Bluetoothが描くバラ色の未来は携帯電話への普及次第

Bluetoothのある世界はバラ色であるかのように語られることが多かった。しかし，その未来像も携帯電話への普及が進まなければ，夢物語で終わってしまうかもしれない。

【国内記事】

2001年11月2日更新

　お台場で開催された「e-Drive 2001」のソリューショントラック「Bluetooth搭載モバイル機器による情報サービス実証実験と今後のビジネスモデル」に，日本エリクソンの事業開発本部Dr.Michael Bjornゼネラルマネージャが登壇，Bluetoothで実現するビジネスとその可能性について語った。

日本エリクソンの事業開発本部Dr.Michael Bjorn氏

　Bluetooth搭載機器が普及することによって実現することはたくさんある。ノートPCとのデータのやりとり，携帯電話同士の名刺交換，PDAのデータの同期など実にさまざま。また，ホットスポットサービスの実証実験「B.L.T.」で行われたような，ローカルエリアでのメディア配信やインターネット接続，位置依存型情報をプッシュするサービスも可能だ。

　また，現在策定中のプロファイルも多数あり，その中にはプリンタやビデオ，電子決済，非制限デジタル，SDPなどがあるとBjornは説明。また，Radio 2による高速化も図られるという。Bluetooth搭載機器さえ増えればユーザーの利便性は上がりそうだ。「非制限デジタルプロファイルを使えばビデオフォンを実現でき，SDPプロファイルを使えば，自分の持っているBluetooth機器のエリア内に入ってきたBluetooth機器を探してくれる。高速化が図られれば，安定した接続が得られる」 (Bjorn氏)

携帯に搭載されることで新しいビジネスが生まれる

　日本でも，Bluetoothを搭載した製品が増えてきているが，Bluetooth普及の鍵となるのは携帯電話への搭載であるとBjorn氏は考えている。「最近，コンビニの中に情報端末が設置されるようになり，さまざまな情報を引き出せるようになっているが，あまり使っている人を見かけない。人は使い慣れた身近な端末で情報を引き出したいと思っているのではないか」

　また，同氏はBluetooth搭載端末の数が増えてこないと，サービスがビジネスとして成り立たないことも指摘。「最近ではPDAにBluetooth機能を持たせられるようになってきたが，Pocket PCはビジネスユースがメインとなるため，携帯電話のような爆発的な普及は難しい」

　日本の携帯電話のBluetoothが搭載が進まない理由はキャリアの思惑などもあるようだが (11月2日の記事参照) ，Bjorn氏はBluetooth搭載携帯電話が普及することで，通信キャリアやコンテンツベンダーが受ける恩恵もあると予想している。「例えばホットスポットエリア内に入ったとき，電話機の中にプッシュ型の情報が送り込まれ，そこで得たURLにユーザーがアクセスすれば，トラフィックも増える。Bluetoothネットワークが普及して，メディア配信やモバイルコマース，店内インタラクティビティが実現，それが便利だとユーザーに認知されれば，携帯電話解約率の低下や新規加入者の獲得にもつながる。コンテンツベンダーにとっては新規収入源を得るチャンスにもなる」

日本エリクソンが打ち出す携帯電話への普及策

　しかし同氏が挙げた例は，既に現在の携帯電話でも実現可能だ。携帯電話へのBluetooth搭載を狙うなら，Bluetoothならではの機能をフィーチャーした戦略が必要となるだろう。

　新しいプロファイルも増え，さまざまな可能性が見え隠れするBluetoothではあるが，現在，Bluetoothを搭載した端末はauから1機種しか出ておらず，今後も搭載機の予定はあまり聞かれない。Bluetooth推進派にはこれも辛いところだ

　「PDAによるBluetoothの普及ではビジネスモデルは成り立たないのですか？」と筆者が聞いてみたところ，「それよりは任天堂のゲームボーイに搭載されてほしい」とジョークを飛ばしたBjorn氏。日本でのBluetooth普及策の打ち出しに懸命な様子だ。

[後藤祥子，ITmedia]

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