の影響を抑えるには、こうしたブランドを今まで以上にうまく活用していく必要性がありそうだ。
関連記事
au新料金プランが好発進、UQ mobileは「ミニミニ」新規終了で解約率改善へ KDDI決算で見えた"上位シフト"戦略
KDDI決算会見で松田社長が明かした戦略転換の成果が鮮明に。auユーザーの8割が使い放題プランを選択し、小容量プラン「ミニミニプラン」は50歳未満の約半数が1年以内に解約していたという衝撃的な実態も判明した。ドコモ新料金は「想定通りの立ち上がり」でアップセルに貢献 一方で気になる“販促費”への影響
NTTが2025年度第1四半期の連結決算を発表した。ドコモのモバイル通信サービス収入の減少、販促費の強化やネットワークの品質向上の費用増が響き、増収減益となった。ドコモが6月5日から提供している新料金プラン「ドコモ MAX」はアップセルに貢献している。ソフトバンク業績は好調も、宮川社長を悩ます「値上げ問題」 背景に楽天モバイルの存在
ソフトバンクは5日、2026年3月期第1四半期の決算を発表した。今回の決算会見では、宮川社長が「(決算の)数字に対する質問がない」と嘆くほど、報道陣やアナリストからは戦略に関する質問が集中した。携帯料金の値上げについては「慎重に検討している」と宮川氏は話す。楽天モバイルを値上げしない背景に「経済圏」あり 2025年内に1000万回線目指す
楽天モバイルの契約数が、2025年7月末時点で908万回線に達したことが明かされた。大手キャリアが値上げに踏み切る中、楽天モバイルは値上げをしてない。三木谷氏は「年末までの目標に掲げている1000万回線に何とか到達したい」と語る。ソフトバンクと楽天モバイルが“値上げ”に踏み切らない理由 チャンス到来のMVNOはどう仕掛ける?
NTTドコモやKDDIが相次いで新料金プランを発表し、6月から値上げが実施される。一方で、ライバルのソフトバンクと楽天モバイルは、値上げはしないという。MVNOにとっては大きなチャンスになり、移行を促す施策にも期待したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.