非通信事業者の「○○モバイル」が増えているワケ　ミークが手掛ける「MVNO as a Service」の勝算：石野純也のMobile Eye（1/3 ページ）

　通信事業のノウハウを持たない企業や個人とタッグを組み、ホワイトレーベル的にサービスを提供するMVNOが徐々に増えている。大手キャリアであるMNOから回線を借り、それを支援する会社に提供するという点では以前から存在するMVNEに近いが、MVNOとしてサービスの主体になるのはホワイトレーベル側。実態としては、ブランドを貸しているのに近い。

　こうした事業は、エックスモバイルやpovo2.0を手掛けるKDDI Digital Lifeが展開しているが、最近ではIIJも「JALモバイル」などで成果を上げている。そして今、このホワイトレーベル型MVNOのサービスを新たに手掛けるのが、ミークが設立したミークモバイルだ。自社ではユーザー獲得などはせず、ホワイトレーベルに徹する。ここでは同社の狙いや、非通信事業者に広がり始めているMVNOの実態を解説していく。

よりライトにMVNOを始められるミークモバイル、手数料で経済圏の原資を提供

　ミークは、NUROモバイルやNURO光などを手掛けるソニーネットワークコミュニケーションズからカーブアウトした企業。IoT／DXプラットフォーム事業やMVNEを手掛けており、NUROモバイルも同社の支援先の1社に位置付けられている。その回線数はトータルで80万以上に上る。MVNEとしては、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3キャリアに対応しており、現在は4社目の「楽天モバイルとの接続の準備も進めている」（代表取締役 執行役員社長 峯村竜太氏）という。

　そんなミークが新たに設立したのが、ミークモバイルという子会社だ。位置付け的にはミークモバイルもMVNOの1社だが、一般的なそれとは性格が大きく異なる。ユーザーが契約することになるのは同社だが、その窓口になるのは提携先の企業。通信サービス自体はミークモバイルが提供するが、同社自身では直接回線を販売せず、あくまで黒子に徹しているのが特徴といえる。

　同社が目指しているのが、「MVNO as a Service」という事業形態だ。主な提携先として想定しているのが、通信事業者をなりわいにしていない企業。会員基盤を持つ企業が、「○○モバイル」のようなサービスを立ち上げる際に、ミークモバイルを活用する形になる。ミークモバイルの代表取締役社長 小林敏範氏は、「モバイルサービスを活用して、自社のブランドをより高めたり、ロイヤリティーを高めたりしていくことに基盤に置いたお客さまが多い」と語る。

　料金プランもあらかじめパッケージ化されており、小容量プランとして4GBプラン、中容量プランとして12GB、22GBプラン、大容量プランには37GBプラン、57GBプランが用意される。4GBプランの料金は980円。ユーザーが料金を支払うのもミークモバイルになり、その一部を手数料として提携先の企業に支払う形だ。

　提携先の企業が受け取れるのはあくまで手数料のみとなるため、通信サービスで得られる利益は少ないが、主目的になるのが経済圏への囲い込みだ。小林氏は、「弊社でお客さまからいただいた売り上げの一部を手数料として、非通信事業者（の提携先）にお支払いする。これを使って、ポイント還元やクーポンにしていただくことができる」と話す。MVNOの通信サービスを経済圏の中のいち商材として活用しやすくなる仕組みというわけだ。

　また、提携先の企業とはシステム連携しており、「使わなかったギガ数（データ残量）を送ることができ、それを特典に変えていただくことも実現できる」（同）という。加入者管理機能を持たない日本で一般的なMVNOのことを「ライトMVNO」と呼ぶことがあるが、この座組で提供する通信側のサービスは、ほとんどがライトMVNOであるミークモバイルのもの。定期先の企業にとっては、より“ライト”な「スパーライトMVNO」といえる。