拡大する専門検索、ソーシャルブックマークとの融合、海外進出──新体制で飛躍を目指すエフルート(2/2 ページ)
ケータイのランキングサイトから検索ポータルへと姿を変えてきたエフルートが、新たなステージへ突入しようとしている。創業者の佐藤崇氏が代表取締役会長に、副社長だった尾下順治氏が代表取締役社長兼CEOに就任したエフルートに、今後の展望を聞いた。
国内でのfroute.jpの今後
ITmedia では、国内の展開はどのように考えているのでしょうか。エフルートは検索のほかに数々の公式サイトを運営していますが、どのようなバランスでやっているのか、まずはそこから教えてください。
尾下氏 売上の比重は公式サイトが高いですね。会社が大きく伸びたのは2年目からで、公式サイトに参入し、収益が安定して、人を安心して採れるようになったためです。結果として、投資するのは検索サイトのエフルート、お金を稼ぐのは公式サイトという構造になっています。
ですので、公式サイトは徹底的にリスクをとらない形でやってきました。1つシステムを作ったら、いかに投資効率を高めるか、いかに1人当たりの生産性を高めていくか、ということを徹底的に追求しています。いわゆる公式サイトは現在65サイトありますが、エフルートのメニューを切り出して公式にしているものを除くと、57サイトになります。これを11人で運営していますが、アルバイトや補助スタッフを除くと社員は6人しかいません。1人あたり平均10サイト弱を回していることになるんです。ですが、別に何かを犠牲にしているわけではありません。少なくともユーザーには満足していただいています。これは大きな強みなので、これからもしっかり、伸ばしていきます。
ITmedia 市場環境はどうでしょうか。キャリアがポータルサイトのトップページにGoogleやYahoo!の検索窓を採用したことはどのように考えていますか。逆風が吹いているのか、追い風になっているのか、そのあたりの状況を教えてください。
佐藤氏 逆風は吹いていないですね。むしろ、検索連動広告の市場も、たくさんの会社が参画することで拡大しています。検索が一般化しつつあるのが、何よりもすごいことです。検索エンジンでシェアを高めることは目指していますが、かつてのように検索がボトルネックになる状況は解消されつつあります。一方で、検索エンジンが強い権力を持ち始めているのは事実で、そこをいかに握るかというのは、モバイルのメディアとして大切な視点です。音楽やコミックなどの専門検索は、恐らく国内トップシェアなので、こういったところは拡大していきたいですね。
尾下氏 エフルートは専門検索を総合的に見せるという方向に進んできていますが、キャリアさんが検索機能でうちのノウハウを必要とする日も、そう遠くはないと思っています。モバイルの場合、ロボットがクローリングしても(オープンな場所には)そもそもコンテンツがないという状況ですが、早々にそこに気づいた我々は、(コンテンツホルダーと提携して)専門検索に力を入れてきました。この部分はある意味PCの世界より進んでいます。
そもそも、ケータイでページ検索が価値を持つのはもっと先で、2つの条件が必要だと考えています。1つ目は、発信者がもっとモバイルを意識すること。今はブログの書き手もいっぱいいて、PC用の画面にはしっかり手が入れられていますが、モバイル向けのサイトはまだデザインに手つかずのところも多く見られます。発信者も事業者も、モバイルまで意識していないんです。ここが大きく変わる必要があります。2つ目は、モバイルが有無をいわせぬパワーを身につけることです。どちらにせよ、今のインターネットで情報を発信されている方々の中心がPCなので、これは時間をかけて解決していくしかありません。
ITmedia 今の若年層が成長すれば、状況は変わってくるということですね。
尾下氏 そこまで一歩一歩進めるために、あきらめず取り組んできました。他社ほど検索に対して、あきらめよくなれませんでしたからね(笑)
検索エンジンとソーシャルブックマークの融合から生まれるもの
ITmedia 以前、froute.jpで「つまんない」「暇」という感情で検索するユーザーが多いというニュースが、ネット上で話題になりました。当時と比べ、モバイル検索を利用するユーザーの動向は何が変わりましたか。
佐藤氏 今は「着うた」で検索せず、アーティストの名前を入れるような、目的に近い単語を使う人が増えています。そういう意味では、ユーザーが検索に慣れてきたのだと思います。ですが、「暇」という感覚で検索をするのも、実は面白いと思っています。「着うた」というキーワードで検索していときに見える世界と、アーティスト名で直接検索するときに見える世界は違いますが、どちらが正しいというわけではありません。
ITmedia そこに先日買収した「モバブ!」が、関係してくるのでしょうか。
佐藤氏 モバブ!は、検索サービスにセレンディピティ(何かを探しているときに別のものを偶然発見する力)のような付加価値を付けられる重要なスパイスになると思い買収したので、まずはそこをやっていきたいです。検索エンジンとしての最終世界は、目的のページにすぐたどりつけることだと思いますが、それとは違う口コミの世界と検索の世界を融合させたものを作っていきたいですね。検索結果も、froute.jpとソーシャルブックマークでは、全然違います。連携の仕様を考えている際に改めて気づいたのですが、これは何かに使えそうです。
一方で、ケータイだとブックマークという概念が、まだ分かりにくいのかなとも思いますし、PCのそれとは世界観も違います。今は、携帯向けのソーシャルブックマークをユーザーがどのように使っているかを分析しているところです。
尾下氏 ソーシャルブックマークという概念自体が難しいですよね。「分かりにくい」ということが大きな課題だと思って、取り組んでいきたいです。
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佐藤氏が会長に退き、尾下氏が社長に就任する──。そこには国内市場での地歩を固めつつ、海外への事業展開も見据えたサービス開発をしていくというエフルートの決意があった。ソーシャルブックマークサイトと検索エンジンとの融合を含め、同社の次なる一手がどのようなものになるのか、注視していきたい。
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