内部はまるで“三次元テトリス”──“810P”の「フラットスライド」とは一体何だ:開発陣に聞く「810P」(2/2 ページ)
ソフトバンクモバイルのパナソニック モバイル製3G端末「810P」は、国内では同社初となるスライドボディを採用した。ワンプッシュオープン機構搭載の折りたたみボディで多くのファンをつかんできた同社が、新機軸のスライドボディで目指すものは何か。この「フラットスライド」に込めた、同社ならではの工夫や意図を開発チームに聞いた。
「本当にパズルのような構造なので、ほんの少し内部の部品の種類や位置を変更するだけでも1からすべてを組み替えなければならないほどシビアな挑戦でした。そのため、特にデザイン担当と構造設計担当の間では、何度も議論を重ねましたね」(松本氏)
例えばmicroSDスロットは開発当初、本体の右側面にあったという。ところがこのフラットスライド構造は、下のボディが上のボディを包み込むようなU字型フレームを採用する。そのままでは閉じたときに、microSDを出し入れできないことが判明した。
「……3次元パズルの組み直しです。ただ、設計を大きく変更することになっても、ユーザーの利便性を考えるとスロットの位置は動かさざるを得ませんでした」(北出氏)
「そのほか、キーの大きさや形状や配置も工夫しました。構造上の制限がある中で、どんな種類のキーをどう配置すれば最も打ちやすいか、かなり議論を重ねました」(山本氏)
705Pや706Pは薄型化に都合のよいシートキーを採用したが、押しにくいという声も一部にあった。そのため今回は、あえてバックライト付きの山型のキーを採用した。
「さらに薄さを追求した一方で、キーの押しやすさやも705Pより向上したと思います」(北出氏)
使い勝手やデザイン性と、完成度の高い立体パズルの両立を図る中で、もう1つ課題となったのが強度だ。立体的な凹凸を組み合わせて伸縮させるフラットスライドの基本構造は先ほど述べた通りだが、スライドさせ、この凹凸が離れると前後の部品の間に空洞ができる。その空洞が、閉じたときと開いたときとの強度の差を生むことになってしまうわけだ。そのため「その分を補うべく、板状の金属素材をまたパズルを組むように配置して補強した」と齋藤氏。補強したと簡単に言うが、厚さ約12.9ミリのボディに隙間なく部品がある中でのことである。
そうして、言われなければ分からない設計上の苦労の末、薄型ながら閉じても開いても“しなって”不安を感じることはない端末に仕上がった。そもそも当たり前のことのようだが、いっそうの薄型化が進む携帯にとって、ユーザーを不安にさせないための取り組みも重要課題の1つになってくるだろう。
「とにかく前例のない形でしたから、参考にできる規格や基準がありませんでした。すべて1から始めたので、強度については特に何度も何度もテストを重ねました」(齋藤氏)
「開発期間は当初の予定より長くなりましたが、最後に工場部門もがんばってくれて、全体の期間はこれまでとほとんど同一の期間で納めることができました。みんなが新しいものを送り出すんだという気持ちで取り組んだ結果ですね」(松本氏)
この新しいカタチへのチャレンジは、ユーザーにどう受け入れられていくのか。その成果によって、同社製端末のアイデンティティの1つにもなったワンプッシュオープン機構と同様に、この“フラットスライド”が同社端末の顔となる日が来るかもしれない。
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