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多様化するニーズに合わせ、これからも端末ラインアップを広げていく──シャープ 長谷川祥典氏ワイヤレスジャパン2007 キーパーソンインタビュー(2/2 ページ)

国内/国外を問わず幅広い携帯電話/PHSキャリア端末を供給するシャープはなぜここまで強いのか。そして、同社は今後の携帯電話端末市場をどのように見ているのか。シャープ通信システム事業本部長、常務取締役の長谷川祥典氏に聞いた。

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番号ポータビリティ商戦が落ち着いても、端末ラインアップは維持する

ITmedia 昨年のシャープで驚きだったのが、投入した端末数の多さです。番号ポータビリティ前後ということもあり、端末投入サイクルは短く、しかもシャープは3キャリアに多くのモデルを投入している。カラーバリエーションも豊富です。短期間で、しかも多くの端末が開発できた理由はどういったところにあるのでしょうか。

長谷川 1つには(各キャリア向けともに)「これまでの蓄積」が生きてきていると思います。ゼロから作るのではなく、過去モデルの資産をベースに新たなモデルが作れるようになっていますから、当然ながら開発期間が短くできる。

ITmedia 多品種少量を前提にした開発体制を早期から作り上げていた、ということでしょうか。

長谷川 そこまで周到に準備していたわけではないのですけれどね(苦笑)。キャリア側から端末ラインアップを増やしてほしいというニーズがありますし、特にソフトバンクモバイルからは「とにかく多くのモデルを開発して欲しい」とプレッシャーもかけられています(笑)。もちろん、お客様のニーズも多様化しています。メーカーとしては、そういった背景の中で(ラインアップを)幅広くやっていこうという意識です。

ITmedia 昨年の番号ポータビリティ前後から、各キャリアが投入端末数やカラーバリエーションで競ってきたわけですが、この状況は今後も続くと見られていますか。それとも、これはあくまでも番号ポータビリティに関連した特需で、いずれ縮小していくのでしょうか。

長谷川 そこはユーザーニーズの多様化が大きく影響していると思うんです。シャープではソフトバンクモバイルと共同で、812SHのカラーバリエーションを増やすという試みをやったわけですけれども、そこでも「お客様の好みが多様化している」と実感しました。お客様が求めている以上、苦しくてもメーカーは端末ラインアップを広げていかなければならないでしょう。

ITmedia 番号ポータビリティ商戦が落ち着いてきたから、端末ラインアップやカラーバリエーションを縮小しようという考えはない、と。

長谷川 まったくないですね。

割賦販売制による端末市場の変化

ITmedia 昨年後半から今年にかけて注目を集めたトピックスとして、携帯電話端末の「割賦販売制」があります。ソフトバンクモバイルが最初に導入したほか、ウィルコムも一部モデルでの導入を決定しました(6月14日の記事参照)。モバイルビジネス研究会の影響もあって、ドコモやKDDIでも導入検討が進んでいます。この影響をどうごらんになっていますか。

長谷川 割賦販売が中心になってきますと、端末買い換えサイクルが長くなると見ています。これまで1年強で買い換えられてきた携帯電話が、2年くらい使われるようになることを考えると、まずメーカーとしては「品質」を今まで以上に重視しなければならなくなります。また、ビジネス的に見ますと、端末買い換え市場の縮小が予想されますから、端末の全体需要数が減ります。そこを見越した上で商品戦略を考えなければならない。

ITmedia 割賦販売制への本格移行後は、当然ながら端末の機種変更市場が縮小する。となると、先ほどメーカーとして端末ラインアップ数やカラーバリエーションを現状維持したい、という考えと矛盾しませんか。

長谷川 (ラインアップやカラーバリエーションを)減らすという考えはありません。なぜなら、端末ラインアップを減らすと、端末需要そのものが冷え込んで、市場がもっと縮小してしまう。

 また機種変更市場の買い換えサイクルは伸びますが、今後は「プライベート用」と「仕事用」の携帯電話を分けて使うようなニーズが増えると考えています。こういった新しい市場が生まれることで、全体としてみれば、キャリアの端末調達数は落ちないのではないかなと考えています。

キャリアとメーカーの関係は今後どうなる

ITmedia 日本市場では、これまでメーカーとキャリアが二人三脚で、一体感のある「よい端末・よいサービス」を作ってきました。しかし一方で、SIMロック廃止やインセンティブモデルの見直しなどで、メーカーとキャリアの関係を見直し、水平分業的なモデルを導入すべきという意見も出てきました。

 キャリアとメーカーの関係は、今後どうなっていくと考えていますか。

長谷川 (キャリアとメーカーの関係で)すぐに大きな変化があるとは思えないですね。キャリアが新しいサービスを投入する、それを(他キャリアに対する)競争力にすると考えている間は、今のビジネスモデルは変わらないでしょう。独自性のあるサービスには、キャリア独自にカスタマイズされた端末が必要になりますから。

 むろん、キャリアの独自性も今後さらに重要になりますから、メーカーとしては「キャリアの(新サービス対応)ニーズに応える」と同時に、メーカー独自に「エンドユーザーのニーズ」にも積極的に応えていかなければならない。

ITmedia 割賦販売制導入など細かな制度変更はありそうですが、大枠としてのメーカーとキャリアの関係は変わらないということですね。

長谷川 キャリアの新サービス対応は置いておいて「あとは端末メーカーで好きにせいや」ということになれば話は別ですけどね(笑) そういうことは当面あり得ないのではないのでしょうか。

 例えば最近、各キャリアが積極的に行っているソフトウェアプラットフォームの導入も、メーカーにとってはプラットフォームと言えない部分がありますからね。

ITmedia そうですね。今のプラットフォーム化の動きは、あくまで各キャリアに参入するメーカーの端末同士でソフトウェア基盤を共通化しようとしているわけで、複数キャリアに端末供給するメーカーからすれば、「3つのプラットフォーム」に対応していくことになるだけですからね。メーカーが1つのプラットフォームを作り、上位レイヤーで各キャリアごとに仕様のカスタマイズするという考え方ではない。

長谷川 我々はまさにそうで、複数のキャリア向けに端末供給させていただいているので、今後は複数のプラットフォームで開発していかなければならないわけです。キャリアが独自のサービスを打ち出して、コスト削減のためにキャリアごとにプラットフォームができる。そういった流れだけみても、キャリアとメーカーの関係は大きく変わらないと思いますよ。

ITmedia 最後に、シャープから見た2007年の展望と、今後の競争優位性についてお聞かせください。

長谷川 まず2007年は、(携帯端末が)全面的にワンセグにシフトする年と見ています。多くのユーザーがワンセグ端末に買い換えるでしょうから、それによる需要拡大はあるでしょう。

 ワンセグ普及期の次を見据えますと、家電やPCなどと携帯電話が連携する“横の連携”が注目です。ここでもシャープは総合家電メーカーですので、市場優位性が打ち出せると考えています。

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