2007年は携帯用燃料電池 元年:携帯向け燃料電池 現状と課題(2/5 ページ)
携帯電話用燃料電池の開発に目処がついてきた。複数の開発者が、規制緩和と機器側の電力要求から、2007年を実用化のターゲットとする。国際燃料電池展のセミナーを元に、燃料電池の仕組みを振り返りながら、現状と課題を探る。
燃料電池の種類〜自動車から携帯まで
まずは燃料電池の現状のおさらいから。一言で燃料電池といっても、用途によって種類はさまざまだ。燃料電池の実用化が期待されている用途と、その目的をまとめると以下のようになる。
- 自動車用──クリーンエネルギー
- 家庭用(コジェネレーション)──省エネルギー、省資源
- 携帯機器用──長時間駆動
自動車や家庭用に固体高分子型(PEFC、PEM)などが使われるのに対し、携帯機器用の本命と目されているのが、燃料にメタノールを使うDMFC(Direct Methanol Fuel Cell)だ。
では、どうしてDMFCが注目されているのだろうか。
燃料としては、自動車向けなどに使われる水素の効率が最もいい。「水素を燃料に使うと、(1セル当たり)0.6〜0.7ボルト出る。エネルギー効率がいい」(2004年10月のWPC EXPOで講演した東芝バッテリーエナジー事業部開発部の長谷部裕之参事)
しかし、「水素は貯蔵が面倒。自動車ならボンベが使えるが、携帯機器では……」(長谷部氏)。そこで浮上してきたのがメタノールだ。理論上はメタノールでも1.2ボルトの電圧が出るが、現実には0.3〜0.4ボルトと水素を下回る。
それでも、容器を合わせた重量当たりのエネルギー密度で比べると、「(メタノールの濃度が)60%〜100%になると、水素よりはるかに大きなエネルギー密度になる」(長谷部氏)。
東芝研究開発センター先端機能材料ラボラトリーの五戸康広研究主幹が示したスライドより。容器に入った水素燃料と、メタノール燃料のエネルギー密度の比較。燃料単体で見れば効率がよく出力も大きい水素だが、貯蔵が難しいのが難点。「水素はいろいろなコンテナに入れなくてはならない。(メタノールはシンプルな容器でかまわないが)水で薄めていくとエネルギー密度が低くなる」(東芝の五戸氏)。それでも50%濃度のメタノールなら、体積比でも重量比でも水素よりエネルギー密度が大きいことが分かる
さらに、液体であるメタノールは下記のような特徴を持っている。
- 液体燃料はセルと分離可能。機器の隙間に収納可能
- 燃料注入により瞬時に使用可能
“長時間駆動”であると共に、常温で液体のメタノールは、こうした理由で携帯機器向けに期待されている。
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