富裕層向けカードの潮流が変化 アメックス、三井住友、ダイナース、ラグジュアリーカードが狙う“特別な体験価値”とは?(2/2 ページ)
富裕層向けプレミアムカードでは物消費から体験価値へのニーズ変化が起きており、各社がイベント提供を強化している。アメックスや三井住友カードは貸切イベントや独自カスタマイズの限定体験で顧客との接点を拡大させている。ダイナースやラグジュアリーカードも限定グルメや会員同士の交流機会を用意し、独自の価値を提供している。
ダイナースクラブ:ライフスタイルや趣味嗜好にフィットしたグルメ体験
ブランドの由来でもある「ダイナース(食事をする人)」にちなんで、1960年の日本創業以来、グルメに力を入れるダイナースクラブカード。グルメ特典はプレミアムカードの代表格だが、その体験価値においても変化が起きている。
「かつてのプレミアムカードのサービスは、誰もが知っている高級店・高級ホテルでの優待が中心でした。しかし今の会員が求めているのは、自分のライフスタイルや趣味嗜好(しこう)にフィットした体験です。これに対応するため、当社のコンシェルジュサービスでは、単純な予約代行にとどまらず、会員一人一人のライフスタイルや人生のステージを深く理解した上で、最適な体験をコーディネートしています」と、三井住友トラストクラブ 執行役員 マーケティング本部長の斉藤幸子氏は話す。
2026年4月には24の新サービスの提供を開始し、グルメ関連では6つの新サービスをローンチした。その1つがプレミアムカード会員限定で、予約困難店の席を貸し切りで利用する企画。この他、コース料理を2人以上で利用した場合に1人分が無料になる「エグゼクティブ ダイニング」を、国内の高級店に加え、ハワイやシンガポール、台湾の海外店舗にも拡大。所定のレストランでの利用金額に応じて最大20%をキャッシュバックする、グルメキャッシュバック特典なども開始した。
2025年秋には、ダイナースクラブ日本創業65周年を記念した、招待制カード「ダイナースクラブ ロイヤルプレミアムカード」会員限定の特別イベントを開催。大正2年に建造された格調高い綱町三井倶楽部を会場に、通常非公開のワインセラーを見学したり、特別コース料理と厳選ワインのペアリングを楽しんだりした。参加した会員からは、「さすがダイナースクラブだと思える特別感のあるイベントだった」「素晴らしい供宴、極上のおもてなしだった」と好評だった。
「会員限定イベントへの参加意欲は高まっており、定員を設けたプレミアムな体験プログラムは、告知後に短期間で満席になるケースも少なくありません。かつての消費としての体験から、人脈形成、自己成長、知的探求といった多面的なリターンを求める方が増えたと実感しています」(斉藤氏)。
ラグジュアリーカード:会員同士のつながりが資産になる特別な社交場
プレミアムカード会員限定のイベントでは、同じカードを持つ会員とのつながりが生まれるのもメリット。Mastercard最上位クラス「ワールドエリート」を日本で初めて採用した「ラグジュアリーカード(LC)」では、会員同士のリアルな出会いが生まれる特別な場として「ソーシャルアワー」を実施している。
共通の趣味や関心事を通じて個人的なつながりを楽しみたい方向けの「テーマ別ソーシャルアワー」と、仕事関連のつながりを第一に望む方向けの「ビジネスネットワーキングソーシャルアワー」を用意する。
「ラグジュアリーカード」。(左から)「Gold Card(Yellow、Rose)」(年会費共に22万円)、「Black Card」(年会費11万円)、「Titanium Card」(年会費5万5000円)
2025年11月には日本創立9周年を記念した、大人が本気で楽しむ「LC運動会」を開催。参加者からは、「その日初めてお会いする人がほとんどにもかかわらず、コンテンツごとに皆で作戦を立て、強い団結力で勝利を目指せました」「休憩時間に名刺交換をしたり、豪華なケータリングで飲食を取りながら談笑したりと、充実した1日を過ごせました」といった声が聞かれるなど、会員同士の交流に特別な価値を感じた人が多かった。
「これまでは関東近郊の会員が多かったのですが、2025年度の新規入会会員は全国47都道府県のいずれでも2桁増となりました。新規会員数は前年比で134%増と過去最大となり、中でも20代の入会が増えています。イベント参加者はその内容に興味を持っている会員が集い、年齢に関係なく会員同士がつながっている印象です」と、ラグジュアリーカード合同会社 事業開発・業務統括本部長の渡部吉一氏は話す。
花火大会でのVIP席や新国立競技場VIPルーム貸切などのイベントの他、7月からは瀬戸内海に面する瀬戸内市との戦略的パートナーシップにより、世界最大規模の備前焼大窯貸切、無人島へのプライベートツアーなど、10のLC限定の特別体験を提供する。
同社が2025年7月に発表した「新富裕層のライフスタイル調査」では、会員の中でも特に消費行動において活発な傾向が見られた「アクティブ・ラグジュアリー層」の特徴として、心を動かす体験や人との関係性、自己成長に積極的に投資する傾向が明らかになったという。
プレミアムカードの傾向は、単なるモノ消費からここでしか得られない特別体験へと進化し、それをどんな人と一緒に体験するのかにもこだわりが生まれているようだ。
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