外谷一磨さん FCNT株式会社 プロダクト&サービス企画統括部 プリンシパルプロフェッショナル。新たなお客様価値を創出すべく、プロダクト(端末)とサービス融合型の戦略立案及び、他社とのアライアンス戦略を担当している。
荒井厚介さん FCNT株式会社 プロダクト&サービス企画統括部 プリンシパル クリエイティブ プロフェッショナル。プロダクトのマーケティングとデザインを主に担当しており、並行してプロダクトとサービスを融合した価値訴求の戦略にも携わっている
arrows先生 富士通の携帯電話というと、古くから生体認証に力を入れていますよね。指紋認証は国内初、虹彩認証は世界で初めて採用していると思うのですが、セキュリティへのこだわりはどこから来ているんでしょうか。
外谷氏 携帯電話は、自分のものを含む個人情報の“塊”でもあります。安心、安全に携帯電話を使っていただく手段の1つとしてで、セキュリティは欠かせないものです。(前身である)富士通はサーバも手がけてきたこともあり、セキュリティ機能に対するこだわりが強いです。そのことが、今の弊社のarrowsにも息づいているのかと思います。
arrows先生 個人的には「ARROWS NX F-04G」が世界で初めて搭載した虹彩認証(Iris Passport)がとても気に入っていました。マスクをして過ごすことが増えたこのご時世だからこそ、虹彩認証を復活させても良いように思えるのですが、いかがでしょうか。
外谷氏 今日出席している弊社のメンバーは、虹彩認証に再び取り組みたいと思っています。
おっしゃる通り、今は新型コロナウイルスの感染拡大もあって、マスクをされる人が増えていて「顔認証だとちょっとね……」という声もあります。その観点に立つと、虹彩認証は利便性と安全性を両立できるのでぜひともやりたいです。
ただし、(端末の)デザイン的な部分との整合性をどう取るのかという問題が立ちはだかっています。虹彩認証を搭載するとなると、部品の設置にそれなりの面積が必要で、画面の上下、私たちは「デコ」「アゴ」と読んでいますが、これらがどこまで許容されるものなのか、日々いろいろなパターンを検討しています。
いつか、何らかの形で(虹彩認証を搭載するarrowsを)披露できればとは思っています。
arrows先生 最近は「FASTフィンガーランチャー」や「Exlider」のように、指紋認証の機能も拡充していますよね。
外谷氏 単純にセキュリティを強化するための手段としてだけでなく、それをユーザビリティ(使い勝手)にどうつなげるのかということにはこだわっています。
arrows先生 「arrows 5G F-51A」からだと思うのですが、ミドルハイレンジモデルやハイエンドモデルでは放熱機構にも注力していると思います。これはなぜなのでしょうか。
中窪氏 お客さまが安心して使うという観点では、ハードユースの場合でもストレスなく使えるようにすることが重要です。ユースケースを想定してシミュレーションも行い、回路や構造を設計しています。
ただ、PCもそうなのですが、通信速度や処理パフォーマンスは高くなるほど発熱は大きくなる傾向にあります。PCでは冷却ファンを導入するという選択肢も取れますが、スマホではそういう訳には行きません。端末の大きさや薄さも含めて、どのように放熱するかベストバランスを探る必要があります。
外谷氏 発熱が大きくなると、端末のパフォーマンスを意図的に落とさざるを得なくなります。このことがユーザー満足度の低下につながることもあるので、できるだけ高いパフォーマンスを維持しつつ、しっかりと冷却するということを考えなければいけません。
その結果、F-51AやF-52Aでは液体を封入した放熱機構「ベイパーチャンバー」を導入しました。これで放熱効率は大きく改善しています。
arrows先生 過去のARROWSにおける発熱問題への反省もあって、放熱には注力しているのでしょうか。
中窪氏 そうですね。発熱問題に限らず、過去のモデルで生じた課題については将来のモデルにしっかりとフィードバックしています。
arrows先生 arrowsの最新モデルであるarrows Weですが、最新の5Gに対応するスマホながらも、販売ルートによっては税別で2万円を切る価格であることがビックリです。使ってみると「安かろう悪かろう」じゃないことはよく分かるんですけど、こんなに安くて大丈夫なんですか。
外谷氏 私たちにとっての「お客さま」、arrowsを愛用してくださっているエンドユーザーさまと、arrowsを取り扱ってくださるMVNOを含むキャリアさまの双方がどのようなスマホを求めているかという“時代の流れ”を考えたときに、新生(社名を変更した)FCNTの第1弾の新ブランドとして打ち出したのがarrows Weです。
そのこともあり、従来の5Gスマホと比較しても買い求めやすい価格設定としています。arrows Weを通して、より多くの人に5Gを含む新しいデジタル体験を届けたいと考えています。また、同一の機種とブランドをマルチキャリアで展開するのも(前身を含めて)初めての取り組みです。
荒井氏 arrows Weは、あえてお求めやすい価格帯の5Gスマホとして打ち出しています。手に取って使っていただければ分かると思いますが「安かろう悪かろう」にはなっていません。この点には大きな自信があります。
弊社が社内で使うスマホアプリには、そこそこ処理負荷の重いものもあるのですが、arrows Weでも意外とこなせます。低価格と品質を両立したスマホとして、arrows Weは5Gの普及期には欠かせない存在だと自負しています。おかげさまで、エンドユーザーさまからもキャリアさまからも良好なフィードバックが得られています。
arrows先生 arrows Weを足がかりにして「よりハイスペックなスマホが欲しい」と考える人もいると思います。古くからのarrows(ARROWS)ファンも「昔みたいなハイスペックなarrowsを手にしたい」と考えている人もいると思います。
そう考えると「エントリー」「ミドルレンジ」「ハイエンド」のそれぞれにおいてarrowsが必要だと思うのですが、今後どのようなラインアップを考えているのでしょうか。
荒井氏 以前であれば、端末のスペックによって「エントリー」「ミドルレンジ」「ハイエンド」が自動的に決まってくるような感じだったと思います。ただ、スペックだけを見れば、現在はarrows Weのようなエントリークラスのスマホでも使い方によっては必要十分な性能を備えています。一方でハイエンドクラスの製品では多眼かつ高画素なカメラを備えることもあり、価格もかなり高くなる傾向にあります。
私たちとしては、もっとお客さまのことをよく見て、何を求めているのかをしっかりと把握した上で、セグメントやカテゴリーにおける“フラグシップ”となるスマホを提供していこうと考えています。もちろん、ハイエンドなSoCを搭載してリッチなカメラを搭載したarrowsを求めるお客さまの存在は認識していますし、チャレンジではありますが今までになかったカテゴリーのニーズの発掘も進めなければいけません。
外谷氏 このシーズンの新製品はarrows Weと「らくらくスマートフォン F-52B」の2つでしたが、FCNTではさまざまなスマートフォンのラインアップを検討しています。より多くのお客さまに、よりピッタリな製品を提供できるように取り組んでいますのでご期待いただければと思っています。
arrows先生 将来のarrowsに期待という所で、何か「将来のarrows」のヒントになることを、可能な範囲で構わないので教えてください。
外谷氏 まず、お客さまに端末を長く愛用いただくという観点では、ソフトウェアの更新を含めたサポート面はしっかりとやっていきます。私たちは数少ない日本メーカーであり、開発から生産までを日本国内で完結できる体制も整えています。先ほど出てきた洗えるスマホの話もそうですが、日本のお客さまのニーズをしっかりと捉えたarrowsを世に送り出せたらと考えています。
最近よく話を聞く機会が多いサステナビリティ(持続可能性)にもしっかり取り組んでいきます。今でもリサイクル素材や環境配慮素材を使ったもの作り自体は行われていますが、そのことを“露骨に”しすぎてお客さまにご迷惑をお掛けするのはよくありません。
F-01Jで「細マッチョ」を実現したときのように、FCNTの技術とDNAをもって、使い勝手やデザイン性を高いレベルで確保した上で、さり気なくサステナビリティにも配慮したarrowsを実現します。
今回の取材を終えて、arrowsの商品企画や開発に携わっている人たちの熱い思いを改めて感じることができた。
2011年の誕生、2015年のリニューアルを経て、2021年に10周年を迎えたarrowsブランドは、今までの、そしてこれからのFCNTを象徴する製品である。日進月歩していく技術と日々変化していくユーザーのニーズを捉えて、文字通りより多くの人を“つなぐ”ためのスマホとしての進化は止まらないだろう。技術やニーズの変化によっては、今のスマホからは考えも付かない姿に進化する可能性もあり得る。私(arrows先生)個人としては、とにかくフラグシップのarrowsの登場が期待できそうで、今回話を聞いて良かったと感じた。
今後のarrowsから、目が離せない。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia Mobile 編集部/掲載内容有効期限:2022年3月23日