最上級の機能をコンパクトボディに凝縮──「W52SH」人気の理由:開発者に聞く「W52SH」(2/2 ページ)
「W52SH」は一見するとスタンダードな折りたたみ端末だが、“羊の皮をかぶった狼”と呼んでも差し支えないほどその中身は充実している。これまでリリースされた「W41SH」や「AQUOSケータイ W51SH」との違いや、こだわった部分を聞いた。
省電力回路によりワンセグの連続視聴時間をさらに長く
ワンセグ機能はテレビ出力には対応してないものの、基本的にW51SHの機能を継承している。ワンセグの連続視聴時間は、なんとW51SHの約4時間40分から約5時間40分へと大幅に延びた。中田氏はその理由を「電池パックが小さくなったからといって、ワンセグの視聴時間を落とすことは許されないからです」と話す。そのため新しく省電力の回路を採用し、W51SHよりも視聴時間を延ばしたという。
なおこの約5時間40分という数字は、イヤフォン装着時に「節電モード」に設定して、DBEXをOFFにした場合のもの。明るさモードを「固定」にすると視聴時間は約4時間55分ほどになるが、電車などでの通勤中に視聴する分には、往復に4時間かかる長距離通勤者でも、その時間をほぼカバーできる。また、W51SHでは録画中に着信があると録画が中断されてしまうが、W52SHではバックグラウンドで録画を続ける仕様に変更されるなど、録画機能も向上している。
ちなみにW52SHがワンセグ対応端末ながら「AQUOSケータイ」と名のらないのは、AQUOSケータイを冠するための条件を満たしていないためだという。その条件とは「AQUOSの画質を採用するための調整を行っていること」と「ワンセグに特化したケータイであること」の2つ。W52SHはすべての機能をバランスよく使ってもらえるスリムなケータイを目指して開発したため、あえてAQUOSの名前は付けていないのだ。
では、AQUOSケータイの冠が取れたW52SHのワンセグの画質は、W51SHと比べると見劣りしてしまうものなのだろうか。これについて中田氏は「(W52SHの)ワンセグの画質は、AQUOSの開発部隊との調整は行っていませんが、W51SHで培ったノウハウは生かしているので、ほぼ同水準と考えてよいでしょう」と説明。ワンセグの受信感度もW51SHと同等だという。
ワンセグ視聴中は、側面にある上下キーを使って音量調節やチャンネル変更などを行うが、チャンネルは順送りでしか変更できない。また、ダイヤルキーが隠れているため、ワンセグを見ながらほかの操作をすることもできず、横画面専用のメニュー表示にも対応していない。このあたりはぜひ次期モデルでの対応を期待したいところだが、KDDI端末に共通の「au Media Tuner」の仕様による部分も大きく、“他メーカーから乗り換えても迷わないようなUI(ユーザーインタフェース)を入れる”というKDDIの方針も影響しているという。「限られた選択肢の中で、多くの機能に対応していくのは今後の課題だと考えています」(中田氏)
ワンセグは、初期状態ではディスプレイを表にして閉じると自動的に起動する。開いた状態では[*]キーを長押しするとワンセグが起動可能だ。W51SHでは、待受画面でTaskキーを長押しするとワンセグが起動し、そのほかの場面でTaskキーを長押しするとプライベートフィルタが起動する仕様になっていたが、分かりづらいという声が多かったため改善した。W52SHでは、ワンセグ起動用のキーとTaskキーを分けており、Taskキーはどの状態で長押ししてもプライベートフィルタが起動するようになっている。
同梱の卓上ホルダにW52SHをセットすれば、端末を斜めに固定してワンセグを視聴できる。また、外出先などで卓上ホルダがない場面でも、ディスプレイを途中まで回転させれば最適なアングルで固定して横画面で視聴できる。テレビ視聴中にTaskキーを長押しすると画面が180度反転するので、持ち手やケータイの位置によって自由に調整できるのもポイントだ。
強化されたTask barとショートカット
ワンセグをはじめ、あらゆる機能を使う楽しさ、機能の使いやすさを感じてもらうための工夫にも余念がない。中田氏が特に勧める機能が、擬似マルチタスクとして活用できる「Task bar」だ。
「W52SHでは、EZナビウォークとFeliCaロックの解除をTask barに追加しています。意外と知られていないのですが、Task barのアイコンは順番を変更できるので、よく使う機能を前に移動するなど、自分の使いやすいようにカスタマイズできます」(中田氏)
EZwebがTask barに入っていないのは、“何かをしながらEZwebを使いたい”という人よりも、“EZwebを使いながら何かをしたい”という人が多いのではないかと考えたからだと中田氏は話す。EZwebの利用中には、メールのバックグラウンド受信ができないという制約があるので、メールの使い勝手を重視した結果でもある。
ダイヤルキーの長押しで起動できるショートカットには、「録画予約スケジュール」と「視聴予約スケジュール」が追加された。「au Media TunerのEPGでは5時間先の番組しか予約できませんが、スケジュールを使えばどんな番組でも予約できます。毎日や特定の曜日はもちろん、極端な話、1年先の予約も可能です」(中田氏)
ショートカットには、「プライバシー設定」をはじめ、詳細な設定項目も登録できるようになった。「初期設定では、6キーを長押しするだけで赤外線受信ができます。これは個人的にも気に入っています」(中田氏)
細かいところでは、メールの使い勝手も向上した。W51SHではEメールの受信ボックスにのみサブフォルダを作成できたが、W52SHではEメールとCメールの送受信ボックスにサブフォルダが作成できるようになった。メールアドレスによる自動振り分けやパスワードロックにも対応している。サブフォルダは各10件まで作成でき、EメールとCメールの受信メールは再振り分けも可能だ。
また電話の発着信履歴画面で[アプリ]キーを押して「切替」を選ぶと、Eメールの送受信履歴が表示されるように変更されているのも小さな改善点の1つ。さらに「切替」を選ぶとCメールの送受信履歴も表示される。Cメール履歴から電話をかけたり、Eメールの履歴からアドレス帳を呼び出して電話をかけることもできる。
フォントについても改良が加えられた。W51SHはディスプレイが3インチだったので、文字のサイズも十分大きく、不満の声はなかったが、W52SHはディスプレイが2.8インチになったため、フォントの基本サイズを20ドットから24ドットに上げている。文字サイズの設定に合わせて、日本語入力システムの変換候補を表示するサイズが変わるのも、見やすさを配慮してのことだ。シャープ独自のLCフォントは、W51SHで採用しているLCフォントをそのまま使っているのではなく、W52SHに合わせて調整しているという。
マクロ撮影に威力を発揮するAF対応カメラ
カメラは「ユーザーからの要望が多かった」(中田氏)ことを受けてオートフォーカス(AF)対応に進化した。AFは特に近距離での撮影で効果的だという。「AFは『標準』と『マクロ』に設定できます。遠距離だと『標準』でも問題ありませんが、9〜30センチくらいの距離なら『マクロ』が効果的です。従来のマクロ切替スイッチを使った接写に比べ、かなりシャープに写せます」と中田氏は言う。
カメラの最大撮影サイズは2M(1600×1200ピクセル)だが、縦横比率が16:9となる1280×720ピクセルのワイド撮影も可能。このサイズを採用したのは、ハイビジョンテレビで写真を見てもらうためだ。ただしW52SHはテレビ出力には非対応なので、赤外線通信や外部メモリー経由でテレビにデータを送ることになる。
「テレビで1〜2メガの画像を見ると感動しますよ。高速赤外線通信規格IrSimpleに対応した(薄型テレビの)AQUOSや、別売の『ワイヤレスフォトアダプター』があれば、ケータイから写真をIrSimpleで送れます。ケータイで撮った写真をプリントするのは案外手間がかかるので、今後はテレビなどで皆で見るというスタイルも広がっていくのではないでしょうか」(中田氏)
W52SHは、ウォークマンケータイ、EXILIMケータイ、防水ケータイなどに比べると、パッと見のインパクトは薄いかもしれない。しかし、ワンセグ、LISMO、おサイフケータイなど必要な機能は網羅しており、磨きぬかれたUIはauラインアップにおいてトップクラスに肩を並べるといっても過言ではない。
「すべてのジャンルで最上級の機能を入れることを目指しました。“いろいろ考えてみたけど、やっぱりこのケータイがいいね”と考えていただけると嬉しいですね」(中田氏)
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