世界最薄防水ケータイの中身はこうなっている――開発陣に聞く「F705i」
防水ケータイで世界最薄をうたうのが、富士通製の「F705i」。防水仕様でありながら13.7ミリという普通のケータイなみの薄さを実現するために、開発陣はハイブリッド構造の採用や回路の集積化、止水構造の薄型化などに取り組んだという。
IPX5、IPX7の防水性能を備えながら、厚さ13.7ミリ――。非防水ケータイと変わらない厚さを実現した、世界最薄の防水ケータイとして登場したのがドコモの富士通製端末「F705i」だ。
F705iは、「F703i」「F704i」「キッズケータイ F801i」に続く、4代目の富士通製防水FOMA。代を重ねるごとにスリムさに磨きがかかり、F705iでは前モデルのF704iから4.2ミリの薄型化が図られた。
この薄型化を実現するために、開発陣は端末にどんな工夫を施したのか。その取り組みについて、富士通モバイルフォン事業本部でモバイルフォン事業部長を務める高田克美氏が説明した。
“ステンレスの骨”で強化した、ハイブリッド構造のボディを採用
F705iを“世界最薄の防水ケータイ”として製品化できたのは、ディスプレイ側ケースにハイブリッド構造を取り入れたからだと高田氏は説明する。樹脂の中に金属の骨を入れて薄さと剛性を両立する構造で、「先に金属の骨を金型に入れ、金型を閉めてから樹脂を注入する。それを冷却すると金属の骨が入った薄肉なプラスチックのケースができあがる」(高田氏)という手順で作られる。
防水ケータイは、ガスケットというシリコン系のゴムの圧力で上下のケースをとめて浸水を防いでおり、ケースにはゴムの反発力に耐えうる剛性が求められる。これまでは、それなりに厚みのあるプラスチックを使って剛性を確保していたが、さらなる薄型化が難しいことから新たな構造の採用に踏み切ったという。
「金属の骨組みを持つケースを採用することで、4.2ミリの薄型化と同時に剛性も確保できた。ケースを留めるネジの数も減らして、よりスタイリッシュでデザイン性の高い構造体を開発できた」(高田氏)
薄型化の工夫はこれにとどまらない。レシーバーやマイクといった“聞く、話す”を支える重要な部品には業界最先端の薄い部品を採用し、ディスプレイも「業界トップクラスの1.2ミリという薄さのもの」(高田氏)を搭載。内部回路の高集積化にも取り組んでおり、基板の枚数を減らしたり、部品の接合技術を片面から両面でもできるような工夫を施したという。「F705iは、“いかに基板の実装面積を有効活用して、小さな部品を装置の中に取り込んでいくか”という取り組みからできあがっている」(高田氏)
止水用のガスケットについても、特殊なゴム素材を使うと同時に薄型化と狭額縁化に取り組んだ。防水仕様の携帯では、ケースの額縁(ディスプレイの周囲)部分に止水構造分のパーツが入るため、大画面ディスプレイを搭載するのが難しい。この問題を解決するために所定の圧力を維持した上でさまざまな形状を試するなど「いかに薄くするかというノウハウが詰め込まれている」と高田氏は胸を張る。
また、防水性能を確保するために、水没試験や繰り返し浸漬試験、エアリーク試験を実施しており、出荷するすべての端末にIPX7水圧相当の圧力をかけるテストを行っている。「これはF703i以来の取り組み。確実に防水性能が確保された端末だけを出荷しており、性能には自信がある」(高田氏)
開発、企画、プロモーションの相乗効果が表れた防水ケータイ
富士通モバイルフォン事業本部長の佐相秀幸氏は、同社が取り組む防水ケータイについて「技術基盤、デザイン、企画の3つの相乗効果が表れた端末」だと自信を見せる。2007年に発売したF703i、F704iの2モデルも想定した以上に好調で、“防水らしくない外観”がユーザーの間で好評を博しているという。「水が入らないしっかりした作りの防水携帯は、落下や衝撃に対する堅牢性も従来機種に比べて高いというという結果が出ている」(佐相氏)。
MM総研が行った2007年上半期の携帯出荷台数調査で3位を獲得するなど、富士通の携帯電話事業は好調に推移している。同社では昨秋、2007年度の出荷目標を450万台から560万台に上方修正し、さらなる出荷台数の拡大を目指す考えだ。「防水ケータイを富士通の1つの技術基盤を具現化させた形として、世に問うていきたい。560万台の出荷を達成するためにも、F705iを成功させたい」(佐相氏)
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