海外eSIMのトリファ、日本語でESTAを申請できる「入国手続きサポート」開始 通信から“旅のインフラ”へ(1/2 ページ)
海外eSIMアプリを展開するトリファが、米国のESTA申請を日本語で支援する新サービスを開始した。背景には各国の入国手続きのデジタル化や厳格化があり、同社は旅行の準備段階を新たな障壁と捉えている。今後は対応国を順次拡大し、通信の提供にとどまらない総合的な「トリップインフラ」の構築を目指す。
海外eSIMアプリ「トリファ」を提供するトリファが6月30日、事業戦略発表会を開き、米国の電子渡航認証(ESTA)の申請をサポートする新サービス「入国手続きサポート」を同日提供開始したと発表した。あわせて、7月1日から放映する新テレビCMも公開した。eSIMによる「通信」から、渡航手続きを含む「旅のインフラ」へと事業領域を広げる動きだ。
海外旅行の「旅マエ」に生まれた新たな障壁
発表会ではまず、代表取締役の嘉名雅俊氏が海外旅行市場の現状を説明した。日本政府観光局(JNTO)によると、2025年の日本人出国者数は1473万人で、コロナ前の2019年比で73%まで回復した。ただ、円安が回復の重荷になっており、渡航先の顔ぶれも変わっている。JTB総合研究所の資料では、2025年の渡航先トップは韓国の365.3万人で、米国の196.7万人を抜いた。近距離・コスパ重視のアジア圏が伸びているという。
旅行プランについても、団体ツアー中心から個人手配へと移りつつある。従来のパッケージツアーが減少し、地図アプリや翻訳、SNS、AI検索などを使い、自分で旅行を設計する人が増えているとのことだ。トリファの利用データでも、データ大容量プラン(10GB以上)を選ぶ人の比率が2024年の31%から2025年には60%へと拡大しており、通信量の多い使い方が一般化しつつある。
制度面でも変化がある。7月1日から、パスポートの取得費用が引き下げられる。外務省によると、18歳以上が有効期間10年のパスポートをオンライン申請する場合、手数料はこれまでの1万5900円から8900円へと、約44%安くなる(窓口申請は9300円)。2025年5月にはオンライン申請も始まっており、パスポート取得のハードルは下がっている。
一方で、各国の入国手続きはデジタル化と厳格化が進む。米国のESTA、台湾のTWAC、韓国のe-Arrival Card、EUのETIASなど、事前のオンライン手続きを求める国が増えている。嘉名氏は、通信環境に続く新たな課題は渡航手続きだとし、旅行の準備段階=「旅マエ」が新たな障壁になりつつあると指摘した。
トリファが過去2年以内に海外旅行でESTA申請を経験した353人に実施した調査では、申請時に不安や困りごとが「よくある」「たまにある」と答えた人が合計56.4%、申請に「手間がかかる」と感じた人が合計70.3%に上った。具体的には「英語の設問が多く正しく回答できているか不安だった」(47.7%)、「申請手数料以外に高額な手数料を請求された/されそうになった」(49.2%)といった声があったという。
「入国手続きサポート」とは パスポート撮影と日本語入力で申請
こうした課題を受けて提供を始めたのが「入国手続きサポート」だ。米国渡航に必要なESTAの申請を、日本語で進められるサポートサービスとなる。
特徴は大きく3つある。1つ目は入力の手軽さだ。パスポートをスマホのカメラで読み取ると、氏名や国籍、生年月日などの基本情報が申請フォームに自動反映される。住所や勤務先も日本語で入力でき、英語への変換はアプリが行う。トリファによると、入力は最短約10分で完了するとのことだ(米国税関・国境警備局の審査時間は含まない)。
2つ目は、入力ミスを防ぐ自動チェック機能だ。ESTA申請では、回答の誤りが即時の却下につながることがある。本サービスでは送信前に、パスポートの有効期限、適格性質問への回答、住所・電話番号などの入力形式、必須項目の漏れを自動で確認する。
3つ目は、家族や同行者の分をまとめて申請できる機能だ。代表者がグループ全員分を購入し、各メンバーが自分のスマホでパスポートの読み取りと情報入力を行える。ただし、この機能はサービス開始時点では未搭載で、近日中の対応を予定しているという。
料金は2プラン ESTA公式料金が別途必要な点に注意
料金プランは「シンプルプラン」と「あんしんプラン」の2種類だ。eSIMを購入する人の場合、シンプルプランは「eSIM料金に含む」形で追加負担なく利用でき、あんしんプランは1980円。eSIMを購入しない人向けには、シンプルプランが2980円、あんしんプランが3980円となる。
なお、いずれのプランでも、米国政府へのESTA公式申請料金40.27ドルは別途必要になる。サポート料金とは別建てであり、利用者が負担する総額は「サポート料金+40.27ドル」となる。
両プランの違いは、申請のスピードとサポートの手厚さにある。米国当局への申請は、シンプルプランが72時間以内、あんしんプランが24時間以内(いずれも土日を含む)。あんしんプランには担当者による申請内容の確認と、不承認だった場合の全額返金補償が付く。一方、シンプルプランにはこの補償がなく、ESTA公式申請料金は返金の対象外となる。手厚さを求めるならあんしんプラン、コストを抑えたいならシンプルプラン、というすみ分けになる。
申請先はあくまで米国税関・国境警備局(CBP)の公式システムであり、本サービスを使っても審査自体は通常と同じだ。つまり、このサービスは申請の手間と入力ミスのリスクを減らすものであって、承認を早めたり保証したりするものではない。
「通信」から「トリップインフラ」へ
トリファは今回の新サービスを、事業全体の中に位置付けている。同社は2020年に創業し、2021年にeSIMアプリ「トリファ」を提供開始した。累計ダウンロード数は200万件を超え、国内の旅行用eSIMアプリでダウンロード数ナンバー1としている。約2年で売上高は15倍に伸び、2026年6月には約50億円を調達して累計調達額は63億円に達した。
同社はeSIMを起点に、海外旅行保険やVPN、空港ラウンジパスといった機能を順次追加してきた。今回のESTA対応もその一環で、「パスポートとトリファだけで旅をする未来」を掲げ、旅にまつわる手続きを1つのアプリで完結させる「トリップインフラ」の構築を目指すとしている。嘉名氏は、旅行のデジタル化がこれまでの予約・検索中心(旅ナカ)から、渡航手続きを含む準備段階(旅マエ)へ広がっていると説明した。
入国手続きサポートは今後、ESTAを皮切りに韓国のe-Arrival Card、台湾のTWAC、EUのETIASなどへ対象を広げる予定だという。海外展開も進めており、2024年に進出した台湾を含め、海外が売り上げ全体の約1割を占める。東アジアでのシェア1位を目指すとした。
関連記事
海外旅行用eSIMアプリ「トリファ」を使ってみた 初心者向けの丁寧な設計だが、5G対応は限定的で価格がネック
海外旅行の通信手段として注目される海外eSIMサービス。日本発の「trifa」をヨーロッパで実際に試したところ、設定の簡単さとトラブルシューティング機能の充実ぶりが印象的だった。ただし価格は競合の2~3倍、多くの地域で5G非対応という課題も見えてきた。「レンタルWi-Fiからの旅立ちを」 海外eSIM「トリファ」が“eSIM後進国・日本”からの脱却に本腰
海外用eSIMサービスを提供しているトリファが、eSIM事業者では初のテレビCMを展開する。日本のeSIM利用率は主要国で最下位だが、一度使えば普及率は大きく高まると同社は期待する。トリファのアプリでは、最短3分でeSIMの設定が完了するという使いやすさにもこだわった。海外eSIMの「トリファ」が急成長を遂げたワケ 体験に基づくサービス設計、海外キャリアと直接連携も強みに
レンタルWi-Fiに代わる海外での通信手段として、eSIMを提供する事業者が増えている。国内ではトリファが急成長しており、7月にはテレビCMも開始した。ライバルも多い中、どのような戦略でeSIMサービスを提供していくのか、代表取締役の嘉名雅俊氏に話を聞いた。JALモバイルが海外eSIMを提供 利用100円につき最大5マイルたまる
MVNOサービス「JALモバイル」は、6月1日に世界100以上の国/地域に対応した「JALモバイル 海外eSIM」を提供開始。データ通信量の追加も可能で、利用料金100円につき3マイル、JALモバイル会員なら5マイルたまる。30GBの「ahamo」は国際ローミングにも最適 海外でも“普段の感覚”で使えるありがたさを実感
容量が30GBに増量されてより魅力的になったドコモのオンライン限定プラン「ahamo」だが、海外でも30GBまで利用できる。ルーターをレンタルしたりSIMを購入したりする必要がないのが魅力。データプラス(シェア回線)で契約している回線も国際ローミングの対象になる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.