切手大のエリアに技術陣の汗と涙──ワンセグ携帯「905SH」開発の舞台裏(2/2 ページ)
一見すると普通の折りたたみ携帯が、液晶部を90度回転させると左右対称な横長画面の携帯になる──。日本初のサイクロイド型携帯「905SH」には、いたるところにデザインのこだわりが宿っている。
舞台裏がぎりぎりのところまで迫っている──サイクロイド型ボディ
905SHが採用したサイクロイド型携帯は、物理などの用語であるサイクロイドに由来していると大木氏。「サイクロイドとは、タイヤのような円状のものが地面を転がるときに、任意の円周上の1点がたどる軌跡のこと。905SHは、中心となる背面の1つの角が一直線上で動き、ほかの3つの角がカーブを描いて動く仕組み」
回転部分の機構は、背面のボーダフォンロゴあたりの小さなエリアに集約されており、「回転中のどの瞬間においてもどこから見ても、絶対に機構部分が見えないようにしている」のが苦労した点だという。
「背面にデザインと機構的な特徴をアピールするための穴を開けているため、ただでさえ小さな舞台裏(隠すべき機構部分)がさらに小さくなってしまった。実際、この四角いエリアのほんのぎりぎりまでメカニックの構成が迫っている。回転の軌跡の限られた範囲に可動部を入れ込むのは本当に大変で、ここには技術陣の汗と涙のドラマが詰まっている」(大木氏)
905SHは、一見普通の折りたたみ携帯に見える機構設計のため、液晶部分が回転することをデザインで分かってもらう必要があったと大木氏は振り返る。そのために取り入れたのが、シルバーの“C型ライン”だ。端末を側面から見ると、Cの字のように見えることからこう呼ばれているという。
「閉じたときに、回転機構があることが伝わるようにと取り入れた。これがあると“次にこう開いて、何かある”という期待感を感じてもらえる。デザインが機能を伝える役割を担っている」(大木氏)
高級アクセサリーをイメージした素材の質感とデザイン
機構部分だけでなく、素材感やデザインにもこだわっている。イメージしたのは高級アクセサリー。カラーリングされた背面部分は布地の折り目の不均一さを表現しており、ラインの太さや幅が異なっている。ホワイトには、虹色に色相が変わる偏光パール塗装が施され、不均一なラインと相まって、見る角度により緑がかったブルーやピンクに見えるという。
長方形にくりぬかれた背面の金属調の部分は、ベルトのバックルをイメージしている。「ここをくりぬくと、液晶を回転させたときに角が通過するのが分かると同時に、回転することのインパクトを伝えられる」
905SHには、見た目の静かな佇まいからは想像がつかないくらい多くの技術的チャレンジが詰め込まれている。「テクノロジーを感じさせないところにテクノロジーを感していただけたらと思っている」(大木氏)
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