「携帯カメラで埋込データ読み取り」に新技術〜富士通研
富士通研究所は、印刷されたカラー画像内に見えないかたちで12桁の数字データを埋め込む新技術を開発したと発表した。同種の技術と比較して、画質の劣化が少ない点が特徴。
富士通研究所は6月30日、印刷されたカラー画像内に、ユーザーに見えないかたちで12桁の数字データを埋め込む技術「印刷型ステガノグラフィ」を開発したと発表した。携帯カメラで撮影し、データを読み取ることができる。同種の技術と比較して、画質の劣化が少ない点が特徴。
名刺や広告ポスター、雑誌に掲載する特定の写真などに、追加情報を埋め込むことが可能。対戦ゲーム用トレーディングカードに、「攻撃力」などの数値を書き込むことも考えられる。現在は技術開発の段階だが、今後市場のニーズを探って商用展開を模索するという。
ほかの技術と比べてのメリット
印刷物にデータを埋め込み、携帯で読み取るといった試みは、既にいくつかの方法が実用化されている。
QRコードやバーコードを携帯で読み取る、というのもその1つ。しかし、これらの方法では印刷物のほかに余分のスペースが必要となる。無機質な幾何学模様を掲載するため、デザイン性を損なうという問題もあった。
印刷物に“透かし”でデータを埋め込む方式として、ブロードバンドフォーラムが推進する「パ写WARP」なども存在する(3月31日の記事参照)。しかし、この場合は透かしの部分が“ざらついた”ような質感になり、高画質の印刷物には不向きだという。
印刷型ステガノグラフィは、データを埋め込みながらも、元画像の画質を劣化させずにすむ技術。1センチ×1センチ程度の画像でも埋め込み可能で、携帯のアプリを利用して1秒以下で復号化できる。
「差分」を利用して符合化
印刷型ステガノグラフィの原理は、対象となる画像を小領域の「ブロック」に分割して階調差をつけることにある。具体的には、0.8ミリ四方以下のブロックに分けて、隣接2ブロックの階調パターンを変更してデータを埋め込む。
人間の目は、0.8ミリ四方以下の2ブロックで階調に差があっても、変化を見分けにくい。しかし携帯カメラなどは0.1ミリ〜2ミリ四方でもブロック間の階調差を識別できる。この違いを利用し、“一見して画質の劣化がない”レベルで画像を加工するわけだ。なお、階調を変化させるにあたっては、黄色を足すなどの処理を行う。「黄色は、人間の目では拡散して見えなくなりやすい」(富士通研究所)
同方式の強みは、印刷物をカラーコピーしてもなおデータを読み取れること。「濃いコピーや、薄いコピーなどがあるが、“ブロック間の階調差”はそのまま残る。コピーでも同様に、携帯カメラからデータを読み取れる」(同研究所)。なお、モノクロでコピーしてしまうとデータは消える。
埋め込める情報料は少ないが……
デメリットは、埋め込める情報料が少ない点が挙げられる。12桁の数字データしか扱えないため、例えばURLを記載することができない。QRコードのように「URL情報を読み取り――Web to機能でそのサイトにジャンプ」といった使い方はできないことになる。
もっとも、富士通研究所のペリフェラルシステム研究所主管研究員、野田嗣男氏は「ポータルサイトを用意する、という手もある」と話す。
「12桁の数字を、(ナンバー検索のような仕組みを用意して)特定のURLに対応させられるポータルサイトを用意すればいい。ユーザーはそのサイトから、数字をURLに変換して、目的のサイトにジャンプするイメージ」
同氏は印刷型ステガノグラフィが、情報量よりも画質、高速処理に重点をおいた技術であることも強調した。
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