ドコモ、他者と“痛み”を共有できる「FEEL TECH」披露、脳波データを解析 どんな利用シーンがある?(1/2 ページ)
NTTドコモが脳波から痛みを数値化し他者と共有する世界初の技術を発表、CEATEC 2025で経済産業大臣賞を受賞した。これまで言語化が困難だった身体的・心理的痛みを相手の感度に合わせて疑似体験させることが可能で、2028年頃の商用化を目指す。
NTTドコモは10月14日から17日まで幕張メッセで開催されているCEATEC 2025において、新しいコミュニケーション技術「人間拡張基盤 FEEL TECH(フィールテック)」による痛み共有システムを展示した。同技術はCEATEC AWARD 2025で経済産業大臣賞を受賞している。
脳波から痛みを数値化、相手の感度に合わせて共有
FEEL TECHは、これまで伝えることが困難だった感覚や感情を相手に合わせて伝える技術。これまで触覚や味覚などの遠隔伝送システムを発表してきた。
今回ドコモが展示したのは、痛みを伝送して共有するシステムだ。痛覚刺激を受けた際の脳波データから痛みの程度を解析し、共有相手の感度特性に合わせて温度刺激として変換して伝える仕組みで、世界初の技術としている。
腹痛やスポーツでの衝突による痛みから、辛い・冷たいといった刺激、さらには心理的な痛みまで、言語化が困難な感覚を他者と共有できる。
デモンストレーションでは、痛みを感じている人の脳波から読み取った痛みの程度を「13」や「56」といった数値とグラフで表示した。同じ痛みでも、痛みを感じやすい人と感じにくい人では感度が異なるため、共有時には相手の感度特性に合わせて刺激の強さを調整する仕組みだ。
技術開発を指揮するドコモの石川博規氏(モバイルイノベーションテック部 ユースケース協創担当 担当課長)によれば、事前に健常時の温度刺激に対する個人の痛み感度を測定しておき、新たな痛みを感じた際の脳波データと照合することで、相手に同じ痛みを疑似体験させることが可能になるという。
痛みの測定に脳波を用いる理由について「主観を抜きやすく、正解データが取りやすい」と説明。従来は10センチほどの線を引いて「今の痛みはこの辺」と示すVAS法(Visual Analogue Scale)が使われていたが、日によって評価が変わるなど客観性に課題があったという。
医療からエンタメまで幅広い応用を視野
ドコモはFEEL TECHの活用分野として、医療・介護現場での診断支援やリハビリ設計、XRゲームでの没入型体験、スポーツ選手の耐性把握とケガ予防、食品の辛みや冷たさの共有など幅広い用途を想定している。将来的にはカスタマーハラスメントやSNS上の誹謗(ひぼう)中傷といった心理的ダメージの可視化による抑止効果も期待できるという。
ただし医療分野への展開については「医療機器になってしまうためハードルが高い」とし、まずはエンターテインメント分野での活用を検討。心理的な痛みへの応用については「外的刺激と内的刺激の相関関係があれば可能性はある」としながらも、今後の研究課題だと位置付けた。
商用化時期について同社は、当初6Gのユースケースとして検討していたが「リアルタイム性がどこまで必要か検討した結果、もっと早く実現できる」と判断。2028年頃の先行商用化を目指すという。FEEL TECHでは痛み共有に先行して、触覚共有から事業化を進める計画だ。
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