ドコモ、MNPが転入超過も25年度は減益 山手線の速度77%改善などネットワーク強化もアピール
ドコモの2025年度決算は、スマートライフや法人の成長により増収となるも投資がかさみ減益となった。MNPは転入超過に転じ、セットプラン「ドコモMAX」の好調や通信品質の改善により顧客基盤を強化する。今後は金融事業の再編やAIエージェント「SyncMe」の導入により、非通信分野での収益拡大を加速させる。
NTTドコモが5月8日、2025年度通期の決算を発表した。営業収益は6兆4581億円で前年比3.9%増、営業利益は9421億円で前年比7.7%減の増収減益となった。
収益はスマートライフと法人の事業がけん引したが、コンシューマー通信はモバイル通信サービス収入の減少や機器収入などの影響で698億円減と苦戦した。営業利益もコンシューマー通信だけで1665億円減となった。ドコモの前田義晃社長は「販促強化とネットワーク強靱化への投資を継続したことで減益となった」と振り返る。
ドコモMAXが300万契約を突破 ロイヤルユーザー2000万超を目指す
コンシューマー事業では、2025年度下期のMNP転入数が転出数を上回り、プラスに転じた。2026年度以降も顧客基盤強化を継続し、シェアの維持を目指す。その上で、「短期解約を前提とした流入を抑止することで、顧客基盤の維持と獲得効率化の両立を図っていく」(前田氏)とする。
そのカギを握る施策の1つが、スポーツやエンタメなどのサービスをセットにした料金プラン「ドコモMAX」だ。2026年3月時点で315万契約に達し、2025年度の目標に掲げていた300万契約を突破した。2026年度は500万契約以上の獲得を目指す。この他、ドコモ光やでんき、ガスなどのイエナカサービス、d払いやd NEOBANKなどの金融サービスを通じてユーザーのエンゲージメントを強化することで、中期的にロイヤルユーザーを2000万強に拡大することを目指す。
料金値上げは現時点で予定なし 全プラン一律の値上げは難しい?
ARPUは2025年度に対前年+20円の3960円となり、2026年度は+50円の4010円を目標とする。モバイル通信サービスの減収幅は2025年度に大幅縮小し、「反転が目前の所に来ている」と前田氏。2026年度は底打ち間近だとする。2026年度の業績予想は、営業収益は対前年5.6%増の6兆8210億円、営業利益が対前年0.1%増の9430億円を見込む。
一方で料金の値上げについては、検討中ではあるが、現時点では予定していないことを明かす。前田氏は「コストが上がってきているのは事実だが、どう改定していくかは考えていかないといけない。旧料金プランも含めて25プランあるので、運用の負荷も相当高まっている。各プランの料金もさまざまな条件になっている」と話し、一律での値上げが難しいことを明かした。
金融事業の営業収益を2030年まで倍増へ
スマートライフ事業では金融事業の成長を加速させ、営業収益は2025年度の5965億円から2030年度は倍増となる1.2兆円まで伸ばす計画だ。金融事業は決済と銀行を軸として一気通貫で提供する。ドコモの1億強の会員基盤にAIエージェントを掛け合わせ、融資、保険、投資など他の金融サービスについても最適な提案を行い、クロスユースを拡大する。
事業再編も行い、ドコモSMTBネット銀行、ドコモ・インシュアランス、ドコモ・ファイナンス、ドコモマネックスHD、マネックス証券を傘下に収めるNTTドコモ・フィナンシャルグループを設立し、2026年7月に事業を開始する。銀行を中心に金融サービスを連携させ、機動力を高めることが狙いだ。
都市部の通信品質向上をアピール 山手線での下り速度が約77%向上
ネットワークの品質向上については、5Gは人口密集地を中心にSub6で容量を確保し、4G向け周波数の700MHz帯の5G転用を進めることで安定化を図る。また、2026年3月末に終了した3Gサービスの800MHz帯を4Gに活用することで、帯域幅を20MHzから30MHzへと1.5倍に拡大する。
5G基地局は、2025年度に新たに約6800局を開設し、5万2300局に達した。2026年度は開設ペースをさらに上げ、「当社の競争力の源泉となる強固な通信インフラ基盤を構築していく」(前田氏)
ドコモは、主要都市中心部のネットワーク体感品質が向上しているデータを示し、主要都市中心部の96%でスループットが100Mbps以上を記録したという。鉄道路線での通信品質にも言及し、混雑時にHD画質の動画を視聴できる品質(下り3Mbps以上)を実現した路線は、2024年度の23路線から28路線に増加。2026年度は39路線以上を目指す。山手線でのダウンロード速度は2024年度から約77%向上したという。
より低遅延、高速な通信が可能になる5G SAのエリアも拡大していく。ただし具体的なカバー率については公表しておらず、前田氏は「2026年度に他社に追い付きたい。首都圏、大阪府、愛知県などたくさん人が集まるところで対応を急ぐ」とした。
一方、SNSやネットではいまだ「ドコモやahamoの通信が遅い」という声が目立つ。前田氏はネットワークの認知効果に課題があるとし、「もともと遅効性があるので、プロアクティブにコミュニケーションを取っていく必要がある。例えば最近だと、東京メトロの駅はだいぶ5Gの対応が進んでいる。よくなったところに対し、きめ細かなコミュニケーションをしっかり取っていく」
4月27日には、スマートフォンと衛星の直接通信サービス「docomo Starlink Direct」の提供も開始し、全86機種、日本最大をうたう約2300万台の機種で利用できることをアピールする。
「SyncMe」は各ユーザーに最適な体験を先回りで提案する
AI分野では、ドコモが持つ1億超の会員基盤から得られたデータをもとに、マーケティング、金融、パーソナルエージェント、エンタメなどの活用していく。
そんな中でコンシューマー向けに提供するのが、AIエージェントサービスの「SyncMe」だ。2026年春から体験版をモニター向けに提供しており、同年夏に正式サービス開始を予定している。
前田氏はSyncMeについて「ただの便利なAIツールではない。通信、金融、エンターテインメントなど、あらゆる接点から得られるデータを統合して、お客さま一人一人に最適な体験を先回りで提案する」と話す。「これまでドコモが蓄積してきた行動データを活用することで、使い始めた段階からお客さまを理解している。そして使えば使うほど理解が深まり、さらに便利になっていくという好循環を実現していきたい」
SyncMeで構築した基盤は、他のサービスやパートナーにも展開できるようにする見通しだ。
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