インタビュー

「CMF Phone 2 Pro」「Phone (3)」から見える“本気”のNothing 黒住氏に聞くミッドレンジ/フラグシップの攻め方(2/3 ページ)

Nothingのスマートフォン戦略について、日本事業を率いる黒住吉郎氏にインタビュー。ミッドレンジの「CMF Phone 2 Pro」は販売好調で、楽天モバイルの展開もプラスに働いている。フラグシップの「Nothing Phone (3)」はFeliCaを搭載しながら海外と同水準の価格を実現した。

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フラグシップのNothing Phone (3)も遊び心は忘れず

―― 次に、Nothing Phone (3)について伺っていきますが、改めて、フラグシップモデルを導入する意義を語っていただけないでしょうか。

黒住氏 英語でフラグシップは「旗艦」を意味しますが、語源は戦いの中で先頭にいたり、中央にいたりする船のことですよね。やりたいことや、ユーザーの方に使っていただきたいもの、3年後なり5年後なりまで目標にしていくものがフラグシップです。ですから、この後出てくるのものは、Nothing Phone (3)をお手本にすることになっていくと思います。そのぶん機能的にもお値段的にも高くはなりますが、20万円というところまでは行く必要がないという判断です。

―― 今回、特徴だった「Glyph」がGlyphマトリックスという形でディスプレイのようになりました。光で伝えるというコンセプトは変わってしまったのでしょうか。

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黒住氏 最初に求めていた、光と音で情報を伝えるというコンセプトと同じだと思っています。この部分は昔だと「サブ液(晶)」と呼ばれていたと思いますが、通常だとカラーにするところを、逆にめんどくさいことをしています。1つ1つがLEDで、それが489個も入っている。このサイズの液晶を持ってくるより、手間がかかることをしているんです。何かを表示するだけで処理が入りますし、階調も1つ1つ調整しなければいけない。この部分、実は写真撮影にも使えて構図の確認もできます。


Nothing Phone (3)は、背面にドット絵が表示されるサブディスプレイを搭載している

―― その意味だと、LEDを集約したことで機能性が上がったということになりますね。

黒住氏 はい。上がっています。アイコンなどを形で示せるようになりました。もう1つ、LEDのストライプだとできなかったのが、遊び的な要素です。これはゲームと言っていいのか、賛否両論あると思いますが、電卓やデジタルウォッチに入っていたような小さいゲームが入っている。「スピン・ザ・ボトル」は本当にボトルが回るだけで、AIが認識して「勝った」「負けた」と言ってくれるような機能も入っていません(笑)。


ランダムで方向を決められる「スピン・ザ・ボトル」

―― 当初のGlyphにあった遊び心は忘れていないということですね。

黒住氏 当初やっていたことは満たせますし、それ以上に情報ツールとしてや情報を伝えるだけではないことにも使っています。

―― この部分に表示するアプリは開発できるのでしょうか。

黒住氏 SDKをコミュニティーに開放しています。ハードウェアだけでなく、ソフトウェアも皆さんにやっていただければと考えています。その1つが遊びのところですが、別にトイだけに限る必要はありません。

カメラは4つが5000万画素に SnapdragonのISPやAIも活用して画質向上

―― フラグシップならではの機能性に引かれる人も多いと思います。

黒住氏 カメラがすごく分かりやすいですが、今回は背面に3つ、前面に1つで計4つのカメラが搭載されていて、その全てが5000万画素になっています。ここまで引き上げたことで、全てのカメラのクオリティーが高くなりました。また、最近だと静止画だけでなく、動画の世界にもなっていますが、5000万画素あれば大き目の4Kで撮っておいて、後で編集して切り出すこともできます。ですから、全て5000万画素というのは今の時代に合った設定だと思っています。

 もちろん、静止画もコンピュテーショナルフォトグラフィーで画質を引き上げることはやっています。「True Lens Engine」は4.0になり、動いている人や動きの速い車などを撮るときのアクションモードにも対応しました。

 Qualcommの持つISPとAIをうまく使うことで、全体の画質を引き上げるということもやっています。結果として、機械的な映像としてよくなっただけでなく、味のある写真が撮れ始めるようになりました。

―― “味出し”のために何かやったことはあるのでしょうか。

黒住氏 プロのフォトグラファーと会話をしたりしながら調整し、味付けのところはかなりよくなってきました。自分で触っていても、それはよく分かります。

―― 確かに、XiaomiやシャープのやっているLeicaとは方向性が違いますが、よりスッキリした味が出ていますね。

黒住氏 よりデジタルでクリーンな方向ですが、そこに奥行き感も加わっていると思います。アナログカメラのような感じを混ぜつつも、モダンな色合いになっています。

 また、ズームに関しても、日本ではNothing Phone (3)からペリスコープ型の望遠カメラを搭載しました。やはり、望遠が自然できれいに撮れます。画素数に制限はつきますがロスレスで6倍まで、超解像度で60倍までズームできて使い勝手もいい。マクロも10センチまで寄れるようになりました。

バッテリー消費やAIの処理を考えてSnapdragon 8s Gen 4を採用

―― チップセットが「Snapdragon 8s Gen 4」なのは珍しいですよね。処理能力的には「Snapdragon 8 Elite」の方が高いと思いますが。

黒住氏 「スペック的には申し分ないが、チップはもう1つ上じゃないのか」という声はよくお聞きします。一方で、われわれの思っているフラグシップは、やりたいことを一番いい形で見せることにあります。写真はこういう処理でということだったり、サクサク動いたり、必要以上にバッテリーを消費しなかったり、ネットワークのケイパビリティがあったりです。AIの処理まで考えると、Snapdragon 8s Gen 4はベストチョイスだと思っています。1つ上だと、発熱やバッテリーの問題も出てくるので、あえてここを選んでいます。

―― どこを普通と見るかにもよりますが、実際、最上位のチップを積まないメーカーも徐々に増えています。

黒住氏 正しいと思うんですよね。むしろ、そこを気にしているのは僕ら業界側の人間だけかもしれません。使っていても分かりますが、Nothing Phone (3a)と比べても機敏さは上がっています。

―― とはいえ、Nothing Phone (3a)もサクサク感は十分ありました。

黒住氏 ほんのわずかな数値には表しづらいところですが、ユーザーインタフェースの世界ではそれ(チップの差)が効いてきます。

―― AIに関しては、Nothing Phone (3a)と何か違いがあるのでしょうか。

黒住氏 Essential Spaceに関しての処理は(クラウドを使っているので)あまり変わりません。ただし、イメージングの領域などにはいろいろなところで効いてきます。イメージングやディスプレイのところは大きいですね。

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