目指すのは「空気を読めるケータイ」――ドコモら10社が実証実験:CEATEC JAPAN 2008
人の行動を先読みして最適な情報を提供――。こんな世界を実現しようというのが、ドコモら10社が「情報大航海プロジェクト」で実証実験を行っている「マイ・ライフ・アシストサービス」だ。
NTTドコモの山田隆持社長が、同社の新たな価値創造の一環として取り組んでいると話すのが、「エージェント機能付きケータイ」の開発。これは、個人の好みや行動に基づいた情報を配信するエージェント機能を携帯電話に取り入れ、高度化したパーソナルサービスを提供しようというものだ。
ドコモはこうしたサービスにつながる実証実験を「情報大航海プロジェクト」で実施しており、CEATEC JAPAN 2008の同プロジェクトのブースでその概要を紹介している。
行動を予測し、最適な情報を提供
この実証実験で目指すのは、サービスを提供する側が人の行動パターンを解析し、時間や場所、好みに応じた最適な情報配信を行う「空気が読める携帯サービス」の実現だ。「従来の情報提供サービスは、“この場所に来たら、この情報を配信する”という画一的なものだった。今回の実証実験では、もう少し個人に特化し、個人の行動特性に応じた情報を出していくのが、今までにない特徴になる」(説明員)
12月から行う実証実験では、GPSケータイを通じて参加者の位置情報を10分ごとに取得し、行動パターンを解析。そのパターンをベースに、行動を先読みして適切な情報を送る仕組みを検討するという。
「2007年月から2008年2月にかけて行った実証実験では、位置情報を30分に1回とっていたが、今年はもう少し精度を上げ、10分に1度の間隔で位置情報を取る。そうすると、だいたい2週間くらいで個人の行動特性や、それぞれの場所での滞留時間、その後の行き先などのパターンが見えてくるので、先回りして適切な情報を送ることが可能になる」(説明員)。
今回の実験には、取得したプライバシー情報をセキュアな環境下で保存・通信するシステムや、行動分析と予測に基づいたレコメンドエンジンなどのサービス基盤が用いられている。実験用のサービス開発には、この基盤を開発したNECに加え関心空間、東京大学、明治大学、NTTレゾナント、東京急行電鉄、東急エージェンシー、Tカード&マーケティング、東京データネットワークが参画。コンテンツプロバイダや大学の協力を得て、より詳細なサービスの検討を行う計画だ。
「東京大学は取得した行動パターンを意味づけする研究を、明治大学は得られた行動結果の分析を行う予定。また、今回は東京急行電鉄も参加するので、東急線沿線の改札入出場情報やICカードのポイント取得情報などをベースに、“レコメンドした店に行って、商品を購入したかどうか”を追跡することも検討している」(説明員)
商用化は段階的に
こうしたレコメンドサービスは、一歩間違うと「空気が読めない」サービスになりかねないことから、ドコモでは段階的な導入でニーズを図りながらサービスを拡張する方向で検討しているという。
「例えば、まずは第一歩として、地域に応じた生活情報や最寄り駅の電車の運行情報などといったやや画一的な情報を、利用者が登録した属性に合わせて提供する。その後、もう少し個人の指向性やビジネスロジックに基づいた情報の配信へとシフトし、さらに次の段階で日々の行動情報を蓄積しながらそれに応じた情報を配信する――といったロードマップが考えられる。万人に受け入れられるサービスから入って、段階的に“インテリジェントなiモード”的サービスにステップアップするのが理想。将来は、人の自然な価値観にアプローチできるサービスを目指したい」(説明員)
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