「攻め」「変化」「忍耐」が求められる――通信事業者5社の年頭所感
移動体通信事業者のトップが年頭所感を示した。2008年は好調のソフトバンクモバイルとイー・モバイル、苦戦のKDDIとウィルコム――と明暗を分ける結果となったが、2009年はどのようなかじ取りで事業を進めていくのだろうか。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・モバイル、ウィルコムの5社が、2009年の年頭所感を示した。
2008年はソフトバンクモバイルとイー・モバイルが躍進した一方で、KDDIとウィルコムは苦しい戦いを強いられ、NTTドコモは「新ドコモ宣言」や端末シリーズの一新などでてこ入れを図った。また、“2年縛り”を基本とする販売が定着したことで、端末需要の冷え込みが顕在化した。2009年を迎え、各社のトップはどのような決意を表明したのだろうか。
オープンプラットフォーム端末の導入を促進する――NTTドコモ
2008年6月20日に代表取締役社長に就任したドコモの山田隆持氏は、4月に発表した「新ドコモ宣言」、7月に実施した新しいコーポレートブランドロゴの変更や全国一社化体制に触れ、2008年を「原点回帰の年」とした。2008年冬モデルではPRIME/STYLE/SMART/PROといった新シリーズや、行動支援サービス「iコンシェル」を導入し、「お客様1人1人のライフスタイルやニーズに合わせたベストな端末、サービスを提供するべくチャレンジしてきた」と振り返った。
山田氏は、今後特に注力する分野として「サービスのパーソナル化」「融合サービスの提供」「動画サービスの推進」「ソーシャルサポートサービスの推進」を挙げた。「リアルタイム性、個人認証、位置情報などの特性を生かしたサービスを提供し、ケータイがお客様の毎日の行動のアシスタントになれるよう、ケータイのパーソナル性を高めていく」(同氏)。さらに、「ケータイをさまざまなツールと連携させ、お客様の利用シーンに合わせた便利で快適なサービスや、ケータイならではの動画サービスの提供も考えている」という。
端末は「デザインやUI(ユーザーインタフェース)の多様化に取り組むとともに、LinuxやSymbian端末の商用化で培った技術とサービスを生かし、プラットフォームのグローバル共通化を目指す」(山田氏)。また、「AndroidやWindows Mobileなどのオープンプラットフォーム端末の導入や普及促進をすることで、多種多様なプレーヤーの参入を可能にする環境を整える」(同氏)姿勢も示した。
ドコモが2010年から導入予定の「LTE(スーパー3G)」は、2009年に開発が完了する見通し。山田氏は「LTEでは高速パケット通信が可能になり、動画サービスを発展させる環境が整うほか、端末とネットワークの連携により、高度なサービスが提供可能となる。また、近年のトラフィック増に伴うネットワーク負荷も軽減するだろう」と、LTEの利点を強調した。
もっと“尖った”サービスや商品が必要――KDDI
KDDIは、2008年度第2四半期の決算が、連結では増収増益になったものの、単体の売り上げは前年同期比で、KDDI発足以来、初めて減収となった。小野寺正社長は「われわれが目標としている『持続的成長』を維持するためには、いっそうの努力が求められる」と危機感を示した。
小野寺社長は2008年について、「『au BOX』や『auまとめトーク』など、FMBC(Fixed Mobile and Broadcasting Convergence)時代に対応した商品やサービスの開発に取り組んだ」とする一方で、「KDDIの顔が見えない」「KDDIらしさの喪失」といった評価も受けたと振り返った。こうした現状を打破するために、「もっと“尖った”、お客様をドキドキさせるような商品やサービスが必要になる」(同)とした。
小野寺社長は「2009年はKDDIが前進するか、後進するか、分かれ目の年になる」と述べ、「もう1度お客様視点に立ち、先鋭かつ果敢な『攻め』で明るい2010年代の扉を開くためには、『チャレンジ&チェンジ』――既成概念にとらわれず、常に変化していく姿勢が求められる」と強調した。
ケータイが「インターネットマシン」としてさらに進化する――ソフトバンクモバイル
ソフトバンクの孫正義社長は、「昨年(2008年)は『インターネットマシン元年』として、携帯が大きな変貌を遂げた年となった」と振り返った。
「携帯業界に大きな衝撃を与えた『iPhone 3G』をはじめとする高機能端末の発売により、今までPCで行っていたことが携帯電話でできる生活が当たり前になる時代がやってきた。今年は携帯電話が『インターネットマシン』としてさらに進化し、人々の生活により深く関わっていくことになるだろう」と語った。
LTEにも積極的に取り組んでいく――イー・モバイル
イー・モバイルは、2008年3月に全国で音声サービスを開始し、イー・モバイル端末同士での24時間通話無料を実現。夏には小型ノートPCとデータカードのセットで初期費用100円という販売方法が注目を集め、2008年11月末には契約者数が100万を突破した。こうした状況を受け、千本倖生会長は「2008年はイー・モバイルの事業が飛躍的に拡大した」と評価した。
千本会長は、「2009年は事業拡大と初期投資の一巡により、単月黒字を達成する予定。その一方で、伝送速度の高速化やエリア拡大、次世代技術のLTEにも積極的に取り組み、進化への手綱を緩めることなく経営資源を投入していく」と宣言した。
WILLCOM COREで“3度目の再成長”を宣言――ウィルコム
2009年に「WILLCOM CORE」の導入を予定するウィルコム。2008年は2月、4月、8月、9月、10月に契約者数が純減するなど、厳しい戦いを強いられた。
喜久川政樹社長は、こうした状況を乗り切るためには社員全員の「強い意志」「たゆまぬ努力」「粘り」が必要だと力説。「WILLCOM COREの活用と現世代PHSサービスの創意工夫を行い、3度目の再成長を実現しましょう」と社員に呼びかけた。
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