Bluetoothの成否は“日本の携帯”が握る

技術的に問題点をほぼ克服したBluetooth。その牽引役として期待されるのは携帯の通信キャリアだ。「Bluetooth搭載の携帯電話が浸透しなければ,Bluetoothも失敗であったと結論付けられる」と日本エリクソンは期待を示す。

【国内記事】 2001年11月2日更新

 バージョン1.1のデバイスが市場に投入され,互換性の面もほぼクリアされてきたBluetooth(4月24日の記事参照)。ホットスポットサービスの実験も行われ(11月1日の記事参照),この冬のノートPCにはBluetooth内蔵モデルが各社からラインアップされるなど,“Bluetoothが謳ってきた夢”を実現するための技術は成熟してきた。

 しかしBluetooth市場が爆発的に伸びるには,まだまだ状況は厳しそうだ。その理由は1つ。対応機器の充実が先か,Bluetoothを使った魅力的なアプリケーションの登場が先か,という,いわゆる“卵が先か鶏が先か”という古典的な問題にある。

通信キャリアがカギを握る

 「(Bluetoothを)普及させるには携帯だ。技術的な話より,オペレータ(通信キャリア)主導のサービス展開が期待される」と話すのは,日本エリクソンのモバイルインターネットソリューション部マーケティングマネージャーである宮津和弘氏。

 宮津氏は,「今後の数年間でBluetooth搭載の携帯電話がグローバルなスケールで一般コンシューマに対して深く浸透しなければ,ここまで大きく注目を浴びているBluetoothも失敗であると結論付けられるといっても過言ではない」とまで,携帯電話の重要性を強調する。

 しかもこの役割を担えるのは,iモードなど先端のサービスを提供している日本の通信キャリアしかないだろうという考えだ。「オペレータ(主導で)サービスを一気に普及させるには日本が強い」(宮津氏)。

通信キャリアはBluetoothで新たなビジネスモデルを

 宮津氏は,Bluetoothの搭載された携帯電話がBluetoothのアクセスポイント経由でインターネットに接続し,コンテンツを閲覧したりダウンロードしたりできる世界を想定する。これが可能になると,ユーザーはキャリアの通信網を使わずに携帯電話からインターネットにアクセスできるようになる。つまり低コストで高速なデータ通信が可能になるわけだ。

 ユーザーにとっては大きなメリットだが,通信キャリアがBluetoothを積極的に採用したがらない理由もここにあると宮津氏は見る。Bluetoothを使ってインターネットにアクセスされては,キャリアは携帯のネットワークからデータ通信による収益を上げることができなくなるからだ。

 実際,KDDIのBluetooth内蔵携帯電話「C413S」も,トランスポートプロトコルやWebブラウザはBluetoothと接続されておらず,Bluetooth経由でEZwebコンテンツを見ることはできない(6月4日の記事参照)。

 宮津氏は,通信キャリアのこの発想に異を唱える。「携帯事業の収益はトラフィックからだけ来るものではない。コンテンツや広告,トランザクションも収益となり得る。(通信キャリアは)トラフィック以外のビジネスモデルを立ち上げなくてはならない」

 通信キャリアは端末にBluetoothを搭載し,アクセスポイントも同時に設置することで,従来の携帯ネットワークからの収益は減るかもしれない。しかしBluetoothネットワークを媒体として使った新たなビジネスモデルが可能になるというのが宮津氏の考えだ。

 現在,通信キャリアの収益はそのほとんどを通信トラフィックに依存している。しかし携帯を媒体とした事業が成り立たないわけではない。例えばiモードの有料コンテンツ市場は2000年度で340億円に達し,9%の料金回収手数料を徴収しているドコモは30億円程度を得ている。

Bluetoothならではの位置情報コンテンツ

 携帯電話のネットワークに対して,Bluetoothを使ったコンテンツ配信のメリットもある。「位置に依存したコンテンツを提供するには(携帯電話ネットワークの)トラフィックでは厳しい。(Bluetoothのアクセスポイントを使えば)場所に応じて,情報をプッシュで配信できる」(宮津氏)

 位置情報サービスは携帯電話のキラーコンテンツの1つともいわれており,J-フォンがステーションという形で位置情報とプッシュを使ったサービスを(7月27日の記事参照),NTTドコモは位置情報を使ったiエリアをスタートさせている(7月27日の記事参照)。KDDIは12月の新端末からGPS衛星を使った高精度な位置情報サービス「eznavigation」をスタートする予定だ(10月4日の記事参照)。

 宮津氏は,携帯電話ネットワークを利用した位置情報サービスと,ホットスポットサービスのようにBluetoothを使った位置情報サービスは性格が異なることを強調する。「(アクセスポイント設置者は)ここに来てほしいから情報を提供する。(位置情報サービスとして,ユーザーが)どこにいても情報を提供するのは逆にニッチで特殊用途」

通信キャリアへ期待?

 Bluetoothはそもそも携帯電話への実装を前提に作られた規格だ。普及の牽引役を携帯電話に期待するのも当然といえる。

 第3世代携帯電話との相性もいい。音声とデータ通信を同時に利用できるマルチコールサービスを効果的に利用するにはケーブルが2本必要になる。これもBluetoothを利用すれば,ケーブルを全く利用する必要がなくなる。

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NTTとホンダが試作したFOMAを使った「次世代車載情報提供システム」の接続例。音声とデータを両方利用するため,2本のケーブルを接続する必要がある(10月22日の記事参照

 にもかかわらず,通信キャリアの動きは鈍い。確かにドコモなどは近距離無線通信の規格として将来的にBluetoothに期待を示すこともあるが,その用途は認証・コントロール用で,ネットアクセス用途ではないようだ。

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ドコモがたびたび示す,近距離無線の活用例。POSレジと携帯電話が連動してキャッシュレスで買い物をしたり,Jini対応のプリンタを使って携帯電話の画面をプリントアウトしたりすることを構想中だ

 “通信トラフィック”という収益の柱を失う可能性をはらむBluetoothに,通信キャリアはどこまで積極的に動けるのか。“携帯のオープン化”の動きが盛んになっていくなか,「携帯にBluetoothを搭載し,アクセスポイントを経由してキャリアに関係なくネットにアクセスできるようにすべき」という議論もある。最後の牽引役として通信キャリアへの期待は大きい。

[斎藤健二,ITmedia]

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