携帯にテレビをつけてみませんか?〜1セグのビジネスモデル(1/3 ページ)
1セグテレビ放送の推進に積極的な日テレは、端末商品力の面で携帯は魅力的なパートナーだと話す。1セグ放送成功のために、テレビと携帯が相互にメリットを持つビジネスモデルとは──。
2005年度の放送開始が予定されている、モバイル機器向けの地上デジタル放送(1セグ放送)。各端末メーカーは、携帯電話への受像器の組み込みを積極的に始めており、試作機も多数展示されてきた(10月6日の記事参照)。
しかし、1セグ放送が受信できる携帯電話が登場するに当たり、不透明だったのは通信キャリアと放送局の対応だ。どのようなビジネスモデルを取れば、キャリア、放送局共にメリットのある関係となるのか。
10月21日、FDP Internationalのセミナーで、日本テレビ放送網のメディア戦略局メディア戦略部佐野徹氏が、1セグと携帯を組み合わせた“新しいビジネスモデル”について話した。
1セグテレビ放送を、携帯コンテンツへの誘導に使う
携帯への1セグテレビ機能内蔵に積極的なのは、実はテレビ局側だ。1セグ放送の受信機として携帯には多くの魅力がある。
そんな魅力的なパートナーを引きずり込むために佐野氏が考えたのは、2つを1つの機械に詰め込んだ時に、どうしたら相互にメリットのあるサービスが提供できるかだった。
佐野氏は、まず携帯とテレビの特性に注目した。
メディア | 同報性 | ユーザー側操作 | 属性・位置別差し替え | オンデマンド | 課金 | 情報量 |
---|---|---|---|---|---|---|
携帯 | × | 煩雑 | ○ | ○ | ○ | 無限 |
テレビ | ○ | 不要 | × | × | × | 限界あり |
テレビは“Push+Mass”メディア、携帯は“Pull+Personal”メディア。「2つのメディアの特性は、見事なまでに逆転する。互いの強い部分を組み合わせたサービスが、バリューチェーンを作り出す」と佐野氏は説く(9月29日の記事参照)。
例えば、野球中継のコンテンツで考えてみよう。まず携帯でテレビをつけると、3回の裏、試合中の野球が表示される。得点は3対1だ。画面下半分に表示される1セグのデータ放送画面を見ると、2回表にホームランがあったことが分かる。「ここで、データ放送の中にあるリンクボタンを押すと、(携帯の)通信が始まる。そして得点シーンのショート映像が流れる」(佐野氏)。
視聴料金が無料で、電源を入れるだけで見られるテレビは、メニューから選んでいかなくてはコンテンツにたどりつけない携帯とは違い、容易にユーザーに見てもらえる。ところが、過去の過ぎ去ったコンテンツを見直すことは難しい。そこで、携帯の通信機能を使ってオンデマンドで必要なコンテンツを提供する。
テレビ側にとっては、より詳細な情報を通信を通じて提供できるという利点があり、携帯側にはテレビをコンテンツへの誘導に使えるという利点がある。この双方にメリットのある“WIN-WINの関係”が、1セグ放送成功のカギだと佐野氏は見る。
「テレビの集客力と、放送のPush性によって、放送をトリガーにした新しい携帯サービスが提供可能になる」
テレビを内蔵したら、携帯が使われなくなる?
もちろん、このWIN-WINの関係に携帯キャリア側からの異論もあった。「これまで、電車の待ち時間などにiモードが使われていた。テレビを携帯につけることで(iモードが使われなくなり)収入が減ったら元も子もない。テレビ内蔵で端末コストが上がり、収益も下がるのではないか……というロジックは確かにあった」と佐野氏。
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