手のひらで電脳航法!──X02HTと「PathAway for GPS 4」で海を渡る:勝手に連載!「海で使うIT」(2/2 ページ)
PCと航法ソフトを組み合わせは厳しい海況の航海をすこぶる助けてくれる。でも、できることなら自分の位置を手元で把握したい。なんとそれが「携帯電話」でできるというお話。
自分の位置に合わせてマップを自動で読み込む「だけじゃない」PathAway GPS 4
航海で使う海域のマップデータを作成したら「File」→「Send Map to Windows Mobile Device」でWMデバイスに転送する。これで、PathAway GPS 4で海図が表示できる。PathAway GPS 4を起動してWMデバイスの左ソフトキーを押すとメニューが表示されるので、そこから「Option」→「Maps」と選ぶとPathAway GPS 4で使えるマップデータのリストにアクセスできる。そこから、転送した海図データを選び、確定ボタンで表示されるコンテキストメニューから「Enable」を指定し、同じように同じコンテキストメニューから「Show」を選べば、PathAway GPS 4の画面に海図が表示される。このマップリストで連続した海域の海図データを「Enable」に設定しておくと、自船の位置がマップとマップの境界線を越えたときに、PathAway GPS 4が次の海域を読み込んで表示しなおしてくれる。
画面表示の拡大縮小は、WMデバイスのナビゲーションボタンで操作できる。ただし、ラスターデータを利用しているため、拡大するとドットのジャギーが目立ってしまう。この問題を解決するため、PathAway GPS 4ではマルチレイヤーマップ方式を取り入れている。先ほどのマップリストで同じ海域の縮尺の異なる海図データがEnableになっていれば、自船位置でより詳細な大縮尺海図が存在した場合にそれを表示する機能も持っている。
表示画面を「航海用」にカスタマイズする
汎用GPSナビソフトのPathAway 4 GPSを航海で使うには、使用する単位を「海モード」に設定しておく必要もある。これは、「Option」→「Preferences」で表示される設定メニューから「General」項目で設定できる(PreferencesでGeneral項目が表示されていないときは右ソフトメニューで表示される項目から「General」を選ぶ)。ここで、「Distance」の内容を「Naut.Miles」にすれば、距離単位は「海里」、速度は「ノット」で表示される。
PathAway GPS 4にはディスプレイ表示モードが多数用意されているのが特徴だが、航海用GPSプロッターとして、高機能ハンディGPSと同等の使い方がしたいなら、「Map」→「Tracking View」がメインとなる。さらに、PathAway GPS 4のプロッター画面モードにはGPSで取得した情報から航法に関係するデータを表示するタグが用意されており、トリップメーターの代わりに次のWayPointまでの距離と到達予想時刻に変更したりバッテリー残量やシステムメモリの空き容量などを表示したりと、ユーザーが、自分の使い方に合わせてカスタマイズして使い勝手を改善することも可能だ。
GPSとの接続は、「GPS」→「Configure GPS」でデータフォーマットと使用するCOMポート番号、通信速度を設定すれば、あとは「GPS」→「Connect GPS」、もしくは右ソフトキーで表示されるコンテキストメニューの「Toggle GPS」を選べばGPSと接続する。
X02HTを選ぶのには理由がある
マップを多用するGPSプロッターとなると、タップなどのポインティング操作が必須と思われがちだが、筆者は、タップをサポートしていないWM 6.0 stdデバイスであるX02HTで使うことを前提としていた。これは、「筆者が持っているWMデバイスがX02HTだった」ということもあるが、それ以上に、「片手で操作を完結したかった」という理由が大きい。
ショートハンドの小型ヨットにおいて、片手は体の保持や、ティラー、メインシートやジブシートの操作のために使うようになる。両手の操作が必要で、かつ、小さな画面で細かいアイコンを正確にタップしなければならないWindows Mobile 6.0 ClassicやWindows Mobile 5.0 for PocketPCデバイスでは、海況が悪化して「イザッ!」というときに操作が困難ではないか、というのが、自分の経験から推測された(実際、タッチスクリーンを搭載したTOUGHBOOKを荒れた海で使用したときは、画面上のタップが困難であった)。
片手で筐体を持ったままボタンも確実に操作できるWM 6.0 stdデバイス、そしてストレート形状のX02HTが、「手のひら電脳航法」デバイスとして最も向いているのではないだろうか。
そういう仮説のもと、今回、三崎港から伊豆大島海域までの往復航海で操作性の検証を行った。その結果はすこぶる良好で、18時間という長時間の航海において、PCから移行した海図データの上にGPSで取得した自船位置を安定してプロットし続けただけでなく、リアルタイムのノット表示から平均ノット、最高ノットのデータ、目的地までの方位と残海里、到着予定時刻の一括表示から、GPSで表示されている現在位置から任意ポイントの方位と海里の表示など、ハンディGPSのハイエンドモデルと同等の機能と、それ以上の操作性を確認できた。
また、キーボードを搭載しているX02HTでは、アルファベッドキーに割り当てられたショートカットがそのままダイレクトに押せるため、ナビゲーションボタンの機能切り替え(ズーム、パン、ポインティングカーソル、表示タブカーソルの操作をナビゲーションボタンを切り替えて行う)やGPS接続操作が、ボタン1つで可能だったことも、操作性の向上に大きく貢献していた。
X02HTというと、バッテリー駆動時間が気になるユーザーも多いと思う。今回の検証航海では電話機能をオフにし、GPSと接続するBluetoothをオンにした状態でGPSプロッターとして使用していたが、だいたい、6時間でバッテリーが切れる状況だった。実際の運用では予備バッテリーを用意して、一方を充電しながらもう一方をX02HTで使用している。
ただし、X02HTが原因かWM 6.0 Stdの制限かは不明ながら、「View」→「Proximity View」や、同じく「Route View」など、マップの下にリストが表示されるモードに切り替えると、PathAway GPS 4が操作を受け付けなくなる現象が見られた。そのほかでも、リストボックスの一部が表示されないため、操作が困難なメニューがある(特にファイル操作系)。操作を受け付けなくなる症状は、いったんホーム画面に戻り、タスクマネージャーやラウンチャーソフトで、PathAway GPS 4に戻ると解決する。
X02HTは、一括買取で3万円を切り、PathAway GPS 4は59.99ドル。海図データとそれを利用できる航法ソフトは3万円から4万円ほどかかるが(ある航法ソフトの体験版には関東近海の比較的詳細なC-MAPが収録されている)、それでも、ハンディGPSのハイエンドモデルよりは低コストで「手のひらで電脳航法」が実現する。そういう、コスト的な理由もさることながら、確実で容易な操作性などを考えた場合、イザというときに頼りになる航法機器として、X02HTとPathAway GPS 4の組み合わせの持つポテンシャルは非常に高い、というのが今回の検証航海で得た“確信”だった。
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