“地方の法人契約率”は伸びしろが大きい──NTTドコモ九州、法人市場への取り組み:神尾寿のMobile+Views(2/2 ページ)
コンシューマー市場での大きな伸びが期待できなくなった現在、成長市場として注目されているのが法人市場だ。特に地方での法人契約はまだ少なく、今後も大きく伸びる余地があるという。NTTドコモ九州の板倉繁信氏に九州での取り組みを聞いた。
課題は「法人契約化」の遅れ──販売力の強化で市場を創る
ドコモ九州では、現在の課題を「全国水準に達していない法人契約率」(板倉氏)と考えている。個人の携帯電話を持ち込んで仕事に使わせるのではなく、業務用の携帯電話をきちんと管理された法人名義の契約に切り替えることが重要だ、ということを訴求していくのが大きなミッションだ。
「今後、重要になるのはお客様に対するきめ細かなサービス体制の確立であり、(顧客との)接点となる販売体制です。この取り組みの1つとしましては、今まで(ドコモ九州の)直営店とドコモショップの法人営業担当は分業体制だったのですが、お互いの強みを生かした同行営業の体制作りを進めています。これは福岡地区から取り組んでいますが、成功すれば、この一体営業は地域密着型の法人営業の1つのパターンになるでしょう」(板倉氏)
ドコモと販売会社の一体営業は、ドコモの持つ商品やサービスの方向性が訴求しやすいだけでなく、ドコモ側が個々の企業が持つニーズや課題のフィードバックを受ける上でも有利になる。これは音声サービス販売後のミッションとなる、データ通信サービスの販売で重要になる。
「(携帯電話の)法人ビジネスで重要なのは、電話回線を売ることだけではありません。その先には、個々の企業のニーズにあわせたソリューションサービス(のビジネス)がある。2008年度、ドコモ九州ではソリューション販売も強化していきたいと考えていますが、そこでもドコモショップとの連携、一体的な体制の構築は重要だと考えています」(板倉氏)
全国一社化後も“ドコモの優位性”は変わらない
周知のとおり、これまでドコモはグループ9社で全国をカバーする地域会社制を敷いてきた。各地域会社の独立性は高く、地域密着でサービスやサポートを展開する姿勢は、ドコモのシェア拡大に大きく貢献してきた。しかし、ドコモはこの事業体制を見直し、2008年第2四半期をめどに全国一社化をすることが決定している。地域会社制の廃止と全国統合によって、これまでドコモ地域会社の優位性だった“地域密着”のきめ細かなサービス体制が損なわれる心配はないのだろうか。
「地域会社統合による弊害といった懸念はないと考えています。逆に法人営業においては、(ドコモが)全国一社になることで地域会社ごとの垣根が取り払われて、企業の規模にあわせた対応がしやすくなるでしょう。
例えば、多くの拠点や大規模な工場を持つ企業に(法人契約を)提案した時に、施設内のエリアに改善が必要なケースがあります。そういった時に今までですと、(ドコモ)九州内の施設であれば迅速な基地局設置対応ができますが、他の地域会社にある拠点ですとエリア改善の調整をドコモ地域会社同士でしなければなりませんでした。しかし、ドコモが全国一社体制になれば、こういったケースでも迅速に対応できますので、お客様に不満を感じさせずにすみます」(板倉氏)
一方で、以前から充実していた地元企業へのサポートは、前述のとおりドコモショップとの連携体制で臨む。全国ドコモの統合という新体制においても、地域密着の姿勢は崩さず、統合のメリットを打ち出す考えだ。
「法人市場向けビジネスの原点は“ソリューション”です。多くの企業の、個々のニーズにきちんと応えていくことが大切。2008年度は攻めの姿勢で、さらなる法人市場の開拓に取り組んでいきます」(板倉氏)
かつてのPCがそうであったように、携帯電話もまた「業務で使うものは会社から貸与する」時代になろうとしている。都市と地方で市場開拓のスピードに違いはあれど、その流れは変わらない。
残された地方の法人潜在市場をどれだけ獲得できるか。ドコモ地域会社と、ライバル他社との競争はさらに激しくなりそうである。
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