WiMAXに4G、次世代ネットワークの行方は──ネットベンダー大手4社のCEOが見通す近未来:3GSM World Congress 2007
3GSMのトークセッションで一堂に会した大手ネットベンダー4社のCEO。携帯ブロードバンド化の波が押し寄せる中、それぞれが今後のネットワークインフラの見通しについて話した。
この1年、ネットワークインフラ業界にはさまざまな動きが見られた。米Lucentと仏Alcatelという米国と欧州の大手同士の合併や、独SiemensとフィンランドNokiaのネットワーク事業部の合併など、大規模な再編の波が押し寄せている。こうした傾向は今後も続くのか、無線/固定ネットワークの世界で何が起こっているのか──。3GSMの最終日、Alcatel-Lucent、Nokia Siemens Networks、Nortel Networks、NECの世界大手ネットワークベンダー4社のCEOがトークセッションで一堂に会し、次世代ネットワークの今後について意見を述べた。
左からNEC社長の矢野薫氏、Lucent-AlcatelのCEO、パトリシア・ルッソ氏、Nortel NetworksのCEO、マイク・ザフィロフスキー氏、Nokia Siemens NetworksのCEO、サイモン・ベレスフォード−ウィリー氏
今年3月までに発足予定のNokia Siemens NetworksでCEOへの就任が内定しているサイモン・ベレスフォード−ウィリー氏は、業界のトレンドとして、(1)加入者の増加(2)ネットワークのブロードバンド化(3)インターネットへのアクセス増(4)MVNOの参入、インターネット企業によるオペレータの競争激化 の4つを挙げた。
同氏によると、2015年には世界の人口70%にあたる50億人がインターネットにアクセスすると見込まれ、新たな加入者の多くは新興市場からになると説明。市場のセグメントがこれまでとは異なることから、業界は大きな変化の時期を迎えるという。ネットワークインフラ企業も「この変化に応じて転身していかなければならない」とベレスフォード−ウィリー氏は強調する。
ベレスフォード−ウィリー氏は、ネットワークベンダーから見た今後の変化の一例としてWiMAXを挙げる。理由は新興市場にインターネットアクセスを提供するにあたって、有力な手段と見込まれているからだ(2月15日の記事参照)。WiMAXの強化は、3GやHSPAを推進しようとするモバイル業界への裏切りではなく、ポートフォリオの拡大だと同氏は説明する(2006年12月の記事参照)。
先進国では、3GからHSDPAへのアップグレードがトレンドになりつつある。2006年には約100のHSDPAサービスが開始され、無線ネットワークインフラ最大手のEricssonは、「2006年はHSPAのブレイクスルーの年」と述べている。
そして早くも4Gへの期待もかいま見られた。3G資産をAlcatel-Lucentに売却したNortelのマイク・ザフィロフスキーCEOは、「3Gでは不十分。モバイルブロードバンドとはいえない」とし、真のモバイルブロードバンドを実現するのは4Gだと説明。「WiMAX、LTEが真のブロードバンド機能を提供する」(ザフィロフスキー氏)という見方を示した。3Gについては、先のベレスフォード−ウィリー氏も同じ意見で、「エンドユーザーとオペレータの期待に沿っていない」と述べたが、ベレスフォード−ウィリー氏は同時に、3G/HSPAの実装が進んでいる中、オペレータ側は4Gについて考える余裕がない点も指摘した。
Alcatel-LucentのCEO、パトリシア・ルッソ氏は「業界は十字路にある」と話す。その背景あるのは、通信やインターネット、ブロードキャストの3分野が交わりつつあり、エンドユーザーはこれまで以上にパーソナライズされ、かつシンプルなサービスを望んでいるという現状だ。
一方で、オペレーター側は投資の回収やビジネスモデルの確立という課題を抱えている。「Googleなどのインターネット企業は、“どうやって収益を得るのか”というパターンを確立している」(2006年10月の記事参照)とルッソ氏は指摘。今後はこうしたインターネット企業もモバイル業界のプレーヤーとして参入し始め、彼らとの競争も控えている。ルッソ氏が、「勝者となるのはパーソナライズされたサービス、質の高いユーザー経験を提供できる企業」とするように、ビジネスモデルの確立は付加価値を提供するのと同じぐらい重要で、モバイル業界の課題といえそうだ。
インターネットへのアクセスで、モバイルが固定を上回ったモバイルブロードバンド先進国の日本を代表するNECの矢野薫社長は、新しいニーズとして“シームレスな接続”を挙げる。シームレスな接続とは、端末や場所を問わずに“いつでもどこでもインターネットにアクセスできる状態”を指す。こうしたサービスでは、サービスがパーソナル化されることから、ネットワークの信頼性やセキュリティが重要になる。
NECの矢野氏は同社のソリューションとして、NGN(次世代ネットワーク)を紹介しながら固定とモバイル、通信とITの専門知識が競争力となると話す。また、日本や韓国などのアジアのトレンドは世界共通の傾向であり、同社の技術が世界的に求められているものであることもアピールした。
これまでW-CDMAやCDMA2000など複数の規格が存在してきたモバイル業界だが、今後もこの傾向は続くのだろうか。4Gの標準については、Nortelのザフィロフスキー氏がWiMAXに肩入れするのに対し、Nokia-Siemensのベレスフォード−ウィリー氏は、GSM/W-CDMAのインストールベースから、LTE(2月12日の記事参照)が有力であるとの見方を示したが、2007年に明らかになると予想される中国の3G動向やWiMAXなど、さまざまなネットワーク規格を幅広く注視しているとも付け加えた。Lucent-Alcatelのルッソ氏は、「ヘテロジニアス性を受け入れなければならない」と述べ「まだ時期尚早」と述べるに留めた。
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