“おもちゃ”ではなく“アメ”で勝負――イー・モバイル千本CEO:CEATEC JAPAN 2006
来春、携帯事業を開始するイー・アクセスの千本倖生氏が、CEATEC JAPAN 2006の基調講演で、新規参入の目的に言及。高い通信料の引き下げだけでなく、日本にオープンで高い競争力をもたらすためという考えを示した。
イー・アクセスの代表取締役会長 兼 CEOの千本倖生氏が、CEATEC JAPAN 2006で基調講演を行った。同氏が代表取締役会長兼CEOを務めるイー・モバイルは、2007年3月からデータ通信サービスを、2008年3月から音声通話サービスを開始する予定だ。
「手の内はまだ明かしません。会場に敵方に通じてる人がいるかもしれないし(笑)」と、端末は従来のコンセプトモデル(2005年12月7日の記事参照)のみを紹介するにとどめ、現在の携帯電話事業の問題点と新規参入の意気込みを語った。
これが最後のビジネス、最後の挑戦。
「(イー・モバイルは)私が60歳を過ぎて立ち上げた6つ目の会社。おそらく人生最後のビジネスになるだろう。日本の通信市場で行う最後のチャレンジだ」
千本氏は最初に、自身のキャリアが日本の通信市場への新規参入の歴史であり、価格引き下げなどの変革をもたらしてきたことを紹介。同氏はDDIの設立により市外電話料金を引き下げ、イー・アクセスのADSLホールセール販売でブロードバンドを普及させてきた。千本氏は「どれも既存業者によって“異常”ともいえるコストで提供されていたサービスを、新規参入により価格是正を行ってきた」と話す。
そして現在、“異常”に高価な通信サービスとなっているのが携帯市場であり、ここに新規参入し変革を起こすと明言。「FTTH・ADSL・CATVなど、ブロードバンド市場規模は8000億円で、参入している会社の数は約300社。一方の携帯事業は8兆8000億円の市場規模で、利用者は9350万人であるのに、事業者はわずかに3つという寡占状態。ユーザーが損をしている状態を是正したい」と述べた。
おもちゃの議論はもうやめよう
千本氏は講演の中で、「日本で携帯の話題といえば、おサイフケータイだ着メロだと、グリコでいえばおまけのおもちゃの話題ばかりになっている。アメを取り上げずにおもちゃの話だけで、日本の携帯は世界一だ、コンテンツは世界一だと論じても意味がない。おもちゃの議論はもうやめよう」と、本質的な価値ではなく、付加価値を重視する日本の携帯サービスを批判した。
同氏は、主要国の中で、日本のARPU(ユーザーあたりの月間電気通信事業収入)が世界一高いにもかかわらず、MOU(ユーザー毎の月間利用時間)は最低で、通話料金の高さが利用・通話時間の短さにつながっていると指摘。コアサービスであるべき通話サービスが、世界からみて劣っている実例とした。
また、世界的に見て携帯事業が爆発的に大きくなっている点に触れ、「中国やインドではNTTドコモ1社に匹敵する規模でユーザーが増えている。台湾のCompalは、日本のメーカーが生産するすべての端末よりも多い携帯を生産し、韓Samsungの携帯事業は黒字で米Motorolaの利益率は30%だという。では、日本のメーカーはどうかというと、残念ながらみんな赤字。かろうじてシャープが黒字になっているくらいで、世界シェアは数%のレベル。メーカーは、国内キャリアが打ち出す新サービスに応えるため、国内だけの高機能な携帯開発を余儀なくされている。これでは、世界に打って出られるわけがない」と、国内メーカーが世界的な携帯ビジネスに乗り切れていない実情を説明した。
イー・モバイル参入で、オープンな環境に
こうした問題は構造的なものであるとし、「日本の携帯市場が、参入するにも撤退するにも中途半端な大きさであることも事実。しかし、それ以上に閉鎖的な環境であることが問題だ。だれも入ってこれないし、だれも出て行けない。今、オープンにして国際競争力をつけないと、日本(の携帯事業)は終わり。全世界の10分の1、100分の1のレベルで足の引っ張り合いをしている場合ではない」と語った。
さらに、規模だけなく技術的な面に関しても、同社が基地局施設のネットワークサプライヤーに採用した中国Huaweiの例を挙げ、「基地局を導入する際、いろいろなメーカーを見て話を聞いた。プライマリーベンダーとしてスウェーデンのEricssonを選び、セカンダリーベンダーとしてHuaweiを使うことにした。中国のメーカーということで、皆さんがどう思われるか分からないが、あなどってはいけない。もう製造コストが低いだけの“世界の工場”ではない。HuaweiはいずれSamsungを越え、Motorolaやlucentを超える技術力を持つだろう。オープンな技術に注目し、優秀な人材を集積しないと日本は飲み込まれる」とし、「イー・モバイルの参入で、オープンでグローバルなビジネスを携帯市場に持ち込み、携帯メーカーに真の国際競争力をもたらせたい」との展望を示した。
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