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インタビュー

“あのヒンジ”に込めた思い──「W44S」はなぜあのようなデザインなのか開発陣に聞く「W44S」(デザイン編)(2/3 ページ)

ワンセグ+デジタルラジオ+3インチ液晶──auのハイエンド端末として秋冬モデルの12機種とは別に発表されたソニー・エリクソン・モバイル製「W44S」。発表も特別なら、機能やデザインも特別。“あのヒンジ”とデザインにどのような意味が込められているのだろうか。

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 形状や搭載位置に関して賛否両論があるこのヒンジ。では、デザイン担当の平野氏はどのような意図でW44Sのデザインを仕上げたのか。

 「ヒンジをデザインにおけるワンアクセントとして“あえて”際だたせました。ヒンジの部分を指で隠して本体だけを見ると、かなりシンプルでプレーンな形状です。これも狙いです。ここにワンアクセントを加えることで、どれだけAVとしての存在感が出せるか、理にかなった形になるか。それをなるべく抽出できるようなトータルデザインを目指しました」

 ヒンジの位置を変更したことで「長い・大きい」と感じさせない効果も生まれた。W44Sは、携帯用液晶としては最大級となる3インチのワイドディスプレイを搭載する。アスペクト比16:9の縦に長い液晶であるが、従来の折りたたみ型ヒンジの設置に必要な数ミリ分が移設されたことにより、さほど「長い」と感じさせない。ちなみに2.7インチワイド液晶搭載のW43Sが103ミリ(折りたたみ時の長さ)であるのに対し、W44Sはそれより2ミリ短い101ミリ(同)となっている。

 なぜあそこだけ出っ張っているのか、ポケットに入れにくそう、どこかに引っかかりそう、折れそう……確かにW44Sに対して交わされる話題の多くはヒンジだった。もちろんデザイン担当としては想定の範囲内。あえてそこに目がいくようデザインされているのだから当然だ。そう思うと悔しくもあるが、いっそうこの“ヒンジ”が気になって来ようものである。

photophoto 裏面の段差により、机上に置くと“浮かんでいる”ように見せる演出がある(左)。ソフトキーは横位置での操作も想定し、円形に配置した(右)

 そのほか、裏面に設けた段差やモバイルシアタースタイルでも操作しやすいよう工夫したソフトキー、キーパット部の上下に配置するステレオスピーカーなども“融合”の概念から誕生している。

 本体の裏面は平坦ではなく、外周に沿って数ミリの段差がある。この段差は端末をスリムに見せる効果(W44Sの厚さは24ミリ。数値としてはやや大きい)があるほか、机上に置いた際に“浮かんでいる”かのように演出する狙いも込められている。

 円形の十字キーに沿って配置する5つのソフトキー(アドレス帳、メール、クリア、EZweb、アプリ)は、縦/横どちらの操作時でも自然に親指が届く位置にあるよう工夫した。

 直径16ミリとなる、携帯用としては大型の内蔵スピーカーはダイヤルキーの上下に前向きで配置する。内蔵スピーカーを裏面に配置しないことや、左右のスピーカーがより離れていることも含めて、モバイルシアタースタイルで効果的にステレオ音声出力を楽しめるようになっている。

 これらからも“モバイルシアタースタイルの概念”がユーザーの使用スタイルを想定した工夫を盛り込んだことが伺える。

試行錯誤を繰り返した“ヒンジ”

 あえて目に付くよう、巧みに演出された「ヒンジ」。この強烈な存在感を放つパーツはどのようなものなのだろうか。

photophotophoto

 「部品は新たにW44S専用に開発しました。2つの回転軸を持つ逆L字棒状のフレームで液晶を片支持させる仕組みとなっています」(設計担当 金田氏)

 携帯を縦位置で構えた場合、Y軸回転が“ケータイスタイル”、X軸回転が“モバイルシアタースタイル”となる。

 内部はガラス繊維で強化したABS樹脂とある合金(亜鉛かマグネシウムの合金かと予想されるが、詳細は秘密とのこと)、2種類の素材を組み合わせてできている。金属は強度に優れるが電波を通しにくく、重量もかさむ。一方の樹脂はその逆で強度が劣る。もちろん携帯用のヒンジとして強度の確保はもちろん、カチッと止まる感触や適度な抵抗感、全閉/全開以外の角度(卓上ホルダ装着時に正面となる角度など)で保持できるような工夫も必要だ。

 「強度を心配する人もかなり多いと思います。今回のヒンジ開発にあたっては通常のクラムシェル(折りたたみ)型のそれと比べ、約2倍の時間をかけて評価・検証を実施しました。実際の使用シーンを想定しながら評価・検証を繰り返し行い、この形状が完成しました」(金田氏)

 「ヒンジの形状は、アンテナ感度にも影響します。どの部分を樹脂素材にし、どの割合で金属素材を使うか。強度は満たせたがアンテナ感度が落ちる、樹脂素材の割合を増やしアンテナ感度は満たしたが、今度は強度が保てない。定めた強度やアンテナ感度を満たしつつ、最も小さく、軽量になるのはどのパターンか、試行錯誤の連続でした。段階段階で毎回、形状や素材の変更がありましたね」(同上)

 このヒンジには、主要機能の1つである[TV]キー(au Media Tunerの起動やワンセグ/デジタルラジオ/EZチャンネルプラス再生機能の切り替えが行える)を備えた。縦でも横でも親指が自然に届き、そして閉じていても操作可能な位置にある。

photophoto ヒンジの[TV]キーでau Media Tunerが起動する。このキーは縦/横どちらで操作していても指が自然に届く位置にある(左)。ストラップホールはヒンジ上面に備わる。好みのストラップも、このヒンジを軸に視線が移ることでより際だつというにくい演出だ

 そのほか、EZ FeliCa用の確認LEDとストラップホールもここに設けてある。ユーザーが好みで取り付ける携帯ストラップもアクセサリーの1部として演出できるよう、あえてポイントとなるこの部分に集約させたのだという。

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