BluetoothがUWBに歩み寄る理由
Bluetooth SIGがゴールデンウィーク中に発表した“UWBとの統合”について説明した。内容は、UWB技術を開発する企業と協力し、将来的に単一のPAN用高速無線を提供するというもの。しかし、現状では大きな課題が残されている。
Bluetooth Special Interest Group(SIG)は5月26日、報道関係者を集めてBluetoothの現状とロードマップを説明した。この中で、アジア太平洋・日本担当マーケティングディレクターのエリック・シュナイダー氏は、ゴールデンウィーク中に発表したUWB(Ultra Wide Band)との統合に触れ、早ければ1年以内に技術的な骨子が固まり、数年のうちに対応製品が登場する可能性を示した。
Bluetooth SIGが5月4日に発表した内容は、UWB技術を開発するUWB ForumおよびWiMedia Alliance(WiMAXの推進団体)と協力し、将来的に単一の標準規格へ収斂させようというものだ。PCや家電といった枠を超えて機器がつながり、PAN(Personal Area Network)における大容量ビデオデータの高速転送など新しいアプリケーションの開発に取り組むという。
詳細は今後詰める予定だが、シュナイダー氏はこの提案が双方に大きなメリットをもたらすと話している。「UWBには、無線規格はあっても上位(レイヤー)の部分がまだない。Bluetoothが持つさまざまなプロファイルやアプリケーションを使うことで、製品開発のスピードを大幅にアップできるだろう。しかも、UWB推進企業は既に認知度の高いBluetoothロゴを入れて製品を販売できる。一方のBluetoothは、480Mbps以上の高速転送ソリューションを手に入れる」(シュナイダー氏)
同氏が示したアーキテクチャー図には、物理層こそUWBとBluetoothが並んでいるが、UWB MACの上には「Convergence」(収斂)と書かれていた。シュナイダー氏は、「あくまで私見」と断った上で、「初期段階はそれぞれの(規格の)無線を使い、上位にBluetoothのプロファイルなどを載せるのではないか。完全に統合されるのは、第2世代だろう」と話している。
「まだ課題は残っているが、最も早いタイミングなら、1年以内に統合できると思う。それから18〜24カ月後には対応製品が出るだろう」。同氏が指摘する“課題”は3つ。まず、現状でUWBの使用が認可されているのは米国だけということ。2つめは、パルス技術を使うUWBが混在したとき、どのような無線障害が発生するか未知数ということ。そして3つ目は、ある意味、最も高い障壁になりそうだ。
「まず、UWB ForumとWiMedia Allianceの間で、UWBを1つにまとめてもらわなければならない」。
WiMedia Allianceに参画しているのは、Microsoft、Intel、Texas Instruments、Hewlett-Packard、Nokia、Alereon、ソニーなど。一方のUWB Forumは、Freescale Semiconductor、Motorolaなどから構成される。両陣営とも既に対応チップを開発済みで、UWBの標準化を巡っては妥協点を見つけるのは難しい状態だ(関連記事)。
一方、Bluetooth SIGには、IntelやMotorolaといった両陣営の中心的な企業も参加している。このためシュナイダー氏は「Bluetooth SIGは、あくまで中立」としているが、逆にいえば2つの陣営に歩み寄る“きっかけ”を与えているのかもしれない。
「UWBが実現する高速な機器間接続は重要なアプリケーション。そして消費者には、相互接続性を確保するためのシングルソリューションが必要だ。遅れたら遅れただけ、ダメージが増すことになる」(シュナイダー氏)
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