スクエニが語る、ドラクエ・FFの携帯移植「苦労話」
FOMA 900iのキラーアプリケーションとして、話題を集めた「携帯版ドラクエ・FF」。だが、ゲームを携帯に落とし込むには苦労もあったようだ。
FOMA 900iのキラーコンテンツとして、話題を集めた携帯アプリ版「ドラゴンクエスト」および「ファイナルファンタジー」(2003年9月25日の記事参照)。ユーザーの反応も上々だったようだが、配信にこぎつけるには苦労も多かったようだ。
9月7日の「CEDEC 2004」会場では、スクウェア・エニックスのモバイル事業部部長、洞正浩氏が講演に登場。移植でどのような点に気をつかったか紹介した。
ドラクエはより「簡単」に〜多くのカスタマイズ
ファミコンのゲームタイトルを、携帯向けにカスタマイズする。これは想像以上に手間のかかる行為だった。「たとえば、携帯の画面は縦長。しかし従来のものは(テレビ画面を想定して)横長に作ってあるので、レイアウトを作り直す必要があった」(同氏)。
文字表示では、入るはずの文字数が入らなかったりと意外に労力をとられる。マップでも、縦長表示では主人公の立ち位置から“上下左右(東西南北)がどれだけ見渡せるか”が変わってくるという。
「1つの画面内に出ているマップ情報で、動かないと見えないはずのもの(街や洞窟など)が見えたりする」。この点を、調整する必要があったという。
ゲームバランスにも、手を加えた。携帯ゲームは手軽に遊べるべきとの発想から、たとえばドラゴンクエストはファミコン版よりも「簡単」になるよう手を加えているという。
「堀井さん(堀井雄二氏)と密なやりとりをして、レベルが上がりやすいようにしてある。ドラクエは、かなりライトなゲームに仕上がった」
ちなみに、ファイナルファンタジーの方は「コアなファンがいる。難易度をいじるのはどうか」との判断からゲームバランスに手を加えなかった。もっとも、ユーザーが迷わずに済むよう、次に何をすべきかメッセージを加えるなどの修正はしたという。
容量の制限に苦しめられる
洞氏はまた、携帯アプリ開発特有の問題として、ハードウェア性能の制限にも苦しめられたと話す。
「描画が一番重く、カスタマイズしても速くならない。当初、ハードのスペック見積もりをもらっていたのだが、『全然違うじゃないか』ということもあった」
Javaのプラットフォームにも、不満がないとはいえなかったようだ。「アプリが止まった時に、ライブラリがバグっているのか、アプリに問題があるのか問題の切り分けができない。開発側としては、『ライブラリのせいだ』といって万一問題が自分の側にあったら……と考えるので、トラブルを抱え込んでしまって作業が進まない」。
ヒープメモリの制限との戦いも「長かった」(同氏)。さらに、苦労して仕上げても違う機種だと全然動かないなど、トラブルは続いたという。
「魂入れ」が必要――納期との戦い
こうした苦難を乗り越えて、「ようやくゲームがひととおり動くようになると、納期がギリギリ」(同氏)という状況だった。既に開発陣も疲弊しており、「もう早く終わらそうよ」という空気が流れ始める。
しかし、ここでもうひと頑張りして「最初は見えていなかったが、この部分をこうすればもっと良くなる」というプランナーのわがままを、どれだけ聞けるか。それでいてミスをせず、バグを出さないようにできるか。そこが、ゲームの仕上がりに非常に重要なのだという。
「これを、ゲームの『魂入れ』と呼んでいる。これ(改善のための最後の粘り)を、今回はメーカーともキャリアともやった」。すべてはユーザーのためと、キャリアやメーカーと熱い議論を交わしたという。
こうした苦労の甲斐もあって、ドラクエとFFのアプリは当初の予想以上のユーザーアクセスを集めた。予想を上回り過ぎたため、「サービスイン時にはサーバが落ちてしまったほど。ご迷惑をおかけしてしまった」。とはいえ、担当者が「次々と倒れた」(同氏)ほどの苦労は、一定の結果を出したといえるだろう。
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