コラム

病院側から見た「マイナ保険証」のメリットとは? 「1日1~2件」でもスマホ利用に期待する理由(3/4 ページ)

12月2日から、健康保険証における「マイナ保険証」利用が本格的に“本則”となった。病院での利用状況はどうなのか、国立病院機構東京医療センターの事務担当者に話を聞いた。【追記】

大規模病院における「マイナ保険証のメリット」とは?

―― 今までの紙の保険証と比べて(マイナ保険証で)困ったこと、あるいは逆に改善したことは何かありますか。

担当者 紙の保険証では保険情報を手入力しなければいけなかったのですが、(マイナ保険証を使う場合は)保険情報を医事会計システムに自動反映できるので、入力の間違いと手間が大幅に減らせます。業務負担という意味では軽減されています

―― 診療報酬明細書(レセプト)の「返戻」(※1)の減少にはつながっているのでしょうか。

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担当者 例えば「(患者が)転職して保険者がなかなか切り替わらない」という事例があったとして、マイナ保険証だと「マイナンバーカードをタッチした」という証跡が残せます。万が一保険者が切り替わっていなかった場合に、「この日にタッチしている(証跡がある)ので返戻しないでください」「そちら(支払審査機関や保険者)で処理してください」といった対応も取れるようになりました。

(※1)へんれい:レセプトに不備や誤りがあった場合の“差し戻し”

―― マイナ保険証、あるいはスマホでのマイナ保険証利用が始まって、人員配置などDX(デジタルトランスフォーメーション)的観点から変わった点はありますか。

担当者 人員配置は変わっていません。DXが進んだからといって人員を減らせるかというと、そこは難しい面もあります。逆に(人員が)増えたということもありません。マイナ保険証の導入開始当初は案内人員を増やしましたが、保険証窓口以外の部署からの応援で賄いました。

―― マイナ保険証の利用に関して、患者さんに声がけはしてますか。

担当者 「マイナンバーカードを持ってきてくださいね」という声がけや、入院のしおりやホームページでの案内もしています。

―― 「高額医療費制度」の手続きの面ではどうですか。

担当者 これは患者さんの負担も軽減できていると思います。(マイナ保険証を利用すると)申請しなくても使えて、こちらでも(上限額の)確認もすぐできますし。

―― 先ほどの質問と少し重複しますが、マイナ保険証を使ってもらうことで何か変わったことはありますか。

担当者 やはり(被保険者情報の)入力業務がすごく減っています。9月末実績で46%の患者さんが(マイナ保険証を)使っていますから、利用率がゼロとかに戻ってしまうとどうなってしまうんだろうかと……。間違いは増えるでしょうし。(事務員からは)保険証番号の入力誤りによるレセプトの返戻がだいぶ減ったという話もあります。

―― ミスによる返戻って、そこそこあるのですか。

担当者 そうですね。紙の保険証だと事務員が目視して手で入力するのですが、ダブルチェックをしているとはいえ、抜け漏れはどうしても出てしまいます。

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