ノキアデザインは“生活密着型リサーチ”から生まれる――Nokiaのチップチェイス氏
世界各国に端末を投入するグローバル企業のNokiaは、各地域のニーズを汲んだ端末の開発に長けており、それが同社端末のシェア拡大につながっている。Nokiaでデザインを手がけるヤン・チップチェイス氏が、地域密着型端末を生み出すNokiaのリサーチ方法を紹介した。
Nokiaは世界の国々に向けて端末を投入するグローバル企業として知られ、その世界シェアは4割に達している。多くの国々に端末を投入して調達コストを抑える“規模の経済”による効果や、自社サービスの展開で業績を伸ばしている同社だが、高いシェアを獲得している最も大きな要因として挙げられるのが、各国のニーズを汲んだ端末開発に長けている点だ。
Nokiaはどのようにして、国ごとに大きく異なる文化や生活習慣、ITリテラシーを把握し、それを端末開発に採り入れているのか。「NM706i」の発表会に登壇した同社デザインセンターのヤン・チップチェイス氏が説明した。
“朝起きてから寝るまで”の行動からニーズを読み取る
チップチェイス氏は、ノキア端末をデザインする際に“美しさ”や“使う喜び”という要素に加え、「人々の生活の中で、関連性が高いかどうか」にフォーカスしていると説明。そして、1つの要素だけを満たすのではなく、すべての間でバランスがとれているかが重要だと話す。
Nokiaが生活との関連性を重視するのは、同社がグローバル企業であり、端末の投入にあたって、それぞれの市場のニーズに最適化した端末を開発する必要があるからだ。そのためには、さまざまな国のケータイユーザーの間に存在する共通点と相違点を理解する必要があり、それを調査するのがチップチェイス氏の役割というわけだ。同氏はさまざまな国や地域に出向いて、固有の文化や生活習慣、社会的なトレンドをリサーチしているという。
中でも多くの時間を費やすのが、人の生活に密着したリサーチだ。「人の置かれている環境について、最も豊かな情報を持っているのが家庭」(チップチェイス氏)であることから、“起きてから寝るまでの”あらゆる状況を追跡して調査するとチップチェイス氏。「(リサーチしてもいいという人から)許可をもらって、会社でどうしているか、友達とどんな交流をしているか――などを見ていく」(同)
行動の背景にあるものを見極め、ケータイでサポートする
こうした調査からは、地域ごとに異なるさまざまな行動や、その背景にあるものが見えてくるという。チップチェイス氏がその例として挙げたのが、タイ・バンコクの“飾り付きブレース”とエジプト・カイロの“お祈り通知アプリ”だ。
例えばバンコクの若い女性の間で流行しているという飾り付きブレース(歯列矯正具)は、歯の矯正機能を備えていない。それを付ける理由は“他人から、どんな存在として認知されるか”を意識しているからで、「周りの人に、“あの子の両親は歯の矯正をしてあげられる、経済的に余裕がある人だ”と感じさせるための、ある意味、野心を刺激するアイテム」(同)という位置付けだ。
また、街中にモスクがあり、どこでもお祈りの時間が分かるにもかかわらず、カイロの人が携帯電話のお祈り通知機能を使うのは、「1つは周りの人に対して自分がいかに敬虔なイスラム教徒であるかを示すため、もう1つはもっと敬虔なイスラム教徒になりたいという意図を示すため」という理由からだという。
このように、人の行動の裏にはしばしば隠された意味が存在するため、ものごとの背後にある文脈をとらえることが地域のニーズに密着した携帯を開発する上で重要だとチップチェイス氏。「どんな状況で使うのが適しているのか、使うのが適切ではないところでそれをどのようにサポートするのか――。私たちは、作り出すもののすべてにおいて背後の文脈を考えている。1つ1つのデザイン上の決定の背後には、それぞれ意味がある」(同)
関連記事
- 紅の赤、輝く雲をボディカラーに――ノキア、「NM706i」を披露
ノキアが、今年3モデル目の日本市場向け端末として投入するのが「NM706i」。3色のボディカラーのうち2色を日本限定色とするなど、日本市場を意識した端末に仕上がった。同社のマクギー社長は、「今年後半に、エキサイティングな新製品を投入する予定」と期待を持たせた。 - “世界に通用する”ケータイの作り方──Nokia流携帯開発術
さまざまな文化圏の国々に端末を供給するNokia。世界各国で受け入れられる端末は、どのような方法で生み出されるのか。また、未来の携帯はどんな姿になると考えているのか──。端末開発に携わるキーパーソンたちの言葉からその一端が垣間見える。 - 世界で使える“アクセサリーケータイ”の第2弾――「NM706i」
前モデルで好評だったアクセサリーのようなコンパクトさとPCとの親和性を踏襲しながら、ボディカラーとデザインを一新したのが「NM706i」。光沢とマット仕上げを組み合わせた“シンプル&クリーンデザイン”のストレート端末に仕上げた。 - 写真で解説する「NM706i」
前モデルで人気の機能はそのままに、デザインを一新して登場したのがドコモのノキア製端末「NM706i」。海外モデルの「Nokia 6124 classic」をベースとした“シンプル&クリーン”デザインで、ビジネスパーソンにアピールする。 - 「NM705iは、あなたを輝かせるアクセサリー」――ノキアが新端末を披露
“このケータイは、あなたを輝かせる”――。こんなコンセプトで登場するのがノキア・ジャパンのFOMA「NM705i」だ。発表会に登場したタレントの知花くららさんも「かわいい!すごく小さいですね」と絶賛。ノキアのマクギー社長は、市場の変化をチャンスととらえ、日本でノキアブランドを確立したいと話す。 - ノキア製のコンパクトストレート端末「NM706i」、8月8日発売
NTTドコモは8月4日、ノキア製のWORLD WING(3G+GSM)対応ストレート端末「NM706i」を8月8日から全国で販売すると発表した。 - 手のひらサイズの世界ケータイ「NM706i」、新規バリュー一括は2万7300円──分割は月々1050円から
8月8日、3G/GSMの国際ローミングに対応したストレート型ケータイ「NM706i」が都内量販店に並んだ。バリューコースの端末価格は、新規の一括払いが2万7300円。分割払いは頭金2100円、月々の支払いは1050円(24回分割の場合)から。 - ノキア・ジャパン、「NM706i」にSymbian OSを採用
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.