十字キーも置き換える“指紋認証”センサー
米Atruaは仏カンヌで開催されている3GSM World Congressで、タッチパッド代わりにも利用できる指紋認証センサーシステムを発表した。
単なる指紋認証センサーではなく、ナビゲーションシステムとしても使える──。米Atrua Technologiesは、携帯電話向けの触覚センサーシステム「Atrua Wings」を仏・カンヌで開催されている3GSM World Congressで発表した。
同社のシステムは、専用のスライド型センサーとソフトウェア、接続インタフェースからなる。携帯電話に特化しており、モバイルコマース時の本人認証や、十字キーに代わるインタフェースへの利用を想定している。
仏Purple LabsはAtrua Wingsを搭載したGSM携帯電話のデモを、3GSM World Congressのブースで行っている。製品としても最終チェックに入っており、2004年の第2四半期から量産予定だ。
タッチパッドとしても使えるセンサー
従来の指紋センサーとAtrua Wingsの大きな違いは、「タッチパッドとして回転制御などにも利用できることだ」と、米Atrua Technologiesのマーケティングディレクター マーク・オストラウスキ氏。
X軸、Y軸、圧力、回転の4つの次元で指の動きを読み取れるのが、従来にない特徴。同社の11件におよぶ特許のうちのひとつだ。
これにより、センサー部に指を当ててタッチパッドのように動かすことで、8方向にカーソルを動かしたり、クリック、ダブルクリックといった操作も行える。「ナビゲーションボタン(十字キー)の代わりに、Atrua Wingsを利用できる」(オストラウスキ氏)
指紋認証は、登録に試行が3回必要。認証はさまざまなシーンでの利用に堪えるようにチューニングされており、途中で指を動かす角度を変えたり、上下逆さまに指を動かしてもうまく認識する。
実際に指を触れて認証を試すと、かなり適当に触れてもしっかり認識するのに驚く。非対応率は1%、他人受け入れ率は0.001%、本人拒否率は0.1%だという。
携帯に特化したシステムとして提供
Atrua Wingsの特徴は、センサーやソフトウェア単体ではなく、セットのシステムで提供されていることだ。これによって「精度も高いし、低消費電力、CPU使用の最適化が行われている。ビジネスモデル的にもセット。個別のライセンス供与は拒否している」と、オストラウスキ氏。
スライド型のセンサーは、静電容量方式のパッシブ型でCMOSプロセスで生産できる。8行×192列のセンサーアレイを備え、使用チップは1個で済む。
認証ソフトウェアは、携帯電話のCPUで動作する。「ローエンドCPUにも対応できるよう設計してきた」と同社のファウンダー/チーフサイエンティストのアンソニー・ルッソ氏は話す。ナビゲーション機能は5MIPS程度、指紋認証は30MIPSのCPUパワーで行える。「ARM7/33MHz程度だ」とルッソ氏。
ARM以外にもXScaleやSHシリーズ、OMAPなどの各種CPUに対応し、OSもWindows CEやSymbian OS、BREWなどに移植が完了している。
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新興企業Atruaの開発した携帯電話用タッチパッドは、指紋を認識でき、画面の操作も可能。同社は「ナビゲーションボタンに取って代わるものだ」と語っている。(ロイター)
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