ソニーが小型マイク「ECM-AX10」発表 スマホに挿して立体的で臨場感のある音の収録を
ソニーはスマートフォン用USB Type-C接続の空間オーディオマイクロフォン「ECM-AX10」を10月9日に発表。10月23日に市場推定価格3万円前後で発売する。球形モジュールに配置された4つの全指向性マイクとDSPによる高度な信号処理を採用し、周囲360度の音響情報を記録するアンビソニックス録音やバイノーラル、ステレオ録音が可能だ。
ソニーは、スマートフォンに直接接続して手軽に本格的な立体音響を収録できる空間オーディオマイクロフォン「ECM-AX10」を10月23日に発売する。市場推定価格は3万円前後となる。スマートフォンを用いた高品質な映像や音声コンテンツ制作を目指すクリエイターに訴求する。
スマートフォンとの接続にUSB Type-C端子を採用しており、手のひらに収まるコンパクトなデザインと約24gという軽量な本体を実現した。大掛かりな撮影機材や複雑な配線を持ち運ぶことなく、スマートフォン1台とECM-AX10だけで、いつでもどこでも高精細な立体音響撮影を開始できる。
新開発の球形マイクモジュールとアンビソニックス録音の技術的仕組み
ECM-AX10の技術的な特徴は、新開発された球形のマイクモジュール構造と高度な信号処理の組み合わせにある。
球体部分には前、後、左、右および上下の方向を網羅するように4つの全指向性マイクユニットが精密に配置されており、周囲360度の音響情報を余すことなく収録できる。
マイクユニットで捉えた直後の音は「Aフォーマット」と呼ばれる4チャンネルの生音声信号だが、本機ではこれをマイク内部のDSP(デジタル信号処理プロセッサ)上でリアルタイムに演算処理する。
通常は大型のプロ用機材や高次アンビソニック(HOA)で用いられる高度なアルゴリズムを適用することで、全方向に等しい音を表すWチャンネル、前後方向のXチャンネル、左右方向のYチャンネル、上下方向のZチャンネルから構成される「アンビソニックスBフォーマット(48kHz/32bit Float 4ch Ambix)」へと即座に変換される。Bフォーマットへの変換により、DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)や各種編集ソフトとの互換性が確保されるわけだ。
さらに、20Hz~20kHzに及ぶ広帯域で理想的な指向性とバランスの取れた周波数特性を両立させつつ、最大音圧レベル120dB SPLに対応させることで、大音量環境でもひずみにくく、正確な空間定位と圧倒的な臨場感や没入感をコンパクトな本体のみで生み出すことが可能だという。
撮影目的に合わせて自由に変更できる3つの録音モードとアプリ連携
多様な撮影環境に対応するため、アンビソニックス、バイノーラル、ステレオという3つの録音モードを備えている。本体側面に用意した録音モード切替スイッチによって「Spatial(空間)」または「Stereo(ステレオ)」を選択できる。
Spatialモードを選択した状態で専用アプリを使用すると、アプリ画面上で4チャンネルのアンビソニックス録音または2チャンネルのバイノーラル録音を自由に切り替えて撮影を行える。
一方、標準のカメラアプリやサードパーティー製の一般的な録画アプリを使用した場合でも、自動的に2チャンネルのバイノーラル録音モードへ切り替わるため、特別な設定を行わなくても臨場感のある立体的な音声を記録できる。
また、Stereoモードに設定した場合は、4つのマイクユニット全てをフル活用した高品質な2チャンネルステレオ録音が行われ、幅広い動画制作アプリで利用可能だ。
過酷な現場での撮影を協力にアシストする豊富な物理スイッチと調整機能
本体には、過酷な撮影現場や刻々と変化する音響環境に即座に対応するための物理制御スイッチを多数搭載している。
音質制御機能として、デジタル信号処理で背景の煩わしい環境雑音を除去するノイズカット(NC)フィルターと、風切り音やエアコンの動作音、振動などの低周波ノイズを大幅に軽減するローカット(LC)フィルターを用意した。
大音量での音割れやひずみを防ぐアッテネーター(ATT)スイッチを備え、0dB、-12dB、-20dBの3段階で入力レベルを調整できる。
音圧レベルを視認できるピークレベルインジケーターやオートゲインコントロール(AGC)も備えており、OVER表示の点灯を確認しながら適切なゲイン調整が可能だ。
さらに、インカメラでのセルフィー撮影時に音声の左右が反転するのを防ぐSELFIEスイッチや、スマートフォンの縦構図・横構図の変更を内部センサーで感知して音声の向きを自動的に追従させる高度な補正機能を備える。本体側面の3.5mmステレオミニジャックにヘッドフォンを接続すれば、録音中の音声をバイノーラルまたはステレオでリアルタイムにモニタリングできる。
専用アプリが実現するスマホ1台で完結する一気通貫の制作ワークフロー
ソニーは製品の発売に合わせて、iOSおよびAndroidに対応した専用コンパニオンアプリ「Spatial Audio Video Tool」(およびSpatial Audio Recording)を無料公開する。このアプリを使用することで、空間オーディオ動画の撮影から録音データの確認、簡易的なカット編集や音量調整、そして各種SNSへのダイレクト投稿までをスマートフォン1台で完結させられる。
さらに本アプリは、SamsungとGoogleが共同推進する次世代立体音響フォーマット「Eclipsa Audio」への対応および書き出しをサポートする。現在YouTubeをはじめとする主要プラットフォームにおいて空間オーディオ配信の環境整備が進んでおり、クリエイターが撮影した360度立体音響コンテンツをそのまま世界中の視聴者へ届けられるエコシステムに対応した先進的な仕様といえる。
屋外撮影やスマホケース装着時にも役立つ配慮の行き届いた標準付属品
ECM-AX10の付属品は、屋外撮影時に激しい風ノイズを大幅に低減するファータイプのウインドスクリーン、一般的な三脚やスモールグリップのコールドシューマウントに取り付けることができるシューマウント・マイクホルダー、そして離れた位置からの接続を可能にする約40cmのUSB Type-Cケーブルとなっている。
分厚いスマートフォンケースを装着したまま直挿して撮影したいユーザーへ配慮し、コネクターの接続部分を適正な長さに拡張調整できる専用のスペーサーシートも付属する。スマートフォンケースを取り外す手間をかけずに、あらゆるスマートフォンでスムーズに撮影を開始できる実用的な設計となっている。
Vlogからライブ収録まで 映像表現の可能性を広げる多様なユースケース
手軽さと高音質を両立させたいVloggerやYouTuberをはじめとするあらゆる映像クリエイターを主なターゲットとしている。
旅先や街歩きVlogにおいて周囲の景色の空気感や雑踏のにぎわいをそのまま残したい場面はもちろん、川のせせらぎや鳥のさえずりを捉えるヒーリング・自然環境音の収録、ASMRコンテンツの制作において非常に高い効果を発揮する。
スタジアムでのスポーツ観戦における熱気あふれる観客席の臨場感や、スタジオでのバンド練習・ライブ演奏時にメンバーが取り囲む空間の音をワンポイントで臨場感たっぷりに記録するなど、従来のスマートフォン内蔵マイクでは決して得られなかった立体的な没入体験を提供する。
このように、ECM-AX10はモバイル動画制作における音声表現の可能性を大きく広げる注目の新プロダクトといえそうだ。スマートフォン内蔵マイクから拾う音ではなく、さらに納得のいく音で集音したい――そんな人におすすめの製品となりそうだ。
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