コラム

サイゼリヤの“注文アプリ”が賛否を呼ぶ理由──「使いやすい」「紙メニュー前提」など多様な意見

サイゼリヤが一部店舗で導入した注文アプリに対しネット上で賛否が入り交じった議論が度々話題に。低価格で多彩なメニューを展開して店舗を運営する。タブレット端末を備える他チェーンとは異なる方向性のスマホ注文方式が利用者から注目を集めているようだ。

 サイゼリヤが一部店舗で導入している注文アプリに対し、ネット上で賛否が入り交じった議論を度々目にする。低価格で多彩なメニューを展開する同社が、新たに投入したスマートフォンを利用した注文方式は、タブレット端末を備える他チェーンとは異なる方向性を示しており、利用者から注目を集めているようだ。


サイゼリヤが一部店舗で導入した注文アプリに対し、ネット上では賛否が交錯している。サイゼリヤは、タブレット方式とは異なるスマホ注文を導入し、利用者の関心を集めている

サイゼリヤが選んだ「番号入力型」の注文方式

 一般的なスマホ注文や据え置きタブレット端末では、カテゴリーをたどって商品を選ぶUIが主流だ。しかしサイゼリヤが採用した方式は、印刷されたメニューに記載された商品番号をユーザーが直接入力するという、意外な設計になっている。利用者は席に置かれた札のQRコードを読み取ってページを開き、人数を選んだ後、メニューを見ながら番号を打ち込み、数量を入力して注文かごに追加するという流れだ。操作が直感的で、紙のメニュー表を前提にしているため、複数人で同時にメニューを確認できる点も利点になっている。

導入理由は? なぜタブレット注文ではないのか?

 サイゼリヤはこの方式について、広報が「DX化により、お客さまにはより便利にご利用いただき、従業員はより働きやすくするために導入を進めております。また、タブレットを用いたセルフオーダーより投資対効果が高いと考えたためです」と説明している。高価なタブレットを店内に大量に設置するのではなく、利用者自身のスマートフォンを活用することで、設備投資を最小限に抑えつつオペレーション効率を上げる狙いがあるようだ。

advertisement

画像は、客席に貼られたQRコードをスマホで読み取り、注文ページへ進む方式を示している。サイゼリヤは、この方法を採用した理由を「DX化で客の利便性と従業員の働きやすさを高めるためであり、タブレット方式より投資対効果が高いと判断した」と説明している

ネット上で飛び交っているさまざまな意見

 この注文アプリについては、ネット上にさまざまな意見が飛び交っている。

 否定的な意見としては「プログラミング初心者が作ったような品質に見える」「番号入力後の処理が重い」「タイムアウト時のエラー処理がなく不安になる」「追加注文時にレイアウトが崩れる」など、デザイン面や動作面の不具合を指摘する声がある。

 一方で、肯定的な意見として、「デザインは古風だが要件定義の精度が高い」「紙メニューを残しつつ番号入力に特化した設計が合理的」「通信速度に依存せず軽快に動き、高齢者にも使いやすい」「見た目は電卓のようでも使うほど利便性が理解できる」「UXが最適化されており技術的に高度」「デザート提供のタイミングを別番号で管理し操作を減らす工夫がある」などという評価がある。

 さらに、「紙の注文番号方式から自然に移行しており受け入れやすい」「複数人利用時に短時間で注文が完了する」「専用アプリやLINE登録を強要しない仕様が好ましい」「店舗オペレーションと回転率を重視した企業姿勢が感じられる」「批判されつつも使いやすさが評価されブランド価値にもつながっている」という評価も見られる。

 こうした多くの意見を総合すると、UIの見た目の素朴さに対して不満が生まれやすい一方、実際の使い勝手やUXの緻密さが評価を押し上げていることがうかがえる。


注文アプリを導入したサイゼリヤ店舗内には、注文アプリの使い方について解説した冊子が配置されている。初めてで分からない場合はこちらを参考に注文すればよい

サイゼリヤの注文アプリについては、ネット上で賛否が入り交じっている。否定的な意見では「初心者が作ったように見える」「番号入力後の動作が重い」「タイムアウト時の処理がなく不安」「追加注文でレイアウトが崩れる」など、デザインや動作の不具合を指摘する声がある。一方で肯定的な意見もあり、「古風だが要件定義が的確」「紙メニュー併用の番号入力は合理的」「通信に依存せず軽快で高齢者にも使いやすい」「見た目以上に利便性が高い」「UXが最適化され技術的に優れる」「デザートを別番号で管理する工夫がある」と評価する声もある

「シンプルさ」の裏に「哲学」があるサイゼリヤの注文アプリ

 サイゼリヤの注文アプリは、華美なデザインを追求するのではなく、操作手順を最小化し、誰でも迷わず使える点に価値を置いているのだろう。同社はもともと「紙のメニュー表と番号で注文する」文化を維持しており、今回のアプリはその延長線上にある。「タブレット」「LINE」などを頼る急激なデジタル転換を避け、既存客が違和感なく移行できる形にしたことが、結果として賛同を集める要因にもなっているようだ。

 外食産業では、タブレット化やアプリ化が進む中で、一覧性の低下や操作の複雑化が課題として語られる場面が増えている。こうした中、サイゼリヤの方式は紙メニューとデジタル入力という役割分担を明確にすることで、シンプルさと効率性を両立させている。デジタル化の潮流の中で、何を変え、何を残すべきかという判断が店舗体験を左右することを示す事例といえそうだ。

 注文アプリの議論は今後もSNSを筆頭に見られそうだが、賛否の多さ自体が注目度の高さを表しているようだ。今後の改善によって、さらに使いやすい仕組みへと進化していくのか、その動向が注視される。

おことわり

記事内の画像は、2024年6月9日に公開した「スマートフォンを使ったオーダーシステムのレビュー」記事より引用しています。画像内の情報はレビュー時点のものであり、最新の内容であることを保証するものではありません。また、全ての店舗で利用できるとは限りません。詳細はサイゼリヤ公式サイト「Saizeriya DX」などでご確認ください。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.