「脱“もっさり”宣言」――攻めのNECが「N904i」で目指すものとは:「N904i」開発陣インタビュー(1/2 ページ)
NEC製のHSDPA端末「N904i」は、これまでの同社製品とは一線を画す存在だ。著名な海外デザイナーを起用し、見た目だけでなくコンセプトも変化している。NECの中で何が変わったのか開発担当者に聞いた。
左から、NECモバイルターミナル事業部クリエイティブスタジオクリエイティブディレクター 佐藤敏明氏、NECモバイルターミナル事業部商品企画部主任 田丸伸一氏、NECモバイルターミナル事業部商品企画部グループマネージャー 大澤斉氏
ミラノを拠点に活躍するプロダクトデザイナー、ステファノ・ジョバンノーニ氏がデザインを手がけたNEC製HSDPA端末が「N904i」だ。
FOMA 90xiシリーズとしては初のデザインコラボケータイで、しかも海外の有名デザイナーを起用したこともあり、そのデザインに注目が集まっている。だが、NECモバイルターミナル事業部 クリエイティブスタジオ クリエイティブディレクターの佐藤敏明氏は、「デザインは、商品コンセプトを体現するもの。まず最初に、音楽や動画を“楽しむ”というコンセプトがあって、このデザインがある」と説明する。
佐藤氏の言葉にもあるように、今回NECが、N904iの開発にあたって掲げたテーマは「楽しい」。904iシリーズでは唯一、下り最大3.6Mbpsの高速データ通信ができるHSDPAに対応し、アスペクト比16:9を実現した3インチワイドVGA(480×854ピクセル)液晶を搭載。そしてヤマハ製オーディオエンジンを内蔵するなど、文字通り動画や音楽を高画質・高音質で楽しむ機能を盛り込んだ。
同商品企画部グループマネージャーの大澤斉氏は「もともとビジネス向けからスタートしたこともあるのですが、これまでNECの携帯電話がユーザーに提供してきた価値は、“便利”とか“安心”というものだったと思うのです。今回改めて、お客様が求めているものは何かを考えたとき、出てきたのが“楽しみたい”というものでした」と話す。
「使う人の生活が楽しくなるというのを、NECの携帯電話の新しい価値にできないかというところから、コンセプトワークをスタートしました。スタッフの意識の変化というのももちろんありますが、もしかしたらこの“楽しい”というコンセプトが、これまでと一番大きく変わったところかもしれません」(大澤氏)
速いだけじゃない。ネットワークの向こう側の楽しみを提案
NECは、ドコモと共同でHSDPA対応の試作機を開発した経緯があるほか(2006年2月の記事参照)、HSDPAの商用サービス開始時には、対応端末第1号となる「N902iX HIGH-SPEED」を手がけた。携帯電話のデータ通信を高速化することについては、他社に先駆けて取り組んできたメーカーだ。。
他キャリアも含め、この夏モデルでは「ワンセグ」が1つの大きなトレンドになっている。その中で同社が選択したのは、HSDPAの標準搭載というものだった。そこには「やがて携帯電話もブロードバンド化し、ユビキタス社会の中心的存在になる」という、NECが思い描くシナリオがある。その筋書きを実現するためには、新端末のネットワーク機能強化が欠かせない。
「今やPCでは、ブロードバンドが当たり前。携帯電話でインターネットを利用する機会が広がる中では、そのスピードが1つのネックになってきます。『N902iX HIGH-SPEED』はそれを取り除くための布石でした。でも、ただ速いというだけではダメ。もっと重要なのが、そのスピードを生かしていかにコンテンツを楽しめるかということです。そこから、今回の“楽しい”というコンセプトが生まれたのです」(大澤氏)
携帯電話で楽しめる、高速データ通信を生かすコンテンツ。それは何かを考えたとき、最も身近なものとして浮かんだのが「音楽」だった。しかし、コンセプトの発案者でもある同商品企画部の田丸伸一氏は「iPodなどもある中で、ケータイで音楽ってどうなんだろう?」という、根本的な問いにぶつかったと振り返る。
「その答えを探すために、ケータイでは音楽を聞かないという人に、理由を尋ねてみました。その返答は大きく分けて2つ。1つは電池を速く消費してしまうから、もう1つは音がよくないというもの。どちらも技術的に克服できる問題ですから、その不満を切り崩せればもっとケータイで音楽を楽しんでもらえるのではないかと考えました」(田丸氏)
そこで導入したのが、ヤマハ製のオーディオエンジンだ。圧縮によって失われた音域を再現することで音質を原音に近づけるとともに、曲ごとに好みのサウンドを楽しめるよう、12種類のイコライザーと9種類のエフェクトをプリセット。さらに、ユーザーがカスタマイズできる機能も備えるなど、音質にこだわった。また、音楽の再生時間についても省電力化を進め、最大で24時間の再生を可能とした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.