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携帯キャリアが口にしない“不都合な真実”とは――ウィルコム近義起副社長WILLCOM FORUM & EXPO 2007(1/2 ページ)

ウィルコム副社長の近義起氏がWILLCOM FORUM & EXPO 2007の特別講演において、次世代PHSのロードマップを披露。さらに、携帯キャリアの“不都合な真実”を明かし、ウィルコムの優位性を述べた。

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ウィルコム 執行役員 副社長 近義起氏

 近氏は講演冒頭で、PHSの生い立ちを“おさらい”として紹介。1980年代後半に研究が始まった現在のPHSは、そのころ予想されていた携帯電話網の逼迫を回避し、固定電話と無線電話を融合した通信手段を実現を目指すために開発が進められた。

 「言うなれば、公衆回線と自営回線の垣根をなくすFMCの先駆け。当時普及が始まっていたコードレス電話の特徴を生かすことで、携帯電話とは違う移動体通信が実現した」(近氏)

 こうした取り組みは欧州や米国でも行われていたが、通信事業として成立させたのは日本だった。しかし、その姿は研究段階のものとは様変わりしている。近氏は、「PHSを巡る環境は当時から大きく変わった。いずれ逼迫すると考えられていた携帯網は、2G化・3G化や周波数再編で効率的に使うようになった。PHSがスタートしたころにあった第1世代の携帯電話は日本にはもう存在せず、主流は3Gで2Gがなくなるのも時間の問題」と携帯網の問題点を指摘。しかしPHSでは、研究段階の「PHSの志」が現在も生きており、これから発揮されるだろうと続けた。

 「今では4Gや5Gの話題も多くなってきた。その次世代ケータイでポイントになるのが、回線容量とFMC的な使い方。これは、PHS研究が始まったときと同じテーマで、PHSの“素性の良さ”を物語っている」(近氏)

ウィルコムの財産は「エリアとネットワーク」

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ウィルコムの発表会ではおなじみとなったマイクロセルネットワーク。周波数を効率的に使えるスマートアンテナ技術や、常に最適な通信チャンネルを割り当てるDCA(ダイナミック・チャンネル・アサイン)方式の基地局も採用している

 近氏は、ウィルコムの一番の財産はエリアとネットワークと話す。同社のサービスエリアは現在、人口カバー率が99.3%で、マイクロセル基地局は全国で16万局に及ぶ。これだけの基地局を設置できたのは、PHSがコードレス電話の特性を生かした技術だからだという。

 「PHSの基地局はいわば親機。コードレス電話の親機はどこに置いてもいいように作られているが、携帯電話の基地局はそうはいかず、緻密なセル設計が必須。たとえ用地を確保して置局しても、干渉対策などが必要になってくる。そのため、理想的な六角形のセルを作ることが難しく、克服するためには周波数再編が必要だ」(近氏)

 さらにウィルコムは、周波数を効率的に使えるスマートアンテナ技術を携帯キャリアに先駆けて導入している。基地局単体でカバーする範囲は狭いが、自由に置局できるPHS技術により、携帯キャリアでは考えられない緻密なマイクロセルネットワークが生まれた。

 さらにこの緻密なネットワークは、利用者が増えても速度が落ちないという利点がある。目に見えるカタログスペックでは劣るが、使ってみないと気がつかない回線容量の大きさではウィルコムが優位だという。

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PHSと3G(W-CDMA)の比較

 「“PHSは遅い”という方に、道と車の関係を使って説明することがある。確かに3G携帯のカタログスペックは速いが、それはF1カーを1車線の道で走るようなもの。基地局を使う端末が少なければ速いが、端末数が増えるととたんに速度が落ちる。いくらF1カーでも渋滞する1車線では速くは走れない。我々のPHSは、F1ではなく普通の乗用車のスピードだが、何車線もあるイメージ。車(端末)が増えても渋滞が起こらず、結果として速い」(近氏)

 このように有利な点が多いマイクロセルネットワークだが、課題がなかったわけではない。それは、エリア拡大に長い時間がかかった点だ。「99.3%」という人口カバー率は1995年の開業から12年かかった数値で、“エリアが狭い”というネガティブイメージは、サービス開始当初から残っている。現実に、ルーラルエリアでは圏外になることも多い。

 W-OAMやW-OAM type Gの登場など、PHSの高度化は少しづつだが進んでおり、近氏は高度化の課題を「マクロセル化」「モビリティ向上」「コスト低減」「高速化」にまとめた。

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