PCから携帯、そしてゲーム機へ──ブラウザ競争に自信を見せるOpera:3GSM World Congress 2007
PCサイトを携帯で閲覧する──。こうした利用が日本だけでなく、世界的にも広がりつつある。携帯向けブラウザでさきがけたOperaに、携帯ブラウザの動向とOperaブラウザの強みについて聞いた。
携帯電話からインターネットにアクセスする時代が世界的に現実のものになりつつある。そこで重要となるのがブラウザだ。ノルウェーのOpera Softwareはいち早くモバイル市場に参入し、多くの端末メーカーが同社のPCサイトブラウザを採用している(記事1、記事2参照)。提供先はさらに広がりを見せ、2006年末には任天堂のコンシューマーゲーム機「Wii」向けにも提供を開始した(12月22日の記事参照)。
Opera Softwareの共同設立者兼CEO、ヨン・フォン・テッツナー氏に同社の歴史と今後のブラウザ戦略について聞いた。
ITmedia Opera設立の経緯と現在の事業について教えてください。
テッツナー氏 われわれは1992年、ノルウェーの電話会社TelenorのラボでWebを知りました。そして、ノルウェーで第1台目となるWebサーバを立ち上げました。このWebサーバは、世界でも最初の100台に入ります。そしてWeb技術の開発を進めました。
ブラウザの開発をはじめたのは1994年。理由は自分たちならできると思ったからです。しかも、ほかよりいいブラウザを作れる自信がありました。ブラウザ開発は、研究所内でも賛否が分かれました。反対派は、“ノルウェーでソフトウェアが作れるわけがない”と主張しましたが、私は“できる”と信じていました。
当時、ブラウザといえば「Mosaic」で、われわれも研究所内でMosaicを使っていました。Mosaicがバージョンアップしたとき、プリンタ機能のニーズがあったのですが実現しませんでした。そこでわれわれがやってみようと決断し、半年でプロトタイプを作りました。OperaでCTOを務めるHakon Wium Lieなどは、当時反対派でした。彼はWorld Wide Web Consortium(W3C)、Cascading Style Sheets(CSS)の標準化などにかかわってきた人物で、このプロトタイプを見て開発チームに加わりました。
しかし、Telenorではこれに興味を示す人がいなかったのです。そこで、私とGeir Ivarsoeyで7000ドルを持ち寄り、Opera Softwareを設立しました。
ITmedia モバイル市場に参入したのはいつですか?
テッツナー氏 最初はデスクトップにフォーカスしていましたが、ユーザーからは“ほかのOS向けにも作らないか”という声があがっていました。そこで作成したのがEPOC向けブラウザです。EPOCはご存知の通り、現在のSymbian OSの原型で、これにより必然的にモバイル市場に入ることになったわけです。それが1998年のことで、2001年に最初の携帯電話「Nokia 9210」がリリースされました。
ITmedia 世界的に、携帯電話でPCサイトを閲覧する傾向が増えつつありますが、こうしたモバイル市場の推移をどのように見ていますか?
テッツナー氏 われわれは「インターネットは1つ」という原理を大切にしています。これまで、デスクトップからアクセスしていたのが、インターネット上の同じ情報に携帯端末やさまざまな端末からアクセスするようになってきたということです。
そこで起こっているトレンドが、フルインターネット、つまりフルブラウザです。同時にWeb 2.0、Webアプリケーション、Widgetなどに関心が集まっています。われわれが以前から取り組んできたことですが、やっと注目されはじめました。
Operaではフルブラウザ「Opera 9 Mobile」を提供していますし、昨年よりローエンド向けの「Opera Mini」も提供しています。Miniはリリースから1年で、1100万ダウンロードを記録しました。Operaはモバイルインターネットの動きを加速しています。
ITmedia NokiaはOperaのブラウザを搭載していましたが、現在では自社でもブラウザを持っています。現在、Nokiaとの関係は? モバイルでもブラウザ競争がはじまっているのでしょうか?
テッツナー氏 Nokiaとはパートナーでもあり、競合でもあります。複雑な関係ですが、われわれはMicrosoftともWindowsで同じような関係ですし、このような状況には慣れています。事業をスタートしたばかりの頃、NetscapeとInternet Explorerが競争していました。ブラウザ市場は常に厳しい環境にあるのかもしれません。しかし同時に市場全体が拡大しています。Nokiaが自社のブラウザの開発を進めているのは、モバイルにおけるブラウザ市場が拡大し、重要性が高まっているということの表れでもあります。
その一方で、市場を見ると、フルブラウザ技術を提供できるところは少ないのが事実です。実際、携帯電話、セットトップボックス、ゲーム機、デスクトップにブラウザを提供できるのはOperaだけです。Opera向けにWebアプリケーションを書けば、これらのさまざまな端末で動きます。これはわれわれの強みといえるでしょう。Operaを搭載する端末メーカーは、Nokiaだけではなく、Motorola、Sony Ericsson、ASUS、HTC、東芝、Samsungと増えています。興味深い事実として、今年の3GSMで最新のWindows Mobile端末が発表されましたが、その多くがOperaを搭載しています。
100%のシェアをとることは不可能ですし、市場もMicrosoftのようになることを好まないでしょう。競争は必要です。
ITmedia Operaの強みは何でしょう?
テッツナー氏 われわれはブラウザのみにフォーカスしており、必然的にエンドユーザーのみにフォーカスしています。常に新しいこと、新しい方法を提供しています。タブブラウザ、スモールスクリーンレンダリングなどがよい例です。スモールスクリーンレンダリングは再フォーマット技術で、ユーザーはモバイルでブラウザを利用するのにこの方法を好んでいるようです。
モバイル以外では、任天堂のWiiが新しいデスクトップモードとして「インターネットチャンネル」を開発しました。ズーム機能など今後Operaブラウザに取り入れたい機能があります。任天堂との仕事は非常に楽しいものでした。任天堂はすばらしい企業で、ハードウェアだけにフォーカスするのではなくインタフェースを重視しています。
ITmedia 日本ではフルブラウザがトレンドです。フルブラウザの動きは世界的なものになるのでしょうか?
テッツナー氏 そう思います。欧州では、T-MobileとTelefonicaがOperaとOpera Miniをプリインストールし、サービスとしてプッシュしています。
ITmedia 携帯電話からのインターネットアクセスは、PCのそれと何か違いがあるのでしょうか?
テッツナー氏 それぞれにメリット・デメリットがあると思います。携帯電話は確かに画面が小さいですが、多くの携帯電話にはカメラがついています。写真を撮ってすぐにブログにアップロードすることができます。実際、われわれはこれを容易にするサービスを提供しています。また、どこからでもインターネットにアクセスできるというのは、携帯電話の大きな強みでしょう。
携帯電話の場合は通信コストが障害といえますが、Opera Miniはデータを圧縮することでこの問題を緩和します。
ITmedia 日本市場をどのように見ていますか?
テッツナー氏 日本市場は重要で、日本法人はノルウェー本社、スウェーデンに次ぐ規模です。
現在、KDDIがauの3GサービスでOperaを採用していますし、ウィルコムからもOperaを搭載した機種が出ています。さきの任天堂もあります。
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