iPhone 3Gの“割安感”はユーザーに伝わるか?:神尾寿の時事日想・特別編(2/2 ページ)
iPhone 3Gの端末料金と利用料金が発表された。月額7280円〜という値段は、果たして一般的な携帯ユーザーに受け入れられるのか。そしてもう1つ、ソフトバンクモバイルに今後問われる、インフラ面の課題とは……。
毎月の利用料は「iPhoneを使う」なら妥当な価格
一方、iPhone 3G専用に用意された利用料の方はどうだろうか。
こちらはホワイトプランの基本料に新設された「パケット定額フル」と「S!ベーシックパック」のセットを必須にすることで、月額利用料は最低7280円からになっている。ソフトバンクモバイル以外への通話をたくさんする人ならば、これに「Wホワイト」を付加することになるだろう。
このiPhone 3G専用プランの価格だけ見れば、一般的なケータイユーザーは「割高」に感じるだろう。特にパケット定額の部分は、従来の携帯電話向けパケット定額プランの上限額(4095円〜4410円)よりも高く、auの「ダブル定額」に代表される利用量に応じた2段階定額にもなっていない。
しかしiPhone 3Gは“普通のケータイ”ではない。フルブラウザの「Safari」や「Mail」を筆頭に、様々なアプリケーションがインターネットとシームレスに連携し、従来の携帯電話よりも格段に多くのパケット通信を行う。ドコモやauは携帯電話に搭載するフルブラウザ向けの上限金額として月額5985円を設定しているが、iPhone 3Gの通信量やそれによって得られるメリットは、一般的な携帯電話のフルブラウザ以上だ。そう考えると「パケット定額フル」の月額5985円は、破格の安さと言えるのではないだろうか。
むろん、今回の料金プランに対する不満もある。それは先述した2段階定額の仕組みが、「パケット定額フル」にないことだ。
iPhone 3Gのネットとの親和性や魅力を鑑みれば、ケータイのヘビーユーザーは今回の料金プランに割安感を感じるだろう。しかし、ミドルユーザー層への訴求を考えれば、“入り口を広く見せる”2段階定額は欲しいところである。過去をみても、auが「ダブル定額/ダブル定額ライト」を初めて導入したことで、多くのユーザーがパケット料金定額制の世界に足を踏み入れ、結果としてデータ通信の利用が活性化したという例がある。iPhone 3Gの利用スタイルを考えれば、パケット定額制の上限額には簡単に達してしまうと思うが、それでも多くの人に「使ってみよう」と思わせる料金設定もほしいところである。
急ピッチでHSDPAインフラの拡大・充実を
このようにiPhone 3Gの端末価格や利用料金の設定は、iPhoneが提案する新たな価値や利用スタイルを鑑みれば、非常にお得感のあるものだ。その上で、筆者が特に重要なポイントだと考えているのが、「ソフトバンクモバイルのインフラが、iPhone 3Gの魅力を引き出しきれるか」である。
先述のとおり、iPhone 3Gの魅力はインターネットとのシームレスな連携の部分にある。この価値をユーザーが実感し、料金プランに割安感を感じられるかどうかは、サービスエリアの広さだけでなく、そこで提供される通信スピードも重要な要素になるだろう。より直接的にいえば、“iPhone 3GがHSDPAエリアで使えるかどうか”でユーザーの価格に対する満足度は大きく変わる。
ソフトバンクモバイルは現時点でHSDPAエリアの詳細を発表しておらず、「全国の県庁所在地および主要都市、首都圏/16号線内、東海/名古屋市および周辺の主要都市、静岡市、関西/京阪神エリアなどに展開している」(広報部)とだけコメントしている。しかし、iPhone 3Gのようにデータ通信環境が重要な端末が登場した以上、HSDPAの対応エリア情報をより詳細、かつ積極的に公開してもらいたいところだ。
また、HSDPAエリアそのものの拡大も、NTTドコモに大きく遅れを取っており、この部分に不安と不満が残る。iPhone 3Gという先進的なプロダクトを手にした以上、HSDPAインフラの拡大にも注力してほしい。
総じて言えば、ソフトバンクモバイルはiPhone 3Gの世界観や価値をきちんと理解し、その上でより多くのユーザーの手元にそれを届けようと前向きに努力している。iPhone 3Gの魅力を引き出し、日本市場に根付かせることができるか。それはソフトバンクモバイルが日本で第3位の携帯電話会社で終わらず、その上を狙えるだけの力量を持つ、次の世代のモバイル通信キャリアになれるかどうかの試金石にもなるかもしれない。
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