FMCは脅威かチャンスか――迷えるVodafoneのFMC戦略とは :英Vodafoneの現状と今後(3): (2/2 ページ)
世界に先駆けてFMCの波が押し寄せる欧州で、固定サービスを持たない英Vodafoneは戦略の見直しを迫られている。
VodafoneのFMC戦略とは?
現在、Vodafoneがモバイル以外の事業として、一部の市場で展開しているサービスが「ホームゾーン」だ。これは、独O2がドイツ国内で提供したFMCサービスのヒットを受けたもので、W-CDMAベースでPCをインターネットに接続するサービスを通常のブロードバンドサービスとセットにしている(専用のモデムボックスを利用)。ホームゾーン内で発信する通話の割引サービス、ホームゾーンにおける固定電話番号の付与(相手が固定電話料金で電話をかけられる)など、サービスを拡充している。このサービスは、ドイツ(サービス名は「Vodafone Zuhause」)に次ぎ、イタリアでも(「Vodafone Casa」)開始したところだ。だが、これはDSLを利用したトリプルプレイなどと比べると魅力に欠ける。同社では、たまにインターネットを家でも利用したいという、固定電話を持たない若者ユーザーをターゲットとしている。
FMCをVodafoneの課題の1つに挙げたOvumのデラニー氏は、「ブロードバンド市場については、(Vodafoneは)回線を自社で所有(=ISPを買収)するよりも、リセラーとして参入すると思われる。だが総じて、FMCに対する明確な戦略はなにも明らかになっていない。これは長期的な課題だ」と述べている。
7月25日の株主総会でもFMCに関する戦略が争点の1つとなったようだが、前日発表した報道資料では、Mobile Plusの事業として、「音声とブロードバンドに対する顧客のニーズは高まっており、当初、家庭・オフィス向けにサービスを拡充していく。これにはDSLも含まれる」と書いてある。さらには、あくまで「モバイル中心のアプローチ」で行う、と続いているところから、完全に体質を変えきれないVodafoneの姿が見え隠れする。
一部では、Vodafoneは今年中にDSLサービスのバンドルを開始するという報道もあるようだが、同社が発表している資料によれば、5月末の戦略発表時からFMC分野での大きな変化や進化はまだなさそうだ。
通信業界に起きている新しいトレンドは、FMCだけではない。FMCとも関連する、無線LAN、将来的にはWiMAXの発展は、3Gで巨額のライセンス料を払った携帯電話オペレーターにとって、これまでの投資を無駄にしかねない脅威ともなりうる動きだ。これらの“競合”技術を敵につけるか、味方につけるか。オペレーター各社の戦略と判断が、今後の通信業界の勢力図を塗り替えることになりそうだ。
問題はVodafoneだけではなく、通信業界の構造によるもの
ここまで、この連載ではVodafoneを3つのポイントから見てきた。しかし同社が現在置かれている状況に対する見解はさまざまで、決してネガティブなものだけではない。前述のデラニー氏は、Vodafoneのパフォーマンスを「マンモス企業であること、成熟市場で展開していることを考慮すると、むしろ評価すべき」と見る。
それでもやはり、Vodafoneが抱える課題が多岐にわたっていることは事実だ。だがこれは、通信業界全体に起きている変化と呼応するものであり、Vodafoneだけの問題ではない。巨艦Vodafoneは今後うまく舵を取っていけるのか? 今後の動きに注目していきたい。
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